亜人たちの大陸
「とにかくないから。それより二つ目の街の話だけど……次は、"交易都市"パストラ。王国の貿易の玄関口になっている港町、流通の中心にもなっている街だな。ここは王都に比べると──」
当然こうやって話している最中にもコメント欄は流れていく。俺は続けて街の詳細を説明しようと思っていたんだけど、その中に目が入った質問があったのでそっちを先に答える事にする。そのコメントは『港って事は、もしかして今いる国って島国なの?』
あれここ以前話したよな? と思ったけどまだ本格配信が始まる前でよく考えたら常連にしか話してないわと思い出し、改めて説明する事にする。
「俺のいる場所は島じゃなくて"シーアーク"っていう大陸だよ。規模自体は詳しくはわかんないけど、さっき話した通り場所によっては一か月以上もかかるみたいだから、それなりの広さはあると思う。国の数も小国を含めれば二桁超える」
『おー、結構な規模?』
『単純に考えて1000km以上はありそうな感じなのかな』
『1000kmってどれくらいだっけ』
『確か仙台大阪間くらい』
『そう聞くと、狭いような広いような』
あくまで一か月以上かかるって話だから、もっと広いんだけどね。まぁそこはいいか。
『でもそうすると港町って、別の大陸としているの?』
「別の大陸ともしているけど、基本は同じ大陸内だよ」
『大陸内でも海路を使うんだ』
『ああ、陸上だとそっちの世界だと馬車しかないもんな』
そう、こっちの世界には陸上の物流を担う大型トラックとかはないわけで。運ぶために利用されるのは馬車か人手になる。一応飛竜便(!)という高速輸送手段とかもあるらしいがコストがかかる上に輸送量も少ないため重要な品の輸送くらいにしか使えず、生活を担うような物流の手段は実質ほぼ前述の二つだ。なので、大規模輸送だったり長距離輸送は海路が優先して使用されている。
「ちなみに、この世界他にもいくつか大陸あるみたいだけど、定期的な取引があるのはクウェントスっていう大陸だけらしいぞ」
他の大陸は距離があるため、まったく交流がないとはいえないが取引されるのは一部の高級品だけらしい。まぁ採算が取れないだろうしな。ちなみにこのクウェントス大陸だが、調べたところ一つ特色がある。
「今こっちの国に来ている獣人とか亜人種てさ、大部分がこのクウェントス大陸から来ているらしいんだよね。クウェントス大陸は亜人が」
最後まで言えなかった。ものすごい勢いでコメントが流れ出したので、呆気に取られてしまった。
『カズサちゃん、クウェントス大陸に行こう!』
『いくらだ! いくらだせばいい!』
『獣人、亜人の住む大陸とか完全に楽園である』
『オラも、オラをぱらいそに連れとってくれ』
『不味い、ケモナーや亜人好きどもが興奮して発狂し始めた!』
『鎮静剤持ってこい!』
大混乱である。
以前街で獣人を見かけた時もコメ欄が加速したが、その時よりも激しい事になった。多分前の配信情報を聞いて、俺の配信を見に来てくれたんだろうなぁ……などと思う。そういった相手には望む光景を見せてあげたいとは思うが──
俺は自分の前で両手を合わせると、ちょっとだけ首を傾げてその両手の後ろから覗き込むようにして、口を開く。
「ごめん、今の段階では無理!」
『えっ……』
『そんな』
『渡航費の問題? 出すよ?』
実際渡航費の問題はある。結構な時間の船旅になるし、陸路よりも全然費用だって掛かる。ただこれだけが理由だと本当に一部の面子が渡航費全額出してきそうなので、もう一つのダメな理由を告げる。
「金銭の問題もあるんだけどさ。向こうの大陸、生活様式もこっちと違うみたいで……まだこの世界に慣れきってもないのに、新しい生活様式の場所にぶち込まれるのは正直辛い」
『あー』
『それは……しゃーないなー』
言語とかは通じるとはいえファンタジー世界だ、現代社会とはいろいろ異なる。更に言えば種族がカオスっているクウェントスは種族に応じて住居とかもいろいろあるらしくて……今の俺にはやっていける自信が正直いってありません。
「一応、パストラにはクウェントスから渡って来た亜人が結構いるらしいから……」
『よし、次の目的地は港町パストラだ!』
いやもう一個候補あるからまずそっち聞いて? ウチはケモナー向け専用チャンネルじゃないからね?




