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お金の力で世界を救ってあげます!  作者: DP
1 辺境都市グリッド
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戦場

カズサちゃんも早く逃げろよ! と言って彼は荷物を抱えて階段を駆け下りていく。そんな彼を呆然と見送ってしまった俺は、慌てて自分も下の階へと駆け下りて宿の外へ飛び出した。


その目の前を次々に人が駆けてゆく。街の入り口の方から逃げて来た連中だろう。彼らは皆必死な表情だ。


その勢いに圧倒された俺は、思わず足を止めてしまう。するとそこに駆けて来た男の一人がぶつかり、


「わっ……」


俺の小柄になってしまった体は、その勢いに跳ね飛ばされる。といっても肩がぶつかったくらいなので、尻もちをつくほどではない。ただ、よろめいて宿屋の壁に手をついてしまう。


そこで、改めて状況が目に入った。


戦場は、すでにすぐ側にあった。


映画やゲームに出てくるゾンビ(足の速いタイプ)のような動きでこちらに向かってくる人影。それを武器を構えなんとか迎撃している、何人かの鎧を纏った人たち。


ただ、さっきロバーツさんの言った通り倒すわけにはいかないのだろう。攻撃をする事もできず、防戦一方の状態だ。そんな彼らに対して、ゾンビ擬きの人影は明らかにまともな人間のものとは言えないほど激しい動きで襲い掛かっている。


その光景を見た瞬間、俺の足は思わず竦んでしまっていた。


『カズサちゃん、早く逃げないと!』

『急いで急いで!』


カメラは自分向けにしているので状況は余り見えていないハズだが、周囲の喧騒から不味い状況である事を察しているのだろう。コメント欄のみんなが避難を促してくるが──足が動かない。


元の世界で、喧嘩くらいなら勿論見たことはある。だが目の前で起こっているものとは、まるで比べものにならないものだった。明らかに命を狙ってきている、更には自らの体が壊れる事もいとわないリミッターを外した動き。見るからに真っ当な人間ならしない動きで襲い掛かるそいつらを、警備隊や傭兵らしき人たちが必死になんとか抑え込んでいる。だが、すでに何人かは傷を負い、鮮血を滴らせていた。


俺自身はこれまで平穏な人生を送って来た人間だ、現実でこんな光景はみたことがない。ゲームでなら見たことはあるが、目の前の光景は明らかなリアルだ。


逃げなきゃ、というのは解っている。だが足の竦みと、突然の修羅場で思考が混乱して動けない。


と、その時だった。


人影の中に、見知った姿が見えた。鎧を纏った、一人の男。


俺がこのグリッドの街に来た時、門番をしていた年若い男。俺がこの世界に来て最初に会話した人間であり、いろいろ案内してもらったのでよく覚えている。


その彼が、戦闘の場の中にいた。──襲う側として。


その瞳が紅い。確か彼の瞳は元々碧かったはずだから、あれがレイスに取りつかれた証拠なのだろうか。


それに気づいた時、ようやく竦んでいた足に力が入った。


そうだ、早く逃げないと──


そう思って身を翻した瞬間、背後で悲鳴が上がる。思わず振り返ってみれば戦っていた警備兵の一人が倒れていた。その腕は広く深紅に染まっている。なんとか他の警備兵がフォローに回るが、ダメージが大きいのか彼は立ち上がる事ができない。


くそっ、浄化の魔法を使える術士はまだなのか。あるいはロバーツさんの言った通りこの街にはそもそもいないのか。だとしたらあの倒れた兵士の人も間違いなく助からない──


俺は慌てて何かを振り払うように首を振る。もしそうだったとしても、俺にはどうにもならない。だって今の俺には何の力もない。


──本当に?


混乱している思考の中、そんな言葉と共に数日前の夜の記憶がよみがえる。


確かに、今の俺には戦う力はない。だけど──


次の瞬間、俺は逃げるのを忘れ、反射的にメニューを開いていた。そしてスキルの一覧を開くとどんどん下へとスクロールしていく。


数日前、取得スキルを検討していた時に見つけていたもの。その時は取得する気がなくてスルーしたが、あの時いくつかの特攻魔法らしきものを発見していた。確かその中に──


「あった……」


<<ピュリファイ・スピリット>>。その効果は浄霊──霊体エネミーの浄化による消滅!



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