新衣装(?)完成
「……できた!」
『お疲れ様!』
『おっつー』
前傾姿勢になっていた体を起こし、両手でガッツポーズをしながら上げた声に、コメント欄からねぎらいの言葉が届く。
リクエストを受けてから3日目の夜。あの日から比較的人が少ない時間帯を選んでちまちまとモデリングしていたカズサは、ようやくその作業を完成させて一つため息を吐いた。
日中は街を散策したりいろいろ調べものしてるし、夜や朝はコメント欄の皆と雑談しているから意外と完全フリーな時間てないんだよなー。
驚いたことに、平日の昼間でも(開きっぱなしなのが結構な数いそうではあるが)同接は3桁をキープし続けている。夜に至っては微増を続け、そろそろ4桁に到達しそうだった。チャンネル登録数も順調に伸びて1500を突破している。
ここまでは実に順調だ。増えていってるのは、口コミで広がっていってくれているのかな? 自分でSNSが確認できないからその辺はわからない。まぁこの辺、変にネガティブな書き込みが目につかないで済むっているメリットもあるけど。
まぁそんなこんなでそこそこせわしない生活をこなしつつも、三面図書いてモデリングしてテクスチャ書いて……なんとか、一連の作業が完了した。
実はちょっと焦っている部分があったんだよな。
現状アレ以降も調査などを兼ねて街を歩いているが、それ以外のコンテンツが今の所薄い。街の散策もそこまで目立つところは数多くないし、更に言えば衣装も一張羅を除けば地味もいいところだ。
そういう意味では新しい衣装……というか完全にコスプレ衣装だと思うが、多少の目新しさになるだろう。勿論意識的に男な上学生でもなかったのにセーラー服を着るのに抵抗が全くないわけではないが、生活の為には些細な問題だ。必要な事だからな。
今のこの美しい少女の体は、俺にとって大事な商売道具でもあるわけで。
直接的に触れられるとか、きわどいところを見せるのはさすがに忌避感があるが、これくらいの衣装を着るくらいなら恥ずかしい程度だ。安いものである。うん、俺、生活費ダイジ。
『これが本物にできるわけ?』
「そそ。使用する材料に応じてMPはかかるけど」
『いくらくらいかかりそ?』
「ちょっと待って、今確認してみるから」
Flenderを操作して、素材を指定する。リネン……亜麻でいいだろう。マテリアルに素材を指定すると、必要MPが表示された。
4000MP……<<ボイルウォーター>>や<<ドライ>>が覚えられる値段だなぁ。
『4000MPかぁ。6000円投げればいけるのか』
「あー、いや、これは今ある奴で作るよ」
土曜日以降、思ったよりスパチャを投げて貰えているので、MPは大分余裕がある。4000MPは滞在費としては2日分になるが、今の状況ならそこまで痛手ではない。
今後衣装を増やしていく時はリクエストを受ける代わりに材料代カンパをしてもらうつもりだけど、今回は登録者1000人超え記念とか(宣伝後)初配信感謝とかスパチャいっぱいありがとう!の意味での作成になるので、手持ちのMPで作る事にしていた。いや結局もらったMPだけどな!
「それじゃ実体化しまーす」
現実にエクスポートっと。
ベッドの上に、白と紺に赤いタイという実にオーソドックスなセーラー服がぱさりと落ちる。
『おー、すげー、マジで出た!』
『本当にモデリングしたものが出るんだな。なんでもありじゃん、これならいろんな機械とかも作れるんじゃ?』
「素材代がかかるし、何より機械の内部構造なんか欠片もわかんねぇよ……」
例えば俺がそういった職人や技術者であればいくつかの機械はつくれたのかもしれないけど、あいにく俺はハードウェア系はさっぱりである。こっちだとネットで構造調べるとかもできないし、余程単純な構造でもない限り口頭で教えてもらいながら作るのも無理がある。
そりゃできれば洗濯機とかドライヤーとか作りたいけどね!
前回残MP:83430
今回増減:
4日分の生活費(日曜日含む) -9360
制服代 -4000
スパチャ +42000
残MP:112070