おやすみなさい
『疲れた? 横になったら?』
「……お言葉に甘えさせてもらおうかな」
『え、配信お終い? やだやだ拙者もう少しカズサちゃん見ていたい!』
「いや、配信は切らないよ。勿論途中で寝ちゃったらそれ以降は反応はできなくなるけど」
『あ、マジで常時配信なんだ。すげぇな』
『そうするとプライベートほぼ無しか。結構つらくない?』
「生活費の為なら多少のプライベートは切り捨てますとも」
『いうて今日それなりにスパチャ飛んでなかった?』
あー確かに。大体少額ではあったけども、それなりの数のスパチャが飛んでいた。おかげでそれなりにMPが増加している。
「おかげで俺の寿命は大分延びたよ」
そう答えながら、カメラを自分の胸より上だけが映る、割と近い位置で固定する。
『おかお ちかい』
「カメラ離しておくと、目が覚めた時に事故るのが怖いんで……ふぁ」
欠伸が止まらなくなってきた。
『事故っていいのよ?』
「アカウント停止喰らったら死んでしまいます、勘弁してください」
『ああ、それは困る……残念だが仕方ない』
「しかしふと思ったんだが、この状態で元の男の姿に戻ったら大炎上しない? 俺」
『炎上まではいかないけど、視聴者は一気に減りそう』
『やっぱ中身が男が真実だったとしても、今の外見も声も良すぎるかなぁ……それを失うと影響でかそう』
「だよなぁ。正直意味がわかんない状況だけど、この外見だけは、感謝……だわ」
元の男の姿だったら、今日まで生き延びれていた所かも怪しいところだ。そういう意味では、こっちに来たのがネタアバター使ってるときじゃなくて良かったわ。最近偶に使っていたアメリカザリガニのアバターの姿とかでこっち来ていたら、生き延びる以前に魔物か何かと勘違いされて討伐されて終わりだった気がする。
それに自分の外見は自分の好みを突っ込んでる姿だからね……現実世界だったら困るけど、こういった別の世界だったら今の姿は悪くないというか総合的に見ればいい方に転ぶ。勿論不便も、いくつか、あるけど……
(コメント欄ONLY)
『あれ、寝ちゃった?』
『まぁ、結局10時間近く配信していたわけだし仕方ない』
『寝顔可愛い。もう中身とかどうでもいいです、推しにします』
『性別とかどうでもいい。重要なのは可愛いか可愛くないかだ』
『上級者来たな』
『というか若干幼さの残ったショートボブ黒髪美少女とか性癖クリティカルなんすよ。推しにしない選択肢はないです。バイト増やさなきゃ……』
『同志よ( ゜∀゜)人(゜∀゜ )』
『っていうか寝てる姿もマジで配信すんのな』
『いつ来てもリアルタイムで会えるっていいよね。もっと人気出て欲しいけど、人気出すぎるとコメント反応してもらえなくなりそうだからあまり視聴者増えて欲しくない気持ちもあるというジレンマがある』
『わかる』
『一人暮らしワイ、サブノートでカズサちゃんの配信を常に開きっぱなしにしておくことを決意。出かける時はカズサちゃんにいってきますして、帰ってきたらお帰りなさいって言ってもらうんだ……』
『天 才 か』
『むしろ変態じゃない?』
『天才と変態は紙一重』
『というかちょっとそれ空しくない?』
『独りの部屋にただいまを言うくらいなら、その程度の空しさなどなんともない』
『でもちょっとカズサさんに「おかえり」っていって欲しいかも』
『……配信に来た時の挨拶を「ただいま」にすればいいんじゃね? んで、それに対する返しを「おかえり」にしてもらえばいい』
『ヲイヲイ、天才しかいないのかここには』
『後は抜ける時も「いってきます」にして「いってらっしゃい」と返してもらえば一日の活力を貰えそう』
『ついに俺にも、物語でしか見たことなかった美少女が家で待っている生活を体験できるのか……?』
『尚帰宅時風呂もしくはトイレ中の可能性』
『それはそれでご褒美では?』
『通報』
『ところで話ぶった切るけど、お前らPCのボリューム最大にしてみ?』
『ん……なんで?』
『あ、これ……寝息か!』
『うむ。がっつり寝息を拾ってるっぽい』
『マイクの性能いいなぁ、おい』
『これアレだな? タブレットで配信流して横に置いて寝れば実質添い寝なのでは?』
『ちょっくらタブレット買ってくる!』
『いや家電量販店とか開いてねぇだろこの時間』
『AMEZONで頼んだら今夜中に届かないかな?』
『AMEZON:無理言わんといて』
『デスクトップPCワイ、ディスプレイを枕の横に置いて寝る事を検討中』
『圧が強そう』
『ああでも、朝彼女の声で目が覚めるのは良さそうね』
当人は寝てるのにコメント欄はなぜか加速していく……
前回残MP:33920
今回増減:
<<ライト習得費用>> -1000
宿代 -2000
朝食代 -160
昼食代 -180
スパチャ +17850
残MP:48430