2日目の終わり
「《ライト》《ヒーリング》《ハイスピード》《エネルギーボルト》《パラライズ》《テレポート》《ドライ》、これの中から必要MPと必要性を考慮して順次取得していく。これで方針確定でいいかな?」
『いいけど……《ドライ》は入れるんですね』
「勿論」
入れない選択肢はないよ。
『それにしても、この世界に怪物が居ることは確定したな』
『特攻系らしき魔法があったもんねぇ』
『とりあえずドラゴン、ゴースト、ゴーレム系はあったのは確認した』
「……ほんと、街に辿り着くまでに遭遇しなくて良かったよ」
『だなぁ。チート能力覚えてない時点で出くわしてたら即お陀仏だったろ』
話を聞く限りはこのグリッドの街の近辺で怪物はほぼ見かけないらしいから俺が特別幸運だったとかそういうわけではないんだが、少なくとも不運ではなかったのは確かだろう。遭遇確率0ではないからな。
しかし、ドラゴンかぁ。見てみたいけど、その特攻魔法を使わないといけないような状況にはなりたくないなぁ……
ま、何にしろ今は関係ない話だ。この街で過ごしている間には必要になる事はないだろうしな。
うん。
「よし、これで確定かな。あとはこういう能力が欲しいってのがあったら随時確認ってことで……作戦会議はおしまいにする? 結構そっちいい時間じゃない?」
正直俺も眠くなってきたし。
『じゃあ今日はひとまずこの辺でー』
『あ、ちょっと待って。一個気になる能力がある』
「どれどれ?」
『《メッセージ》って奴。説明みてみたい』
「いいけど」
一覧の中から《メッセージ》という能力を見つけ出し、そこに指を当てる。
「ええと、"元の世界のメールアドレス一つに対してメッセージを送る事が出来る。一文字1000MP」
『電報かよ』
『しかも一文字くっそ高い』
『これじゃ使い道なくない?』
コメント欄には次々否定的な意見が並ぶ。確かに一文字1000MPだと正直まともな文章を送ることができないし、それにこれはどうかわからないけど返信が受け取れなければこのメッセージでのやり取りもできないので、不特定多数が目にする配信画面でできないやり取りを行う事は出来ないだろう。
だけど。
「……これ、獲得候補に入れた方がいいかも」
『え? なんで』
『1文字1000MPじゃまともにやり取りできないでしょ』
「"限定公開"」
『あ……』
あわつべには限定公開という機能がある。検索欄やおすすめ、チャンネルのライブ配信一覧などにはでてこず、アドレスを知っている人間だけがその配信を見る機能だ。その配信アドレスに必要な情報は英数字15文字。……15000MPがかかるが絶対的に非現実な数字ではない。
「今後もし上手く人が増えた場合、こうやって常連の皆と細かい相談が出来なくなるって話だったよね。これで"限定公開"のアドレスを伝えれば、そこで皆と相談できる」
正直、今の皆にはすごく助けられている。少数のメンバーにこうやって相談できる可能性は残しておきたかった。
「ただその場合、一度配信を切らなきゃいけないんだけど……配信切って再開できるかな?」
『あ、ごめん伝え忘れてたけどそれは大丈夫だと思う』
『え、なんで知ってんの?』
『例のエロ配信して垢BANくらった奴。アイツその配信する前に一度配信切ってるんだよ、それでその後再開してるから配信一度切っても問題ないと思う』
『……となると、実際使うかどうかは別として手段として用意しとくのはアリだな』
『ちょっと待って俺連絡専用のアドレス用意してくる!』
──結局、この手法を取るかどうかは別として、いざという時の連絡手段として共用のメールアドレスを用意することになった。そのアドレスは今ここにいる面子だけで共用し、後はディスコードの非公開チャンネルで配信のアドレスを公開するという方式にした。今後信頼できる頼りになりそうな相手がいたらそこに招待する方法だ。
……よかった。実はこうやって常連と落ちついて相談できる事がなくなるのちょっと怖かったんだよな。費用がでかいから多用はできないけど、手段があるってだけで安心できるのは確かだ。
『それじゃ、今日の会議はこれで終わりかな?』
「だな。まぁ後は宣伝までに必要に応じているメンバーで相談していこう。皆、本当にありがとな」
『俺はこの後とりあえずVRCで知り合いに話をしてくるわ。カズサさんの交友もしってるからその辺り中心で』
「よろしく頼むー。……申し訳ないけど、俺はもう眠いからそろそろ寝るわ」
『配信はそのまま?』
「……どうせ今後ずっとそうしないといけないんだしな、慣れるためにもそのままにしとく」
『よっしゃ、カズサさんのヨダレ今日こそみるぞ』
いや流さないからな?