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妖怪セナカオモシ

残り268日!98日目!

 重い。とにかく重い。ベッドから体を起き上がらせる事が出来ない程に体が重たい。


 物理的にではなく精神的に。


 目が覚めてかれこれ30分は経っているだろうが体で動かせたのは目覚ましを止める為に携帯へと伸ばした手と首を少し上げる程度であった。


 もう出来る限り重力に従っているようにやる気なくゴロゴロとした姿勢から立ち直る事が出来なかった。


 俺の背中には今妖怪がいるのだ。妖怪のせい。


 実際に昔の人だって、やる気が起きない日だってあったはずで、そういう症状になった人間を妖怪が憑いているせいだと言っていてもおかしくない。


 妖怪セナカオモシ、寝ている人間の背中に取り憑き身動きを取れなくさせる妖怪。強い意志がない人間にはいつまでも取り憑き寝床から一生出られなくさせる厄介な妖怪。


 いそうだ。というかそれだ。それが今、俺の背中にいるのだ。霊感がないから見えないが、俺の背中には確かにセナカオモシが存在するのだ。


 でなければ、このやる気の無さは何だと言うんだ。妖怪のせいでなければ俺の怠慢と言う事になってしまう。


 いや、でも自己流の勝手な説明の中で意志が弱い人間が身動きが取れないだけで、強く持てば動く事が出来ると言う話ではなかっただろうか。


 設定を変えてしまえば全てを妖怪のせいに出来るが後付け設定は総ツッコミされて炎上するのがオチだ。ここは自分の意思が弱いと非を認めるべきだろう。


 だが、非を認めたからと言って意志を強く持って動けるかと言えばそれは別の話である。


 もし今日が平日でこれから学校があると言う話であれば、学校に遅刻したくないと言う強力なバフのおかげで意

志を強く持つ事が出来ただろうが、今日は休日で予定もない。


 この状況で意志を強く持てと言う方が間違っている。


 ただ昨日、寝る前には明日したい事を頭の中で思い浮かべながら眠った為、予定はなくともやろうと思っていた事はある。


 まず部屋の掃除だ。希少な動かせる部位である首を横に向け部屋の中を観察する。ペットボトルや雑誌、漫画、グチャグチャになったコードの束、少し見るだけで掃除をしなければいけない箇所が多数目に付いた。


 何だかさっきよりも、体が重くなった気がする。


 部屋を眺めてしまったが故に生じた面倒臭いという心の隙にセナカオモシが付け込んできたのだろう。その負の心を吸収してさらに力を強めたようであった。


 起き上がるにはより、さっきよりも更に強い意志が必要となるようだ。ここで尿意さえあれば無敵のバフが掛かり問答無用で起き上がれるのだが、早朝に尿意で目が覚めて既に済ましており、今から尿意を感じるまでにはまだまだ時間が掛かるであろう事が予想出来た。


 休日だから何か楽しい事をしようと考える。外へ出てカラオケでも行こうかと思ったが、さっきから窓の方で雨が打つ音が聞こえるので外へ出るのは厳しいように思えた。


 ゲームをしようかと考えるが、ここから出てする程の魅力はない。最悪、手は動くのだから携帯アプリで遊べばいい。


 お腹が減ったからご飯を食べようか。いや、そもそもあまり減ってない。


 詰みであった。今の俺に妖怪セナカオモシに打ち勝つ意思の強さを助長させる要素はどこにもない。


 というか、ここまで何もする事がないなら別に起き上がる必要ないのでは、と逆に思えてきた。このまま妖怪のされるがままに二度寝してしまっても問題はないはず。


 そう思ったが楽しい事は別にしなくてもいいが、掃除や勉強をしなければいけない事を思い出してしまう。


 もう、どうしようもないくらい体が重くなる。セナカオモシの力が全開となっているようであった。


 こうなってしまえば、もう俺に起き上がる手立てはない。逆にこのどうしようもなさが焦りを生んで、先程よりは起き上がらなければと言う意志を少しだけ強く持てたが、俺の負の感情を吸って強くなったセナカオモシの力の前にそんなちっぽけな意思の力ではもう太刀打ちする事が出来なかった。


 心の底では焦る感情を持ちながらも、諦めの気持ちが心を和ませて目を閉じさせる。もういいや、今日はこのまま眠ろうと、セナカオモシに屈服するように目を閉じる。


「アンタいつまで寝てるの⁉︎」


 母の怒声と共に背中に感じていた重みが完全に消えて反射的に飛び起きる。


「何時だと思ってるの、朝ご飯作るから早く起きなさい!」


 それだけ言って母は部屋を出て行く。


「…………」


 すっかり消えた背中の重み、ただまた寝転がると再びセナカオモシが現れそうだったので起き上がる。


 あれだけ起き上がり難かったのに、たった一言で俺に取り憑いていたセナカオモシを除霊してしまう。


 まったく母は強しである。


 また怒られない内にさっさと立ち上がってリビングに行くと


「お父さん! 起きなさいって! 朝ご飯食べないの⁉︎」


 と、ソファーで寝ている父に母が大きな声で話し掛けていた。父はそれでも身動きが取れない様子である。社会人である父の背中に憑いたセナカオモシは俺に憑いていたのよりももっと強大であるようであった。


今回は体が重すぎたので書いてみました!

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