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寄せ書きの思い

残り269日!97日目!

 中学2年の頃にクラスメイトが一人、不登校になった。


 理由は主にクラス全体から暴言を吐かれた事であると担任の先生は言っていた。特に誰が言っていたという主張はなかったらしく、とにかくクラス内で自分を馬鹿にする雰囲気があるとの事だった。


 あまり、そいつと仲が良かったわけではなかったが「盛岡」と言う名字の彼が顔がデカいと言う理由で「デカ盛」「顔盛」「顔が盛岡」と呼ばれていたのは知っていた。


 愛称のようなもので本人も嫌がりながらも享受しているものだと思っていたが、第三者からすれば分からないもので、本人は不登校になるくらい嫌がっていたようであった。


 たまに名前を呼ぶ事があった時は皆の呼び方に合わせてデカ盛のニックネームで呼んでいたが、彼と同じクラスになってから名前を呼ぶ事なんて思い出せないだけで、きっと数え切れるくらいしか呼んでいないだろうから、彼が俺の事をクラスメイトである以上に恨む事はないだろうと思えた。


 とはいえ、しかしだ。確かに悪口と取られる渾名で一度でも呼んだのは確かで、皆んなから呼ばれていた事は知っていた。それに対して傷ついていた事に気付いてあげられなかったのは自分にも落ち度があると思えた。


 だから謝罪の寄せ書きにはこう書く事にした。




『盛岡へ、傷ついている事に気付いてあげられなくて本当にごめんな』高木




 仲良くしていた盛岡が不登校になってしまった。


 クラス内であまり目立たない仲間として、一緒に昼休みや給食を食べていたのだがまさか不登校になるなんて思っていなかった。


 確かに自分の顔の大きさがコンプレックスで笑われるのが嫌だと話していたのは聞いていたが、それでも目立たない仲間であるはずの盛岡はそのコンプレックスである大きな顔を活かして、あだ名をつけて貰え、クラスメイト

全員から親しく話し掛けて貰える存在になっていた。


 正直、特に目立つ要素のない僕は彼がコンプレックスの事とはいえ、皆んなからチヤホヤされているように見えて羨ましかった。


 たまに盛岡の顔を弄ろうとするクラスメイトに混じって盛岡の事をデカ盛と呼ぶ事もあったが、あの状況で呼ばないのも不自然だろうから許して欲しい。


 その後だって少し不機嫌になるからジュースだって奢ったりもしているんだから、僕らの立場を考えれば仕方ないと彼だって分かってくれているはずだ。


 それにやっぱり僕とは違い少しだけでも陽の当たる所に出られたのだからいいじゃないかと思わない事はなかった。


 でも、嫌がっていた事は知っていた。それを止めようなんて言う勇気も力も僕にはない。それは盛岡だって理解してくれているはずだ。だから僕が言うべき言葉は不登校になっても友達であるという事を彼に伝える事のように思えた。


 クラス全体を巻き込む事件を起こした彼を僕はそれでも変わらず友達である事を伝えるべきだろうと感じた。


 だから、寄せ書きには不甲斐ない自分の謝罪とそれでも友達である事を書いた。




「止められなくてごめん、不登校になったとしても僕らは友達だよ」三橋




 デカ盛が不登校になったらしい。


 そのせいでホームルームが長くなった上に寄せ書きまで書かないといけないらしい。


 早く部活に行きたいのに面倒な事をしてくれる。


 ほとんど喋った事もないクラスの人間だから、デカ盛はクラス全体と誇張して言っているらしいけど私には関係ない話だ。


 それなのに適当な事を言って私まで面倒に巻き込まないで欲しい。


 寄せ書きも適当にそれっぽい事書いて早く終わらせてしまおう。




『また元気で登校出来るように頑張ってください』吉田




 クラスの地味な奴が一人、不登校になった。


 顔がデカいからデカ盛と弄っていた奴だ。正直、そんなに話していて面白い奴じゃないから、少しくらい顔の事を弄ってやらないと、仲間に入れる事が難しい奴であった。


 本気で空気が読めない奴とは違って、笑ってやり過ごせるくらいの空気を読む力があるように思えたため、デカ盛を会話に混ぜる時は変な雰囲気にならない程度に適度に顔を弄って場を盛り上げていた。


 たまに弄った時に微妙な顔をしていたのは知っていたが、彼が変に会話の中で孤立させない為にも仕方がなかったように思えた。


 もし俺が積極的に弄って仲間に入れていなかったら、彼はもっと浮いて、弄りを超えてより酷いイジメを受けていた可能性だってあっただろう。


 それくらい危うい立場であった事に気付いていなかったから最後まで笑ってやり過ごせずに嫌そうな顔を適度見せていたのだと思う。結局、不登校になってクラス全体を巻き込む事件にまで発展させているのだから、彼が全員から不況を買う危うい立場にあるという予想は当たっていたのだと思う。


 ただ、デカ盛を会話に違和感なく参加させる為とはいえ傷付けていたのは確かだ。それは俺にも責任があるだろうし、一番恨まれているのは俺の可能性が高い。お前の為だったと言っても、理解して貰えないだろうし、言い訳だと思われるだけだ。


 ここは素直に謝るべきだろう。




『盛岡、本当にごめん。調子に乗って不快になる事を言ってしまいました。もう絶対に言いません。本当に申し訳ありませんでした』鳩山




 盛岡は先生から届けられた寄せ書きに目をやる。


 一つ一つの文を丁寧に読み、誰がどんな事を書いているのかを逐一チェックするようにじっくり読み込んだ。


 そして盛岡は体を震わせて涙を流した。


 皆んなが自分の事をこんなに元気づけてくれて反省もしてくれている、と


 クラスメイトの心の籠った言葉に打ち震えた盛岡は先生にお礼を告げて、また頑張って学校に出てみたいと感じた事を伝えるのだった。



 それから少し日数が経ち盛岡は教室にいた。唯一の友達である三橋と共に休み時間を過ごしていた。もう誰もデカ盛と呼ぶ生徒はいなかった。


 もう二度と面倒事にならないように、三橋を除くクラスメイトが盛岡を視界に入れないように遠巻きな距離を取るのだった。

 


今回は寄せ書きについて考えたので書いてみました!

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