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俺のダルマさんが転んだ

残り274日!92日目!

「だーるまさんがーこーろんだ⁉︎」


 木の幹につけた頭をバッと楽しくて仕方のないといった笑顔を作って男は後ろに振り返らせる。


「えっ」


 動揺の声が漏れる。そこに誰もいなかったからである。


「えっえっ? どこに行ったんだ⁉︎」


 疑問をそのまま口にして動揺を露わにする男はキョロキョロと周りを確認する。


「さっきまで一緒にはしゃいでたのに……」


 男は先程まで一緒にいた友人と遊んでいた事を思い出す。


 平日の空いた時間に暇だと言って何となく二人で向かった広い公園には誰もいなかった。普段たくさんいる小学生達もまだ学校で授業を受けているのだろうと二人は考える。


「これだけ広い公園、俺達二人だけのものだぜ⁉︎」


 男は興奮するように言うと友人も


「童心に帰るみたいでいいな! 遊ぼうぜ!」


 と、その意見に同意するように目を輝かせて話に乗っかる。


 はじめにとにかく広い公園を二人は駆け回り、明らかに体の大きさにあっていない遊具で遊び、ブランコを力一杯漕ぎ、尻を痛めながらシーソーにも乗った。


 普段これほど弾けて遊ぶ事がない二人は本当に童心に帰り一生懸命遊んでいた。一つの木を見つけたので、だるまさんが転んだをしようと男が提案すると友人も快く了解をしてくれた。


「いいな! 小学生ぶりだぜ!」


「そしたら俺が鬼するわ!」


 そして率先して男が鬼役を引き受け、掛け声と共に振り返ると現在の状況である。


 まるで最初から誰もいなかったかのような風景が広がっており、先程までに感じていた開放感からくる高揚がどんどん冷めていく。


「どこだ?」


 遊具や木の影、隠れようと思えばどこでも隠れようと思えるが、しかし一体どこに隠れたと言うのだろうか?


 いや、そもそもなぜ隠れたのだろうかと男は思う。だるまさんが転んだに隠れるルールなんてないだろうと周りを見渡す。


 もしかするとハシャイでいた俺にドッキリを仕掛けているのではないかと男に考えが浮かぶ。さっきまで一緒に楽しく遊んでいたのに酷い裏切りだと憤慨する。


 隠れんぼの途中で帰られた時のような痛みが心を刺すが、よくよく考えてみれば隠れられる場所は限られている。だるまさんが転んだと男が言うまでに隠れられそうな場所は、滑り台の影かいくつかの木の後ろだと推測できた。


 それ以外の場所は流石に走っても間に合わないはずだと男は思う。


「たくっ」


 と、せっかくの楽しい気分を害された男は友人に一言文句を言ってやろうと友人が隠れていそうな場所を探そうと近づいていく。


 すると、案の定遊具の影に隠れていた友人が観念したのか男の前に顔を出した。


「おまーー」


「おいおい! それはルール違反だろ!」


 文句を言ってやろうとした男よりも早く友人の方が先に大きな声で男に対して文句を言う。


「木から離れるのはルール違反だろ!」


「え? いや、はい?」


 まだ遊びが続いていた事に男は驚く。ドッキリが続いているのではと男は思うが、友人の本気で心外そうな顔にそうではないと男は感じる。


「お前もしかしてダルマさんが転んだした事ないのか?」


 男に近寄ってきた友人が言う。


「お前だ! それは‼︎」


 友人に指を突きつけて指摘する男。「は?」「は?」というお互い頭に「?」が浮かび上がる微妙な雰囲気が漂う。


「え、ちょっと待って、お前の地元のダルマさんが転んだって、鬼が初期位置から離れるのか? いやいや、そんなルール普通ないだろ?」


 少し嘲るように友人は男の行動を馬鹿にする。


「いや、普通は離れないけど、急にお前が隠れていなくなるから」


「そりゃ隠れるだろダルマさんが転んだなら」


 「は?」と今度は男だけが何を言ってんだという顔をする。


「すまん、お前の地元のダルマさんが転んだのルール教えてくれないか?」


 そう言うと自分が正しいと疑わない友人が得意げにルールを説明し始める。


「ダルマさんが転んだって鬼が言い終わるまでに隠れるだろ?」


 「だろ?」と言われても男の常識ではダルマさんが転んだに隠れるなんてルールはなかったが、一度全て聞いてからにしようと黙る。


「それで鬼は最初の位置から離れずに子がどこに隠れたかを言い当てるんだよ。今だったら、『滑り台の後ろ』とかだな。簡単そうだったらもっと細かい指示にしてもいいけど、とにかく鬼が隠れ場所を言い当てたら子は捕まった事になって脱落するってルール」


「捕まらなかったら?」


「そりゃもう一度、鬼が「ダルマさんが転んだ」って言っている間に隠れるんだよ。1回目よりも範囲が広がるから隠れる場所の選択肢が増えるから鬼はどんどん不利になっていく。ただ欲張って遠くに行こうとして間に合わないで見つかる事もあるけどな」


「……お前それどこのルールだよ?」


 呆れた口調で言いながらも男は携帯を取り出して何か操作をする。


「いやいや! 普通のルールだろ⁉︎ お前の地元がおかしい……んじゃ」


 男は友人の前にスマホで調べた物を見せる。内容はダルマさんが転んだのルールであった。


「え、うそ? マジで?」


 と、ルールを見て動揺する友人を哀れな物を見る目で眺める男。


「これが真実だ」


 突きつけられた真実に愕然とする友人。


「でも、お前は木から離れて近づいて来たじゃん?」


「だから急にいなくなった不安になったんだって」


 「えっえ?」とまだ信じられない様子の友人の肩にそっと手をやる。


「まぁローカルルールだって事は地元から出ないと中々気付けないからな。よかったな世の中の常識を知れて


 あまり励ましの言葉になっていないようなセリフを友人にかける。


「何だろ、大した事じゃないのに信じていたモノに裏切られる気分だわ……なぁ、良かったらちゃんとしたダルマさんが転んだを俺に教えてくれないか?」


 真実を突きつけられ殊勝な態度に変わった友人に男はコクリと頷く。


「いいだろう、でもまずはーー」



「ダールマさんがこーろんだ‼︎」


 バっと後ろを振り向く男。後ろには人影はない。しかし、男は動揺する事なくすぐに


「そのベンチの近くにある木の後ろ!」


 と叫ぶと、男が指差した場所にあった木の影から友人が顔を出す。


「おい、なんで分かるんだよ!」


「単純なんだよ、鬼交代な!」


 男と入れ違うように今度は友人の方が木の場所へと向かっていく

 

すっかり童心が戻ってきた様子の二人は友人のローカルルールでダルマさんが転んだを遊び盛り上がるのであった。


今回は童心に帰ったので描いてみました!

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