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童貞青二才共

残り275日!91日目!

「なぁセックスってした事ある?」


「は、はぁ⁉ 何で急にせっ……すの話になるんだよ?」


 動揺した坊主頭の男子学生が恥ずかしそうにセックスという単語を繰り返して聞き返す。


「まぁないよね」


 坊主頭が答えを言う前に眼鏡の男子は読んでいる本を閉じながら勝手に代わって答えてしまう。


「……ないけどさ。何でそんな事聞いたんだよ」


 眼鏡に対して言いたい事がありそうだが、坊主頭はグッと我慢して話を促す事にする。


「最近小説を読んでいて思ったんだけど、皆セックスするんだよ。直接的な描写が無くても、セックスしてるんだよ」


「もうちょっと声抑えるか、言葉をぼかしてくれないか?」


 昼休みの教室で「セックス」を連呼される事が坊主頭にはかなり恥ずかしい事のようで、周りを気にして話に身が入らないようであった。


「性行為にする?」


「あんまり変わらない気がするな……いいや、声を抑えてくれれば」


 「わかった」と眼鏡が了承すると坊主頭が「それで?」と話しの続きを聞こうとする。


「最近、小説を読んでいて思ったんだけど少しでも恋愛が絡むとセックスする描写がある事が多いんだよ。勿論、官能小説じゃないから本当に一部の描写なんだけどさ。でもそんな描写を書くって事はセックスって恋愛事には欠かせないって事なんじゃないかって思ったんだよ」


「い、いや、まぁそうなんじゃないか?」


 坊主頭も思春期だ。そういう知識もあれば興味もある。誰かと付き合った経験はないが流石にキスやハグだけで終わるようなプラトニックな関係ばかりが恋愛ではない事を知っている。


「そうなんだよ。恋愛関係になったらセックスするのが普通なんだよ。どの読者層に向けてかにもよるけど、人生を描くとなるとセックスする事が普通なんだよ。僕らみたいな高校生くらいの年齢でもセックスをするんだ。そういう雰囲気になったら、肌と肌を重ね合うんだ」


「お前は結局、何が言いたいんだよ?」


 声量は落としたとは言え、これだけ「セックス」と繰り返されてしまえば、坊主頭は気恥ずかしくなってくる。何を聞かされているんだという気分になり、話の真意に向かうように坊主頭は眼鏡に問う。


「ようは経験してない僕は人生を描く事が出来ないんじゃないかって話。女を知らない青二才に誰かの人生を描く事は不可能なんじゃないかって」


「あぁ、書いてる小説の話か」


 坊主頭は納得したように頷く。


「人生に恋愛は不可欠とまでは言えないけど、多くの人が必要としているのは確かなんだよ。僕は誰かの人生を書いてみたいのに、人生に必要とされる恋愛におけるセックスの部分を何も知らない。恋愛感情は分かってもセックスの大切さを知らないんだ」


「別に書かなくてもいいんじゃない。年齢層によっては書いてないわけだし」


 もうそろそろ「セックス」という単語が厭らしく感じなくなった坊主頭が冷静に眼鏡の話に受け答える。


「でも、僕が読んだ小説の中で肌を重ねる事は、男女の関係を非常によく表しているんだ。ただ肌を重ねただけなのか、熱情的にしたのか、性欲を発散させる為にしたのか、子供が欲しいからしたのか様々だった。僕がどんな人の人生を書くかは分からないけど、男女の関係を表すのにセックスは絶対に必要と思う

んだよ」


「経験しないと書けない訳じゃないだろ? 魔法使えないとファンタジーが書けない訳じゃないんだし。どうしても書きたいなら想像して書くしかないだろ」


「想像しか出来ないなら好きな事も書けるだろうけど、僕は今書こうと思ったらAVとエロ漫画の知識で書きかねない。小説で読んだ知識があるけど、僕の性知識はエロコンテンツで得たモノの方が圧倒的に多いから、意識しても引っ張られかねない。というか、何が正しくて何がファンタジーなのかもよく分からないし、そもそもセックスをする感情を表現できる気がしない」


「そうは言っても彼女がいないんだし、どうしようもないだろ。相手がいないんだから俺達に童貞に取ってセックスはファンタジーなんだよ。それにファンタジーだと思える時にしか書けない事だってあるだろ」


 どうでもいいと思っていた坊主頭の弁にも熱が生まれ、童貞談義に花を咲かせる。


「それはそうかも。今だから書けるモノはきっとある。でも僕が書きたいのはファンタジーじゃない、この上ないリアルな人生なんだ。今まで普通に生きていた人がセックスする時だけ時間停止させたらおかしいだろ?」


「極端過ぎるだろ。大体、そんな生々しい描写もするのかよ? セックスの描写は肌を重ねるくらいでいいんじゃないのか? ようはそこに至るまでの工程が大事なんだろ? それこそが男女の関係を表す大事なイベントだろ」


「おぉ、それは君の言う通りかもしれない。セックスしている事に気を取られてそこまで気付けなかったよ」


「お前、本当に読書家なのかよ」


 と坊主頭は言うが、自分も漫画を読んでいて、少しでもエッチなシーンがあったらそれだけで頭のリソースが取られてしまうだろうと思い眼鏡の言う事に納得する。


「じゃあ、どうしたらセックスしたくなるのかを知ったらまた書ける事も変わってくるのかな。君はどんな時にセックスしたくなる?」


「そら、いつでもしたいだろ」


 もう坊主頭にも羞恥はなくなったようである。


「結局、してみるまで分からないだろ。あれだけ良い様に漫画でもAVでも描かれているんだから、俺らはどんだけ妄想しても良いものにしかならないし、猿みたいに早くしてみたとしか思えない。女子が同じかは分からないけど、男子高校生なんて大抵そんな感じだろ? 一見大人しそうな外見のお前だってそうなんだから」


「だね。じゃあやっぱり、僕みたいな童貞の青二才には誰かの人生を描く事は難しいって事なのかな」


「そもそもただの青二才の男子高校生が人生を描く事が無理だろ。お前が人生の何を知っているんだって話になるし」


「本は沢山読んでるんだけどね」


「それを言うならセックスも読んだ知識でどうにでもなるだろ」


 「それはそうだね」と眼鏡は肯定する。それから溜息を吐いて


「今の僕に描けるだけをとにかく書くしかないのかな、やっぱり……」


「いやいや、経験すればいいなら彼女を作ってしまうってのも一つの手だろ」


 と得意気にニヤリと笑う坊主頭の顔をジッと見て眼鏡は先程よりも深い溜息を吐く。


「それが出来ないから僕らは童貞なんじゃないか」


 呆れられるように言われ腑に落ちない坊主頭。


「じゃあ何だったんだよ今までの話は⁉ セックスの経験がしたいって話じゃなかったのかよ?」


「それはしたいけど。元々、僕は君がセックスした事あるかを聞いただけだよ。何でそんな事を聞いたのかを君が聞いたからこんな話になったんだよ」


「ん? あれ、いやまぁそうだったけど、なんだかなぁ……」


 やっぱり腑に落ちない坊主頭。しかし


「やっぱり彼女作ろうぜ! 今までの俺達は無理でもこれからの俺達は作るんだよ。小説とか無しにしても、 いずれ経験しないといけない事だろ? 人生において恋愛は多くの人に必要なんだから」


 眼鏡が言っていた事を掬うようにして坊主頭が言うと「うん」と眼鏡も肯定の頷きを見せる。


「でも、どうする」


 と周りを見渡すようにしながら眼鏡は言う。


「こんな教室の端っこでセックス連呼してる僕らに彼女なんて出来るかな」


 と、坊主頭も周囲を見るが、楽しそうに昼休みの時間を過ごしている他の生徒達が眩しくなり、暗い眼鏡に視線をすぐに戻す。


「まぁ今すぐじゃなくていいか」


「だね」と眼鏡は再び閉じた本を開き始める。坊主頭も無言で残っている弁当に手を付け始めた。


今回はセックスを連呼する話を書きました!

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