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心からの悲しみと涙

残り276日!90日目

 友達が交通事故で亡くなった。同じ学校の同じクラスの女の子がトラックに轢かれて亡くなった。


 お葬式に出るとどの子も悲しみで涙を流していた。私もそれも見て泣いた。鼻水が垂れるほど隣の子の肩を抱き合うように泣いたりもした。


 でも、私は何で自分が泣いているのか分からなかった。


 周りが泣いていたから、泣くべきシーンだと思ったから、映画のワンシーンに写るエキストラのようにその場に沿うように泣いた。かと言って演技である訳でもない。私の心には絞り出した悲しみが確かに存在しているのだから。


 亡くなった彼女とそれほど仲が良かった訳でもない。クラスメイトだったからお友達という括りに入っていただけの相手だった。だから、朝の会で先生が重たい表情で彼女が亡くなったと言った瞬間は涙が出なった。


 あの子、死んだんだと言う事実が頭の中で反芻すると、次にはお葬式とか行かないといけないのだろうかと考え、面倒だなと考えた。


 でも、亡くなった彼女と仲が良かったグループの子が真っ先に泣き始めると、伝播するように教室中からすすり泣く声が聞こえてきた。


 泣くべき時だと今更ながら気付いて私も口を震わせ同じように涙を浮かべた。欠伸をする時に涙が出るのと同じ方法で涙を流す。すると、次々に涙が流れ鼻水も出てくれば、何だか悲しい気持ちになるから不思議である。


 特に思い出がないが、その子と遊んだ記憶を少しでも引き出して、もう会えないんだと頭の中で考え、必死になってその子がいなくなって悲しいという気持ちになろうとする。


 涙も出るし悲しい気もするが、やっぱり我ながら嘘くさい気持ちだと俯瞰して冷静になると気付いてしまいそうになるので、必死に目を逸らすようにした。


 頑張って絞り出してまで感じる悲しみの感情は泣かないよりも。何も感じないよりも、もっと残酷な仕打ちになりはしないだろうか。


 それでも、友達が亡くなったのなら、悲しく涙を流すのが正しく倫理観のある行動である事を私は知っている。だから外見上、私は正しいのだと思う。


 内面だって友達の死を悼んでいると思えば悪い事でもないのだろうと思う。そう、悪い事ではないはずなのだ。友達が亡くなっているのだから悲しむのが当然で道徳的な感情なのだから絞り出してでも悲しみに暮れようとするのは悪い事ではないはずだ。


 そんな事を思うからこそ、今、亡くなった友達のお葬式で私はどうして泣いているのか分からなかった。絞り出しても泣くほど悲しくならない気持ちで、周りの空気に流され無理矢理欠伸を噛締める様にしてようやく流せた涙を流している理由が分からなかった。


 私は友達が亡くなれば悲しみ涙を流す事が倫理観のある行動だと思い、悼んで悲しむ事が道徳的な感情だから私は精一杯頑張って涙を流している。


 理由と言えばこれが理由なのだろうか。これが正しい行動で感情だと思うからそれに準じているだけ。いや、きっと私が分からないのは、準じている理由なのだろう。


 だから正しいから準じているのだろうと結論を出してしまえば、一生そこで堂々巡りをしてしまう。つまり頭の中で理由に相互関係があると結論が出ているのに、私はそれに納得がいっていないという事だった。


 何かが間違っているのだ。では何が間違っている?


――私自身であった。


 行動も内面も正しいとするなら間違っているのは私だ。


 友達が亡くなったのに頑張らないと泣く事が出来ない私も頑張って泣こうとする事も間違っているのだ。少なくとも私自身が間違っていると思っているから今、泣いている事に疑問を持っているのだ。


 存在しなかった悲しみを作り上げ、絞り切った雑巾から一滴落とすように涙を流す。


 周囲と同じ事をしているのに私だけが間違っている。外見上でも内面上でも間違った事はしていないのに私だけがやはり間違っている。


――あぁそうか。


 間違っているから。それが理由だ。


 私が間違っている事を誰にも気付かれたくないからだ。だから正しくあろうとして周囲に合わせているんだ。


 合わせていると言っても、これはやっぱり演技ではなかった。子役が母親の死んだ時ことを思い出して涙を流すような偽りの想いで涙を流しているのではない。


 しっかり亡くなった彼女の事を思って私は泣いている。必死に頭の中を探って周りと同じく悲しみに心が支配される為に、これ以上の悲しみがないと涙をながせるように。


 焼香する番になって私は一緒に泣いていた友達と席を立つ。沢山の花が飾られており、彼女が入っているであろう棺桶の上には学校の制服を着た彼女が笑顔で写る写真があった。


 亡くなったのだと痛感させられる遺影が彼女の時がここで止まってしまった事を感じさせ、遺影に写る笑顔の彼女が遊んだ記憶などを思い出させ私はまた涙を流した。


 心からの悲しみを感じて間違っている私は鼻を啜り上げ涙を流した。

今回は倫理観について考えたので書いてみました。

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