焼肉人生
残り286日!80日目!
ご馳走様といえばウチでは焼肉となっていた。
誕生日、入学式、卒業式、試験前に勉強を頑張ったお祝い、何か良い事があれば焼肉に行くのが我が家の習慣だった。
私が小さい頃に肉を焼くのは両親の役割だった。燃える炎が怖かった私は網に手を近づけられずに、いつも取って貰っていた。
少し大きくなると自分で網の上に肉を乗せて焼く事が出来るようになったが、それでも肉の脂が落ちて炎が燃え上がる様子を見るとおっかなびっくりになってしばらく近づけなくなる私であった。
それでも果敢に熱い場所に手を伸ばして肉を焼くと大人になれた気がしてしばらく友達に自慢してたのを覚えている。今思えば何をそんな胸を張ることがあるんだと思うのだけど。
親にお祝いとして焼肉に連れて行って貰った最後の思い出は大学の入学前祝いと言う名目で連れて行って貰った時だ。
県外の大学に通い一人暮らし始める私へのはなむけとしていつも行く店よりも高いお店の柔らかい和牛を食べさせてくれた。
華の大学生になるんだから臭いのつく焼肉には簡単に行けないだろうからと少しズレた気遣いで高級店に連れて行こうと思ったと両親は言っていた。
結局、女子大生になった私は親の気遣いとは関係なく焼肉に行く事になるのだが。なんなら高校生の時はした事がなかった一人焼肉まで堪能するくらいである。
もちろん友達やゼミ、サークルの飲み会など1人じゃない時もあったが、幼い頃からの習慣になっているからなのか何か個人的なご褒美に焼肉に行くようになっていた。
ご褒美と言っても金欠大学生だった私は入学前祝いに行った高級店どころか我が家行きつけの焼肉屋よりも更に安い食べ放題の店であったが。
それでも私個人の一食分として考えるとかなり奮発している方であり、食べ終えた時のお腹の満足感はご褒美としての役割を充分に果たしてくれていた。
盆や正月などに実家へ帰ると何の祝いだと苦笑してしまうのだか、私の「お帰り祝い」が開催され、それもまた行きつけの焼肉に連れて行ってくれるのだった。
父は女子大生に変な偏見があるのか、イタリアンやフランス料理とかオシャレな店じゃなくていいのかと何故か焦ったように聞くので「焼肉がいい」と私は答えた。
大学生の私が食べる安い食べ放題よりも美味しく、牛カルビの味は実家に帰ってきたことを印象付けさせてくれた。
お酒が飲めるようになった私は母に勧められた日本酒などを2人で飲んで楽しそうにしていると、下戸な上に運転手の父はいつも羨ましそうな様子で話しかけて来るのがおかしかった。
反抗期だった高校生の頃であれば無視していただろうが、大学生となり成人もした私は家に帰ると父を晩酌に誘った。
華の女子大生よりも嬉しそうに華やいだ父は流石の下戸というべきか数口飲んだだけでベロベロになり呆れた母に寝室へと連れて行かれた。
結局、残った酒で母と晩酌をして、女同士の話を夜が深くなるまで話し合った。
父はほとんど記憶がないものの、娘に晩酌された事がよほど嬉しかったようで、会社で言い回っていたらしい。
反抗期ではないとは言え、流石に少し恥ずかしいので、浮かれて言い回るのは勘弁して欲しかった。
その後、大学を卒業して就職しても同じであった。
自分のご褒美に焼肉を食べ偶に帰る実家でも焼肉を食べる。社会人になってからはご褒美の焼肉は食べ放題ではなく「少し」いいお店に変わったが。
そして結婚してからもそれは同じでありたいと彼に行ったら笑っていいよと言ってくれた。
両親もまだ生まれてもいない孫の事を既に溺愛しており、典型的な甘やかし祖父祖母になるのが確定していた。
きっと私の時は大学の入学前祝いの時だけしか行かなかった高級店に連れて行くのだろうなと想像してしまう。
両親ほどではないが私も祝うたびに成長して行く子供の姿を想像して明るい気持ちになるのだった。
今回は焼肉を食べに行ったので書いて見ました!




