多分、きっと、最高のソロキャン
残り358!8日目!
豪快に串刺したソーセージに齧り付くと溢れ出た肉汁が口元から垂れ落ちる。
気にせず刺したソーセージを全て食べきると、刺していたフォークを置き、次は酒の入った缶に手を伸ばしこれまた豪快にゴクゴクと音を鳴らして飲んだ。
垂れた汁でベタベタになった口周りを手で拭った既に空き缶となった酒缶をゴミ袋に投げ捨てた。
ジブリ映画に出てくる大男のように飯を食べる男だった。
腹いっぱいで満足したのかゲフリとゲップをした男は盛大に座った椅子を軋ませながら背もたれに倒れる。
男は山の中に流れる河原の畔にキャンプを立て、焚火の炎でバーベキューをしていたようであった。
焚火の上の焦げた鉄板を見るにかなりの量の食べ物を焼いていたようである。捨てられたゴミを見ると魚の骨もあった。
釣り道具がキャンプの近くに横たわっているのを見ると、どうやら自分で釣ったようである。
生ごみが入った袋とは別に空き缶の入った袋もあり、いかにも大雑把な風貌をしているが、しっかりとゴミの分別をしているようであった。
とはいえ、空き缶が入った袋の中にはとんでもない量が捨てられており、男が酒好きである事が分かる。しかし、よく見るとアルコール度数の低い酒ばかり飲んでいるようで、あまり酔わないように自制しているようであった。
山の中での一人キャンプ。かなり慣れた様子の男であっても、訳も分からなくなる程ベロベロに酔うというのは危険なのだろう。
だが、ベロベロではないにしても、ほんのり顔を赤くしてほろ酔い気分の男は気持ちよさそうに目を瞑っている。
山奥の涼しい風が酒で火照った男の肌を冷やす。そんな柔らかな風の音や、川のせせらぎ、時折、ぽちゃんっと魚が水面から飛び出す音など自然の環境音だけが男の耳に入る。
あまりの気持ちよさに男はそのまま眠ってしまうのであった。
星。辺り一面の星。
男が次に目を覚ました時の光景だった。
寝ている間に太陽は沈み、焚火の炎も消え、光源は夜空に光る星だけであった。ちょうど新月で月明りがないため空は余計に星で埋め尽くされていた。
椅子の脇に置いてあったクーラーボックスを手探りで開け、最初に手で触れた缶を掴む。
手に取った酒がなんの味なのかも気にする事なく男はプシュっと缶の封を開けて飲み始める。
ほとんど仰向けの体勢で飲んだせいで口と缶の隙間から零れ落ちていくが、気にせず空を見上げるのを男は止めない。
ふとした瞬間に気を抜けば吸い込まれていきそうな星空に男は胃から炭酸を抜く事で答える。
デネブ、アルタイル、ベガ、数多の星の中でも一際輝く夏の大三角形を見る。
頭の中でとある曲が流れる。
隣には誰もいないが、男にはそれで良かった。
これが男の幸せであった。
飲み干した空き缶が手から落ち地面の小石にぶつかり金属音を鳴らす。
わざわざ拾うのが億劫になった男は拾うのを帰る時にすればいいと諦める。
そしてまたクーラーボックスに入った酒に手を伸ばすのだった。
今回は「空き缶」「河原」「フォーク」の三つの単語からお話を書きました!