カエルの事を考える
残り302日!67日目!
昨晩、父がカエルを一匹捕まえてきて、私の部屋にあるケージにそのカエルを入れた。
「活きのええカエルおったから捕まえてきた」
と、父は笑っていた。勝手に飼育数を増やさないでくれと、反抗心が生まれそうになったが、最近一人で寂しくないかと思っていたので父の勝手は不問とした。
初めの一匹は私の気紛れであった。
仕事から疲れた帰った玄関先で私の前に現れたその小さな存在がどうしても愛しくてつい捕まえてしまった。
初めは空いた大き目のビンの中で飼っていたがすぐに大き目のケージを勝手そっちに移住させた。中には外で取ってきた草木や、小さいコンクリートブロックなどネットでオススメされた物を詰め込んでいった。
自分ながら見栄えは良く広大な自然に比べれば狭いだろうが、毎日食事つき外敵無しの一人部屋だと思えば何て条件の良い部屋なのかと思えた。かなりエゴな考えだが。
癒し欲しさに飼う時点でかなりのエゴなのは承知の上だったので今更だと開き直って、その代わりに絶対に世話に手を抜かない事を心に決めていた。
初めて食べさせたのは家の窓枠で死んでいたコバエだった。カエルなら、とりあえず虫は食べるだろうと探すと簡単に見つかった。コロンと腹を向けて死んでいたコバエをピンセットで掴みそっとカエルの口元へ持って行くと見つけた途端に飛びついて食べてしまった。
食べてくれた事が嬉しく暫く私は食べた後のカエルの事を眺めてしまった。あまり動く事なく顎をヒクヒクさせるカエルを見ると愛らしく思えた。
その後、2,3日は窓枠で死んでいるコバエを食べさせていたが専用のケージを買いに行った時に一緒に餌も買い、今ではそれを食べさせているが、慣れてきたのかカエルの食いつく勢いが日々増していた。初めは「ジーーパクッ!」と少し間があったが、今では差し出す前から飛びつく勢いである。
偶に構おうと指を指しだすとご飯と間違えて食べようとするくらいに食いしん坊であった。
そんな大喰らいだからか脱皮をすると一回り程大きくなった気がした。初めての脱皮は体から何か捲れている事に驚いたが、正常な脱皮である事が調べると分かり安心した。
そんな心配を他所に自分から剥がれた皮をムシャムシャと食べているのだからカエルは呑気なものだった。
ある日、ケージの水替えをしようと中のカエルを移動させようとするとカエル自ら乗ってきた事があった。今までは逃げるのでどうにか捕まえようとケージの中で追いかけっこをしていたのだが、その日は素直に手の上に乗った。
それからと言うもの、手の平をカエルに向けると飛び乗ってくれるようになった。カエルの様な生き物でも懐いてくれるという事実に感動し私の心をまた癒した。
ただやはり思う事があった。
勝手に捕まえてきたが、この子がカエルとして幸せなのかどうか。外に出たいともっと逃げ出そうとするならすぐにでも外へ逃がそうと思っていたが、ケージの中では大人しく、逃げる所か私の元へ飛んでくるくらいに飼われる事に慣れたこの子の幸せを考える事があった。
何も考えていないと思っていたが、餌をやっている自分を判別し懐く事や、細かい仕草や動きでカエルのその時の心情が何となく察せられるようになったおかげでもっと沢山の気持ちがカエルにも存在しているのではないかと思うようになった。
そのカエルの心情の中で私が一番に憂いたのは孤独であった。
外ではカエルの声がゲコゲコとうるさい程に鳴いていた。それだけ沢山のカエルは外で暮らし野性として生きていた。ゲコゲコと存在を示し合う彼らはきっと孤独ではないのだろうと私は思った。
カエルもいつも見たいにボーっとしているだけかもしれないが、遠くの方を見つめて仲間達に思いを馳せているような気がした。
そんな時にもう一匹を捕まえてきたのは父であった。最初は微妙な顔をしていた家族も今では意外と可愛げがあると時々、カエルの様子を見に来るくらいに家の中で馴染み始めた頃であった。
父が捕まえてきたカエルは本当に活きが良く、捕まえたその日はケージの中をピョンピョンと飛び回っていた。
私の捕まえてきた子はいつものように不動で特に新しい住人の事は何とも思っていないようであった。いつものように餌をあげようとするが、私のカエルはいつも通りの食いつきを見せたが、父カエルは餌を近づけても飛び跳ねるので食べさせるのに苦労した。
カエルにも個体差がある事を実感する日であった。
父がカエルを捕まえてきた次の日の朝、ゲコゲコとカエルの鳴く声がいつもよりも近く聞こえた。
寝ていた私は起き上がって中を確認すると父カエルが喉を鳴らして鳴いていたのだった。
父カエルはオスであった。ゲコゲコと鳴くのはオスだけと書いてあったのでそうなのだろう。雄雌をその時まで気にしていなかった為、何故か少しだけ面食らってしまった。
オスが鳴くのはメスを誘っているらしく、何だが私とカエルだけであった友達関係に新たなオスがねじ込まれたようで複雑な心境になってしまった。
そんな予想が的中したのか二匹は良く見つめ合うようにお互いをみるようになった。その距離はまさに男女のような距離感で、見ているこちらが思わず黄色い声をあげそうな雰囲気がそこにあった。
ただ、父カエルの方が二回りくらい小さいので尻にしかれそうであった。後で調べたで知ったがカエルはメスの方がオスよりも大きいらしく、けして私が捕まえたカエルが食べ過ぎで特別大きい訳ではないらしかった。
ただ、調べた画像を見る限り二回りも小さくないように見えた為、もしかしたら食べ過ぎで大きくなっているのかもしれなかった。
そんな所も愛らしいのだが。というより、食べている姿が愛しくてついつい上げ過ぎてしまう私に責任があるのだろうから少し反省せねばならなかった。
しかし、男女の仲であれば気を付けねばならない事ある。年頃の男女が狭い部屋の中で二人きり、よもや何も起こらない訳がなく……だ。
とは言え繁殖期はもうすでに過ぎているため間違いが起きるか分からないが、正直、繁殖したカエルを飼える程、私の余裕はない。
というかこの狭いケージで卵を産んだところで孵化して生きて行く事は出来ないだろうが。産んだ子供が生きられない場所に閉じ込められると言うのはどういう気持ちなのだろうか。
そんな自分の子を思う気持ちはないのかもしれないが、どうも彼らに感情移入してしまって哀れに思ってしまう。捕まえてきたのは私なのに。
父カエルは今日も鳴いていた。あの子はいつものようにジッと動かないが、その視線の先に父カエルを捉えている。恋する乙女の表情に、私はまた自分のエゴについて考えるのだった。
今回はカエルを飼う子がいたので書いてみました!




