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カッコカワイイ子

残り303日!66日目!

「ちょっとアンタ調子乗ってんじゃない?」


 派手な髪色に派手なメイク、着飾る事に長けた女子生徒5人組のウチのリーダー格の一人が、ブックカバーを掛けた本を静かに読んでいるメガネ女子に威圧的に声を掛けた。


「…………」


 メガネ女子は全く取り合おうとせずに無視を決め込んでいる。自分に話しかけられているなんて微塵も思っていない様子である。


「おい、話聞いてんのかって!」


 と、無視された事に苛立ったリーダーがメガネ女子の手から本を奪い取った。


 本を取り上げられたメガネ女子は一瞬ポカンと口を開けて、本の動向を探すように後を振り向いた。そこでようやく、その5人組を見とめ害意を向けられている事に気付き溜め息を吐く。


「何よ? 返して」


 奪われた本を取り返そうと手を伸ばすが、ヒョイとその手を躱すように本を上に持ち上げられる。「ちっ」と舌打ちをする音が聞こえた。


「お前のそういう態度が気に食わないんだよ! 本返して欲しけりゃ付いてこいよ」

人目のつかない場所に連れて行き、数でリンチする。それが彼女達これまでの出る杭を打つやり方であった。


 メガネ女子は美形だが派手さはない。彼女らの標的となったのはひとえにメガネ女子の媚びない態度にある。容姿は淡麗である為に一度本を読んでいるメガネ女子に偵察調査のように声を掛けに行ったのだが、本を読見続けまるで無視をされた挙句に、少ししつこく声を掛けると「邪魔」と一言吐き捨てられたのだった。


 プライドを傷つけられたリーダーはメガネ女子を標的にしてこれまでのようにリンチを加え立場を分からせようと取り巻きを引き連れていったのだった。


 本を人質に取られたメガネ女子は再び溜め息を吐いて椅子から立ち上がる。ついてくる気になった事を確認したリーダーは「じゃあ、行こうか」と声を発っした瞬間だった。


 メガネ女子が完全に油断していたリーダーの頬を殴ったのだった。パーなんて可愛らしいものではなく、しっかりと握りしめたグーで。


 急にリーダーが殴られた事に取り巻きも驚きでリアクションが取れないまま、メガネ女子は続け様にリーダーの鳩尾に膝頭を叩き込んだ。


 容赦のない一撃にリーダーは口から体液を溢しながらそのまま蹲った。丁度いい位置に来たと言わんばかりにこめかみ目掛けてサッカーボールをシュートするように蹴り抜いた。


 リーダーはそのまま床に倒れ寝心地の悪そうな教室の硬いフローリング上で昏倒する。


 あっという間に勝負が付き一拍おいてから取り巻きの女子達が悲鳴を上げる。リーダーの後ろで嘲笑していたはずの取り巻きからは笑顔が消え、怯えた表情に変わる。


 自分達のリーダーがやられたにも関わらず復讐しようとする女子はおらず、すでにリーダーとメガネ女子だけではなくリーダーのグループとの決着も一緒に着いたようだった。


 メガネ女子は落ちた自分の本を拾うと埃を少し払って再び自分の席で本を開く。


 取り巻きが恐ろしいモノを見る目で彼女を見ながら、リーダーの事を心配するように何度も名前を呼ぶ。


 すると騒ぎを聞きつけたのか漁火に釣られるかのように他クラスの生徒や担任が集まってきた。


「おい、どうした⁉︎」


 と、三十代くらいの男性教師が倒れたリーダーを見つけて駆けつける。


「あ、えっと」


 いまだに困惑している取り巻き達が状況を上手く説明できないでいると


「急に気分悪そうにしたかと思ったら倒れたんです。倒れる際に強く頭を打ったみたいなので早く病院に連れて行った方がいいかもしれません」


 と、メガネ女子は本から目を離さずに流れるように嘘をついた。


 それに対して「え?」という表情をする取り巻きだったが、目の前で見た衝撃的な光景が浮かぶと何も言うことが出来なかった。


「そ、そうか……とにかく救急だ! 保険の先生も誰か呼んできてくれ!」


 不可解な事はいくつか感じたが教師は一度それを全て飲み込むと、周りに指示を出し、まずこの場を収める事に注視するのだった。




 その後リーダーからの報復はなかった。もう関わりたくないといった様子で彼女から距離を取ることが最善であると結論づけたようである。


 あまりに人を傷つける事に躊躇がなかった事から、実はレディースの総長だとか、裏格闘技の女闘技者だとか、親がヤクザの組長だとか、読んでいる本は何か中国武術の秘伝書であるなど噂が出回っていた。


「それで結局は何者なの?」


 どうしても気になった私は敵意がない事を精一杯アピールして聞いてみた。


「何者でもない。でも、昔からよく絡まれてて鬱陶しくなったらつい拳が出ちゃうのよ。拳と脚ね。報復があると思ったけど、流石に高校生ね。みんな大人になってくれて嬉しいわ」


 と彼女は一度も本から目を離さずに話す。喋りながら内容が頭に入っているのか疑問であった。


 そういえば、そんなに熱心にいつも何を読んでいるのだろうと少しだけ内容を盗み見ると、すぐに腐の匂いを嗅ぎ取る事が出来た。


 思わず「マジか」と口から漏れる出る。


「ねえ」


 声を掛けるといい加減鬱陶しそうに「何よ?」と返事が来る。


「攻めの反対って?」


「は? 受け?」


 本に意識を向けていたせいで反射的に答えてしまったようで、すぐに「あっ」という声が漏れる。


「今度またお話ししようねー」


 と私は急いでその場から逃げた。ガタッという椅子から立ち上がった音だけが聞こえてきた。

今回は「漁火」「寝心地」「膝頭」の三つの単語から書きました!

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