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今日の天気が

残り304日!65日目!

 朝6時、目覚まし時計の音で目が覚め外を見るとさめざめと雨が降っている。


 私は太陽を覆い隠す鬱屈する灰色の空とは逆の嬉しいという感情が生まれる。

「よし、今日は休みだ」


 そう呟いて私は再び眠りについた。


 次に私が自然と目が覚めたのは9時過ぎであった。


 時間を確認する為に起動した充電コードが刺さったままのスマホをそのまま操作して動画アプリを開く。「あぁ、このまま12時コースだ」と感じながら雨の日だからと考えないようにする。こうして、午前からだらけるのは雨の日の特権である。


 私は7年間働いていた会社を辞め、フリーランスとして仕事を始めてから一つ自分の中で取り決めをした。


 それは休日は雨の日にすると言う事であった。


 と言うのも、会社員時代にストレスで仕事が辛く憂鬱な日々を過ごしていた私が限界を感じ始めていたある日の事だ。通勤する為に外に出た私はその日の天気がいい事に気づいた。


 雲一つない、完璧な快晴の大空を前に私は「あ、辞めよ」と何故か会社を辞める事を決意したのだった。


 それからすぐに辞表を出すとこれからの事を考えた。どうやってフリーで生きていくか、何をしたいか、どんな生活を過ごすか。


 辞める際の引き継ぎなどの仕事を行なっている間にもその後の事が頭から離れなかった。


 フリーとして活動するあてが出来たのはその頃であった。実は辞表を出す以前から仕事を辞めたいと思いながら自分がフリーで食べていける皮算用をしていたのだが、その計算が思いのほか正確だった。


 そして、ついに退社日となり晴れてフリーとして活動する事になった。


 スタートが大事だと張り切って踏み出した仕事は幸運にも軌道に乗る事が出来た。大量の依頼を絶え間なくやりくりし、目が回るほど忙しい日々を過ごした。


 会社員時代よりもストレスがないとは言え、単純に忙しく体が分裂してくれないかと毎日のように願っていた。


 私は限界を超えているのを感じながらも勝負どころだと、その全身を止めることなく働いた。


 結果、私は倒れた。運ばれた先の病院で目を覚ました私に医者は当然のように「過労です」と診断した。


 フリーで働いて気づいた。どうやら私は休みの切り盛りが下手のようである。


 突っ走る事が出来るとこまで走り限界がきたら倒れる。全力を出し切っているようでカッコいいと酔った事は考えなかった。それでお客さんや周りに迷惑をかけるのであれば、自己管理も出来ない駄目人間である。


 無理をして倒れた事で遅れた仕事を取り返す為に奮闘する間、仕事はしばらく受け付けないようにした。


 結果的に迷惑を掛けてしまったが、無我夢中で走ったおかげである程度の繋がりと貯金が生まれていた。少しくらい休むだけの余裕はあった。


 引き受けていた仕事を全て片付け、ようやく休みになる日、外は大雨であった。


 あの日と真逆だと仕事を辞めようと決意した日を思い出す。あんなにいい日はもう二度と来ないだろうと思った。あんなに空を綺麗に思える日はないだろうと思った。


 濡れた窓の外は灰色を超えた黒い雲が空を覆う。もしあの日の天気がこんな天気だったら私はまだあの会社で働いていたのだろうか。


 もしかしたら、雨で濡れながら出勤するのが馬鹿馬鹿しくなり辞めるのを決意していたかもしれない。そうだとしたら、あんな晴々しい想いで辞める事を決意出来なかったかもしれないが。


 そう思うと、あの日が快晴で良かった。


 しかし、であれば一段落ついた今日という日が真逆の大雨である事がなんだかあまり祝福されていないように思えた。


 そう感じてしまうと、休みになってやりたいと活発に思っていた事が急に気怠くなってきた。


 こんな日は何もせずに家でだらけていたくなった。


 私はベッドに寝転がった。目を瞑ると振る雨の音が外で心地よく響いた。「あぁ、悪くない」と感じる。雨の音を聞きながら、仕事を辞めてからの日々を思い返す。


 思えばこれ程ゆったりとした気持ちでベッドで眠った事はなかったかもしれない。


 倒れた後でさえ遅れを取り戻す為に必死だった。今日も久しぶりのまともな休日で今まで出来なかった何かをしなければと気が急いでいた。


 「あ、休もう」とその時、心の中で呟いた。


 それは会社を辞めたあの時のような晴々しいものでは無かったが、まったりとして癒される思いが心の中に充満していった。


 その日から雨の日は私の定休日となった。


 カップ麺をお昼ご飯として食べ終わるとつけたテレビから天気予報が流れ出した。


 私は急いでチャンネルを変える。次の日の天気は自分の目で見て確認するのが自分流であった。初めは天気予報を見ながら仕事の予定を組んでいたが、それだと朝起きてみる天気が味気なく、会社を辞めた時に感じた晴々しい気持ちも、ダラダラと過ごした休日のまったりとした気持ちも湧いてこなかった。


 しかし、運が悪くか天気予報を見たくないが為に変えた先のチャンネルでも天気予報をやっていた。


「今日から少し早く梅雨入りが始ります!」


 と、キャスターのお姉さんが笑顔で示す一週間の天気表は丸々雨で埋まっていた。


 どうやら私はこれから長期休暇に入るようである。一応、梅雨の事を考え、仕事の調整はしてある。


 意図せずこれからの天気を知ってしまったが、これからダラっと過ごす一週間を考えると、まぁ悪くないかなと思えるのだった。

今回は「さめざめ」「だらける」「切り盛り」の三つから書きました!

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