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可愛い威嚇

残り316日!50日目!

 野心家であるように振る舞ってきた。


 そうする事で、カマキリが威嚇をするように自分は大それた人間であるように周囲に魅せていた。自分ではそう思っていた。


 虫けらでも雄々しく立ち向かう姿を自分に重ね、自分の矮小さを理解しながら、それでも自分を大きくみせ立ち向かう姿が映っていると思っていた。


 しかし、実際に写る他人の現実はレッサーパンダが二足歩行になり手を挙げている姿であったようで、

「頑張ってるね」「偉いね」と甘い言葉を掛けられ、軽んじられていた。


 そういう言葉が欲しいのではない。例えちっぽけでも油断すれば一矢報いるような、そんな鋭さを持つ相手だと認識して欲しかった。


 レッサーパンダかカマキリかの認識の違いは応援の意味合いが違うような気がしてならない。同じ頑張ってでも「頑張って成れたらいいね」と「頑張って、お前なら成れる」くらいの差はありそうである。


 どちらも応援してくれている事には変わりないが、本気度と熱量が違っている。ただ、そんな熱量の差にも気付かずに周囲にカマキリのように振る舞えていたと信じていた私はかなり滑稽であっただろう。


 滑稽であったからこそ、私の一生懸命に大きく見せようとする姿は、ふれあい広場にいる二足歩行で立ち万歳して威嚇する愛らしいレッサーパンダそのものにみえたのだろう。


 とんでもない見世物小屋のピエロである。サーカスであるならいっそ火の輪潜りでも披露すればレッサーパンダでも見直してくれるかも、と思って想像するが凄いという感情のすぐ後にはやはり可愛いという感情が湧いてくる。


 これがカマキリであれば、文字通り飛んで火にいる夏の虫を体現する事になるのだろうが、もし成功出来ればそれは賞賛の拍手に変わるはずである。


 小さいモノが命を賭して成功させたものには熱だってこもる。レッサーパンダだって同じく丸焦げのリスクを背負いながら命を賭しているのは変わらないはずなのに。


 それもひとえに私の身長が小さい事が原因であるのだろうが。


 幼い頃から身長が小さい事がコンプレックスだった。だから、小学生の頃に見た自分よりも圧倒的に大きな人間を相手に両鎌をかかげ、羽を大きく広げて威嚇する小さなカマキリに憧れを抱いた。


 好奇心で捕まえようとしてきた子供をビビらせる姿に当時の私は感動していた。そのカマキリは検討むなしく、ガキ大将ケンちゃんに捕まり、見るも無残な姿に変えられていたが。


 それでも、私はこうありたいと思った。


 例え小さくとも、劣ろうと、負けようと、一瞬でも相手を畏怖させる存在であろうと生きてきた。


 しかし、私が上げていたつもりだった鎌は、ただモフモフした可愛らしい手を挙げているように見えていたらしい。


 レッサーパンダも本気で威嚇しているつもりなのだろうから、まぁつまりは同じように私も見られていただけなのだろう。


 上げた両手はもはや降参の合図である。


 もうフグの威嚇のように頬を膨らませてみせてやれば、可愛さ満点であろうか? まぁ、そんなあざとさは持ち合わせていないのだが。


 結局、カマキリとレッサーパンダの大きな違いは人を傷付けられるかどうかなのかもしれない。その手についているのが鎌か肉球かの違いなのだろう。


 他人を傷つけられるかどうか。私はどれだけ周囲を威嚇しても、きっと誰かを攻撃する事がないと思われているのだ。実際、誰かを傷付けた事はない。


 それならカマキリと思われないでも仕方がない事なのかもしれない。


 ただ、忘れちゃいけないのはレッサーパンダだって獣であるため爪だって持ち合わせている。研げばカマキリ以上の殺傷力をもって攻撃する事だって可能なのだ。


 と、自分の爪を見ても綺麗に整えられた丸爪が並んでいるだけである。これでひっかけばそれなりに痛いだろうが、私は野生の獣ではないので、実際に攻撃するというのは間違っているだろう。


 これまで生きてきて、結局、私は何の攻撃も出来ずに手を広げて威嚇してきただけであったようだ。


 もうどうする事も出来ない。まさに「お手上げ」状態な私であった。


 お後がよろしいようで。


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