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え、ダ〇シム?

残り322日!44日目!

 姉が「自分探しの旅へ行く」と言い残して3年の月日が流れた。初めは単なる旅行だと思っていた僕ら家族一同は1週間、2週間と経っても姉は帰って来ず、何かあったのではと心配のなった頃、手紙が一通届いた。


『自分を見つけました。しばらくインドで修業します』


 と訳の分からない手紙が届いたと思うとそれからパッタリと連絡が途絶えていた。


 家族全員、姉の事は心配であったが、昔からおかしな人間であった事は理解していたため、無事を願いつつ、姉がやりたい事を全うして帰って来るのを待っていた。


 そして、それから3年。姉の存在が頭の片隅に残る程度となった頃である。


「ただいまー」


 と、玄関が開いたかと思うと唐突に姉の声が聞こえてきたのだった。夕方が過ぎた頃、父も仕事から帰

ってきており、家にいた僕、父、母、ミニチュアダックスのココアが急いで姉を出迎えたのだった。


 姉は家族総出の出迎えに目を開きつつ嬉しそうに沢山のお土産を家族に渡した。母には紅茶の詰め合わせとカレーのレトルト、父には何だかよく分からない柄物のシャツ、そして僕には像の置物を買ってきた。


 ずっしりとした像の置物、ガネーシャと呼ばれるインドの神の置物は「なんやねん」と言わんばかりにじっくり見ている自分を睨みつけている気がした。


 その日は姉の無事な帰りを喜び、食卓でインドであった事を聞いた。


 姉はそう来ると思って仕込んでありますと言いたげに得意そうにインドであった事を語った。


 そもそもインドに渡った経緯は自分探しに行くと言うのはそういうものだと教わったからであるらしい。そんな適当な事をこのおかしな姉に吹き込んだ姉の友達に一言いいたい気持ちはあったが、しかし、まさか自分のちょっとした話題が友人をインドに駆り立てるなんて想像もしないだろうから、どちらかと言えば、姉の友人には同情すべきなのかもしれない。


 一人でインドに行った姉はもちろん現地の言葉が分かる訳もなかったが、どうにか身振り手振りやパッションで乗り切ったらしい。陽気に行く人全員に話しかけ、わちゃわちゃと手を振り現地の人間を困らせているイメージが容易についた。


 そんなこんなでインドを巡ること4日目にして、インドは楽しいが当初の目的がまるで見つかっていない事に気付いた。


 もう帰ろうかと考え始めた5日目に姉はある人物に出会った。その人物との出会いが姉をインドに留めたという事なので、家族全員が姉の話に聞き入った


 溜めに溜めて姉が教えてくれた人物は完全に『ダ〇シム』だった。


 姉が悪漢に襲われそうになった所に、腕を伸ばし、宙に浮かび、瞬間移動をし、火を操る坊主の僧が現れ助けてくれたそうだ。姉はその時に求めていたものを見つけたようで、どうやったらその力を手に入れる事が出来るかを聞くと。ヨガのおかげだと教えてくれたらしい。


「姉ちゃん、それダ〇シムじゃ……」


 と言うと、姉は頭に「?」を浮かべ、「誰それ?」と本当に知らない様子だった。ゲームに興味はない姉が知らないのは無理もないが、それにしても、それほど解像度が高いゲームのキャラの話をされても信用は出来なかった。


 それは他の家族も同じで姉がインドから頭がおかしくなって帰ってきたと嘆くが、元々、普通の子ではなかった事を改めて思い出し、もうそれ以上の話は話半分に聞き流していた。


 僕も姉の事だからと特にそれ以上興味を持たずに話を聞いていた。要約すると、その『ダ〇シム』のような人間と共にインドを巡って、姉がそうであったように、困っている人を助け歩いていたようだ。


 その間に修行を付けて貰っていたそうだが、どうも話が胡散臭く、3年間の間で師匠の村へ行き、村の若者と主にヨガに明け暮れたそうである。しかし、その修行というのも、何故か大きな象の背中の上でヨガをし、ガンジス川にて30ノット以上で進む船上で心乱さずにヨガをするなど、よく分からないものが多かった。


 実際に『ダ〇シム』がどんな修行をしているのかはしらないが、姉の話は本当にゲームの世界で行われていそうなふざけた修行内容であった。ぶっ飛び過ぎた姉の話にもう誰も半分すら話を聞いていなかった。


 とはいえ、楽しそうにインド滞在中の話をする姉に両親はただ無事でよかったと胸をなでおろしたのだった。


 ただ僕は一つ気になった事があり、食卓を後にする前に姉に聞いた。


「何で今になってインドから帰って来たの?」


「師匠が戦いに出向くから私の面倒みられなくなったから帰ろうかなって」


 そんな適当でいいのだろうか。姉らしいと言えばらしいが。そもそもどこまでが本当の話であるかも分からない訳で、僕もそれ程興味がなくなったので自分の部屋に行こうと席を立つと


「力も少し身についたし」


 と、言う言葉が耳に聞こえ頭の中で処理するまでに僕はリビングから出ていた。




 それから姉はインドで学んだインストラクターという触れ込みでヨガ教室をひらくつもりであるらしく、その準備を進めていた。


 自分探しに行くと言い残してインドに向かう時もそうだが、姉の行動力だけは本当に尊敬できるものであった。


 インドで学んだヨガは本格的なようで毎日ヨガのポーズをする姉は腕が伸びはしないにしても軟体動物のように体が柔らかくなっていた。


 母も気になったらしく、自分のヨガマットを買い、姉がヨガをしている横で教えて貰いながら一緒に変なポーズを決めていた。


 僕も父も参加する事はなかったが、時々、集中してヨガをしている姉を見るとほんの少しだけ浮いているような気がした。


今回は「ノット」「ヨガ」「仕込む」の三つの単語からお話を書きました!

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