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時代の一部

残り363日!三日目!

 町中を歩いているとスマホを見ながらスイスイと人込みを避ける人間がいる。器用なモノだと危ないなと思いつつ感心してしまう。


 スマホが手放せないのは現代の病気だと言われていたが、ああも呼吸をするかのように扱われては病気というより、もはや体の一部となったようである。


 一部と言ってもロボットのように本当にスマホが体に組み込まれて機械化されている訳でもないが、小型化軽量化ミニマリズムが流行っている現在を考えると人間はいつしか自分の体にスマホを搭載し始める気もする。


 文字通り体の一部。


 まだまだ先の未来な気もするが、自分が死ぬ前には人間の新たな一歩として実装されていそうな気もする。


「じいちゃんの若い時はスマホと体は別にあったんじゃ」


 なんて昔語りをしながらアンティーク品となったスマホを奥のタンスから出して孫からナニコレと言われるのだろう。生きて25年経って、もう既にガラケーが小中学生達にアンティーク扱いされている事を考えると、意外とじじいになる前にそんな時代が来るのかもしれない。


 スマホは分かりやすく時代を革新させたものだろうが、もっと色んなものが気付かない内に絶え間なく変化しているのだろう。


 目まぐるしく変化していく現代で、先程の女子高生のようにスマホを見ながら歩いたりする事は俺には出来ないだろうが、それでも時代の変化に少しでも対応していかないといけないのだろう。


 そうでなきゃ孫に昔語りが出来ないではないか。


 直近の問題として、孫以前に付き合っている人物がいない事をより嘆くべきかもしれない。異性との情事はどれだけ時代をえても変わらない事すらまともに出来ていないのに時代の変化に対応しようと言うのがおこがましいのかもしれない。


 いや、しかし、晩婚化が進んだ事を考えれば今の俺は時代の変化に乗れていると言えるかもしれない。単に時代の波に身を飲みこまれ流されているだけなのだろうが。


 いっそ時代のせいにして、現状に甘んじたい衝動に身を焦がされるが、そうもいかない。別段、俺は時代が時代なら大物になっていたという性格でもないのだから。


 これだけ文明が進んで車に電車が町中を走り回っている中、俺は今でも自転車に乗って会社までの道を必死こいてペダルを漕ぎまわしている。


 車輪とは人類が自然界には無い形を自ら発明した偉大な産物であるような話を聞いた事があるが、なるほど、確かに歩くよりずっと早いのだろうが、俺の交通手段はエネルギー革命がまだ起きていないようであった。


 ビュンビュンと俺の事を追い抜いて行く他の乗物達を見ると、コンチクショウと思ってしまうのは確かだが、自分のエネルギーを消費するのは存外悪くない。


 25歳になって昔よりも太りやすくなってきたと言う周囲を尻目に、見せる健脚は日頃のしんどい思いを浄化してくれる。運動の大切さも時代の流れの中でも不変なものだ。


 ただ、夏の暑さに晒されながら漕ぐ時は、車内の冷房をつけ快適に出勤している奴が羨ましくて仕方ない。体を動かす、鍛える以前に暑さで頭がやられかねない。


 熱中症は炎天下に身をさらす俺に取っては死活問題である。帽子に水筒は必須であった。


 現代の中では時代遅れに思われるが、原始時代と比べてしまえば幾らか気が紛らわせる。昔は自転車すらなかった。火も食料も水も昔は全て自給自足だと思えば俺の生活なんて屁のカッバだ。何百万年と言う人類史を見れば今の俺はどれだけ豊かな事か。


 なんて事を考えても気休めにしかならない。広大な宇宙の果てや地球の歴史を振り返ると本当に少しだけ暑さを忘れさせてくれる程度の気休め。


 広大な宇宙に生まれた奇跡の惑星地球に生まれた人類史の中に生まれたちっぽけな存在の俺。


 人類史にとって居ても居なくても何も変わらないだろうが、俺は今日も自転車のペダルを漕いで回す。


 変化し続ける時代を少しでも快適にする小さな歯車のように。

今日は「スマホ」「病気」「自転車」の三つの単語からお話を書きました!

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