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多分、きっと世界一の青春

残り341日!25日目!

 海が近く雰囲気の良い公園にただ一人。


 海辺に近付く為の階段の段差に座って缶に入った酒を一気に呷った。


 むしゃくしゃと、むしゃくしゃとする。


 カツカツカツと貧乏揺すりが止まらない。


 やきもき、やきもきと気持ちが納まる事なくもう一度酒を飲む。


 再び一気をしようとするが中身が少量しかなく、ちょびっとしか出て来ず、もう空き缶とかしたモノを叩きつける様に下に投げつける。


 カンカンカラカンと勢いよく階段を下りて行った空き缶はそのまま海に落ちて行ってしまう。


 イラつきながらも、海を汚したことに罪悪感を覚える。


 しかし、拾いに行くほど善良でもない。


 少し音を立て過ぎたようで周囲の注目を集めているのが分かる。夜でまばらとは言え周りにも人がいる、特にカップルが多く、いる。


 そんな連中の雰囲気をぶち壊していると思えば少しは気持ちも楽になる。


 海を汚す事は躊躇しても、この場の雰囲気を汚す事には一切躊躇わない。


 みんな自分と同じ気分になってしまえばいいと。


 どうせここにほとんどの奴が俺と同じ目に遭うんだから、というか遭ってしまえと呪いをかける。


 俺だってお前らみたいに幸せにしている時があったんだ、初デートの場所はここだったんだから。今飲んでいるこの場所で、肩を寄り添い合わせて海を見ていたんだから。


 あー涙が出てくる。


 それが今では周りに迷惑を掛けて海を汚して何をしているのだろうか。


 きっとこういう所が……なんて思い始めると酔った勢いでムシャクシャして、せっかく忘れていた悲しみがどっと押し寄せてくる。


 涙ぐむ。嗚咽が止まらない。


「ひぐっ、うぐっ」


 なんで……と、どうして、と。


 なんでもどうしても何度も聞いた。


 何度も聞いてなお、なんで、どうして、と思ってしまう。


 理解できても納得が出来ない。理性に感情が追い付かない。


 追い付けない。当たり前だった、付き合っている時に居たその場から感情が動いていないのだから。


 まだ好きなのだから。


 今度はポケットから煙草の箱を取り出して火を付ける。


 ユラユラと立ち昇る煙がまた一緒にいた時の事を思い出させて来る。


 何をしても、何一つとっても思い出させてくる。


「すー……はぁーー」


 煙草のニオイが口の中から抜けていく。メンソールが好みの彼女に合わせた煙草は口の中をスッキリさせた。


 こんな気分の時くらいタールの思い煙草が吸いたかった。


 というか、もう付き合ってないのなら別にメンソールである必要はもうないのだから。


 吸いながら右足の貧乏揺すりは止まらない。どこかに意識を分散していないとイライラが爆発してしまいそうだった。


 結局、煙草は2吸いして火を消してしまう。


 別に不味いとかではなく、ただ味覚が思い出を刺激するのが嫌だった。


 ピコんと携帯が鳴る。がばっと携帯を見るが友人からのメッセージだった。


 一体、何を期待しているんだとアホらしくなって、友人のメッセージを確認すると一つのURLが張られてあった。


『これでも聞いて待っとけ』


 と、一言書いてあった。


『ついでに煙草買ってきて、いつもの』


 と、返信する。


 URLを開くと少し古めの有名な失恋ソングの動画に飛んだ。


 今更こんなものと思うが、せっかくの友人からのオススメ曲なのだからと素直に再生ボタンを押す。


「グスッ、グスッ」


 サビで涙が止まらなくなっていた。


 初めて知った。これ程までに失恋ソングが心に刺さる事を。


 歌詞一つ一つが自分の気持ちに寄り添って、心を刺してくる。聞けば聞くほど心が痛くなるのに、何故だが涙を流す程に心が軽くなっていく気がした。


 音楽ってすごいんだなとこの時ばかりは本気で思った。


 友人のオススメを聞き終わるとすぐに別のオススメに出てくる失恋ソングを流した。これもまた、心を刺してくる、が、なんだが心地よい気持ちにもなってくる。


 沈んでいる気持ちに酔い始めているようであった。


 数曲、聞いている内に連絡をくれた友人がやってきてくれた。数人の友達を連れて。


「ほら、奢りだ」


 と言って煙草を渡してくる。メンソールではなく付き合う前から吸っていたレギュラーの煙草。


「さぁ飲むか、歌うか、踊るか、騒ぐか、どれにするよ」


「とびっきりでかい声で歌いたい」


「よっしゃ、そしたら浜辺いくか」


 カラオケじゃないのかよと思ったが、多分どの選択をしても浜辺に行く選択肢しかないのだろうと思った。


 後ろにいる別の友人が花火を持っていたからであった。


 こいつら俺の失恋を口実に騒ぎたいだけなんじゃないかと思えてきたが、今はそれでも有り難かった。


 浜辺に着くと率先して一人が海に突っ込んでいった。俺もやけくそになって服を着たまま海に飛び来んだ。夜の海は冷たく、大はしゃぎ。


 寒い寒いと言いながら吹き出し花火に火を付けて手に持ったまま点火する。


「あっつ、あっつ」


 と言いながらまた海にダイブした。


 何が面白いのか分からないがとにかく笑った。


 歌も歌った、聞いたばかりの失恋ソングをうろ覚えのまま大声で。音痴な声を上げながら。


 全員騒ぎつかれくたくたになった時、海の向こうから朝日が昇る。


 水平線をキラキラ照らす光は今まで見た何より綺麗に思えた。


 テンションが上がって全員で集まって取った自撮り写真は集まり過ぎて海が写っていない時は腹を抱えて笑った。


 多分、きっと世界で一番青春しているのは俺達だった。


今回は「空き缶」「貧乏揺すり」「階段」の三つの単語からお話を書きました!

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