デスゲームの裏役
345日!21日目!
月明りの綺麗な夜、アスファルトの壁は亀裂が入り、触れればボロボロと瓦礫が落ちてくる程脆くなっており、窓もほとんど吹き抜け状態で意味もなしていない。
そんな廃墟となった学校の体育館に白と黒の横ボーダー柄の服、つまり囚人服を着た人々が集められていた。
今時、本物の囚人がそんな分かりやすい囚人の恰好をしている訳もなく、彼らは偽物で囚人服を自ら着たまたは誰かに着せられているという事になる。
ガヤガヤと朝礼前に集められた生徒達のように騒ぐ囚人服の人達。
この学校が廃墟ではなく囚人服が学校の制服であればまさにな状況であっただろうが、実際は違和感だらけの状況。
急にバッと体育館正面にある壇上の明かりがついた。囚人服達は揃って会話を辞め、壇上に目をやる。
すると、不気味な仮面を付けたスーツ姿の男がゆっくりと落ち着いた様子で明かりの方へ歩いて行く。
そして壇上に設置されたマイクを手に取るとスイッチをいれる。
「皆様、今日はお集り頂きありがとう御座います。私は今回のゲームの支配人である、Xでございます。もうここに参加して頂けているという事は皆様すでにこれから始まるゲームについて了承してここにいらっしゃっていると思います」
支配人を名乗る謎の男『X』は淡々と話し始める。
「そうです。ここでその囚人服を着ているアナタ達は我々が開催するデスゲーム――命を懸けた『ケイドロ』に参加を了承したという事です。おっと、今更辞めたいと言っても許されませんよ? 我々は説明をきっちりしたはずです。それでも尚、あなた方は参加すると仰ったのですから」
支配人Xに文句を言う人間は一人もいない。今からデスゲームが始まると言っているにも関わらずだ。本当に囚人服を着た彼らは了承してここへやってきている様であった。
「もうすでに聞いていると思いますが、今回のゲームのルールを説明させて貰います。何、そんなに難しいものじゃありませんよ。皆様も子供の頃に一度くらいは遊んだ事がある『ケイドロ』をこの廃学校で行って頂くだけです。アナタ達が囚人役となって、彼ら警察から逃げて頂きます」
と、体育館の後ろを示すと、五人の警察官の恰好をした男が敬礼をして並んでいる。
「彼ら、警察官である五人がこの学校の中を徘徊しております、囚人である皆様は彼らから2時間逃げきる事が出来れば勝ちとなります。しかし、もし彼らに捕まってしまえば――」
パンっと破裂音がする。その音に驚いて何人かの囚人はビクリと肩を震わせる。
見ると支配人Xの手に銃が握られており、天井に向けて撃ったようであった。
「ゲームオーバーです。これはデスゲームですので、それがつまりどういう事か、分かりますよね?」
支配人Xは銃を懐にしまうともう一度マイクに向かう。
「校内には皆様を救うお助けアイテムも隠されています。手に入れれば一気にゲームを有利に進める事が出来ます。ただ、動くという事は警察官に見つかるリスクも増えるという事、どちらのリスクを取るかは皆様次第です。話は以上です。もうお逃げいただいて結構です。10分後のチャイムがゲーム開始の合図となります。それでは皆様のご武運を――」
話は終わりと言った様子で支配人Xは華麗にお辞儀をして壇上から消えるのであった。
「お疲れ支配人X」
「やめろ、いじるな」
パソコンと向き合っている黒い髪の青年に屈強な体をした茶髪の男が話しかける。よく見ると、パソコンの隣には支配人Xが付けていた不気味な仮面が置いてあった。
「で、どうだ今回のデスゲームの結果は?」
「参加者60人で生き残ったのは28人、半分くらいだ。少し生き残り過ぎだ。このままだと大赤字だぞ。やる気出したのかよ警察官」
「俺は15人捕まえたぜ? 他の奴らが怠けていたんだろ。というか、今回の生き残りが多いのはお助けアイテムの多さと強さが原因だろ」
「確かに、前回に比べて救済アイテムはかなり補強したからな……また調整する必要があるな」
そう言うとまた青年はパソコンに向き合った。
「他の警察官も俺くらいだったら楽しょうなのにな」
「お前が異常過ぎるんだよ。ふむ、警察官側の個人スペックが違い過ぎるのも良くないか……次からは後半に出てくる理不尽枠として出場させるのもありだな……」
「え、俺の出番減らさないでくれよ、もっと人を殺したいんだよ」
そう言うと茶髪の男は指で銃を作りバンと撃つ真似をする。
「殺したいって今回のデスゲームは偽物だろうが、そんなシリアルキラーみたいな事を言ってんなよ」
「気分だよ気分。でもよく考えたよな、廃墟で体験版のデスゲームをするなんて」
「リアル脱出ゲームとか体感系のアトラクションが増えているんだ、デスゲーム体験なんて刺激的なモノがあったら流行りそうなものだろ。それなりのホラー演出と緊張感が好きな人は楽しめるはずさ」
つまりは先程のデスゲームは全て偽物であるという事だった。体験型の疑似デスゲーム。商業用に開発されたアトラクション。偽だからもちろん死人も出ない。
「今回は生き残り過ぎたから、アイテムを減らすか、効果を弱くするか、警察官側を多くするか」
「俺はその辺はよく分からねえから頼むぜ相棒」
「任せとけよ、その代わりに本番は頑張って貰うからな」
「あぁ、俺が全員ぶち殺してやるよ」
「それじゃあ、客が冷めちまうだろ……いや、そこも俺が調整しないといけない部分か……だからこそのこのリハーサルだ。さぁ、『本番』まで時間がない、まだまだ開催するぞこの体験デスゲーム」
パソコンに向かい合ったまま黒髪の男は言う。
「最高のデスゲームを客に提供するのが俺達の役目だ。この偽物のデスゲームを通して、鑑賞している客の血沸き肉躍るような本物のデスゲームを開催してやる」
そう言うと企画書デスゲーム『ケイドロ』に青年は再び修正を加え始めるのだった。
今回は「ボーダー」「廃墟」「偽物」の三つの単語からお話を書きました!




