痛みは何より心を折る
残り348日!18日目!
町から少し外れた河原に掛かる高架下、日光や雨が凌げる場所として普段は子供達の遊び場やバーベキューの会場として使われる事も多い。
しかし、今この場所はそんな楽しげな空気は一切ない。
「なぁ、どう落とし前つけんだって!?」
怒号が高架下で響く。叫ぶ女子に壁に叩きつけられ、「ウっ」と呻き声が漏れる。
「どうって、私何も――」
「あぁ⁉」
大きな声と剣幕で有無を言わしてくれない。取り巻き達も冷やかな視線を私に送っている。ここに味方なんていなかった。
「何もじゃないでしょ? 言い訳じゃなくてまず謝罪するのが当然じゃないの?」
さも正義はコチラにあるような言い方をしている。謝れば私がしたと認める事になる。それは結果的に弱みを見せているのと変わりない。
どうせ許す気なんてない。気に食わない私の事を彼女達は痛ぶりたいだけなのだから。
「はぁ……」
と、私に聞こえる様に溜息をつく。
「ダメだわコイツ。ちょっとは申し訳ない気持ちでも見せてくれたら許してやろうと思ったのに」
そんな訳ない。私を許そうなんて少しでもあるなら人目につかないこんな場所までわざわざ連れて来たりしない。
最初から、私が何を言っても、コイツらは私の事を痛めつける気でいる。
「何? その反抗的な目?」
どうやら私はこんな時でも相手を睨んでいたみたいであった。
そう思うとコイツらの言う事にも一理あるのかもしれない。今日、許すつもりがなくとも、今までに募らせた感情がついに押し寄せたという事なのだろう。
反抗的な態度を取らずに、許しをこいていたら、最初から無条件降伏を態度でも言葉でも宣言していれば、ここまで酷いイジメに至らなかったかもしれない。
でも、私に非があるように言われて、何もしないでひれ伏す事なんて出来なかった。
「はぁ……」とまた聞こえる様に溜息をついた。心底ガッカリだと煽る様に見せつけてくる。
「ここまでするつもり無かったんだけど……アンタがそういう態度なら仕方ないよね?」
ガサガサとカバンから取り出したのは銃だった。まさか本物じゃないだろうが、銃のフォルムをしているだけで委縮させる力があった。
「兄貴に借りてきたんだ。改造してあって人にが絶対向けちゃいけないらしいんだけど」
バチっと腕に強力な電流が奔ると燃えるような痛みが広がる。
「ああああぁぁ!!!!」
立っていられない程の痛みで膝から崩れ落ちてしまう。
「なになに? 当たった? どこに当たったの? 腕?」
初めて使ったのにセンスあるかもなんて、痛さで藻掻く私を見ても逆に楽しそうな様子を見せる。
「ねぇこれ、肌に直接撃ったらどうなるかな?」
「ひっ」と声が出る。痛みで抑えている腕の部分は制服の上からだった。しかも、ある程度の距離をあけて。
私はこれから襲う痛みを想像し恐怖に屈した。
「ごめんない! ごめんなさい! 許してください!」
止まらなかった。許しを請う言葉も、涙も、鼻水も、堰を切るように流れ出てきた。
「うわ汚なっ、急にそんな態度変えて恥ずかしくないわけ?」
ドン引するように言うが、満足そうな笑みを見せる。
「ごめんなさい、本当に、私が悪かったから……」
「でも、本心じゃないんでしょ? だって何もしてないって言ってたもんね? その場しのぎに謝ってるんだ」
さっきの私の言葉を彼女はあげつらう。あっさり屈服した私を責め立てる。
「違うから! 本当に思ってるから!」
私はこれほど弱かったのか。
何をされたって屈しないと思っていた。無視されても、自分のモノを隠されたって、馬鹿にされたって。
心は固く閉ざせば守れるが、体はそうではない。痛みは直接的に脳に恐怖を植え付けてくる。
「土下座して謝って」
嗜虐的な笑みを浮かべて彼女は言う。
――バンッ
空に向けて発砲し響く破裂音を聞くだけで、足が竦み、もう逆らう事なんて考えられなくなった。
両手を土につける。
この世に主人公なんていない。
頭をゆっくり下げると地面についた。河原のコケのニオイや土の臭いが近くに感じる。
「本当に申し訳ありませんでした」
地面に擦り付けた頭は悔しさと恐怖でいっぱいになった。
誰も私を助けてはくれないのだ。
今回は「河原」「銃」「町」の三つの単語からお話を書きました!




