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レン  作者: N
6/11

文月 中編

蒸し暑い日だった。

最悪な気持ちで目を覚ました。

よく寝た気がする。疲れていたのかも。

時刻は12時を過ぎていた。

レンから連絡が来ていない。…あれ、いや昨日私の方が返せなかったんだ。


土曜日。

昼過ぎまで何の不安もなく惰眠を貪り、

ジブリを観ながらのんびり過ごす。

そんな週末など私にはもう来ないのかもしれない。


英会話のYouTube動画をかけながら、

溜まっていた洗濯物や、掃除をし、うさぎのゲージの掃除をする。

一人暮らしは、立ち止まったり、悩んだり、泣いたりする暇がないのだ。

不器用な私は生きづらさを抱えながらも、こうやって日々を粛々と生きていくしかないのだ。


夕方になると、雨が降ってきた。

台風が来ているらしい。

水災の事案だ。きっと月曜日は車の被害で忙しいだろう。


スマホのLEDライトが緑に点滅していた。

電話が来ていた。レンだった。

おそるおそる折り返す。


「はい」レンが低い声で出た。

「もしもし。…電話に出られなくてごめんなさい。あの…」

「元気?」レンがいつもの明るい声で言った。

「うん」私は答えた。たった今、元気になった。

「昨日、お返事なかったから話したくなって。」かけちゃった、と彼は無邪気に笑った。

彼の優しい話し方にどっと涙がこぼれた。

「…。」彼は私の様子がおかしいことに勘付いたのかしばし黙り込んだ。

必死に涙声にならないように、低い声で話そうと努めた。

しかし、彼にはバレている。

「……雨も降ってきたし、希さんのお家お邪魔してもいいですか。プライムでジョーブラックをよろしく観れるよ。一緒に観ましょう。あと、ぼくは勉強ができない読みたいって言ってたでしょ。今持っているよ」レンが一気に話した。

「うん」

切ったあと、我慢をしていた涙が止まらなかった。

はじめてレンが家に来るという歓喜なのか、

それとも、社会に迎合しようと必死な自分の限界の涙なのか、

もう、いろいろと分からなかった。

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