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レン  作者: N
2/11

帰り道には、弁当屋、獣医、パン屋…いろいろあって、

飲み屋もそれなりにあった。

一軒のバーの前で私は立ち止まった。

そこはアメリカ人の男性ふたりが経営するバーで客も外国人が多かった。

美味しいビールが売りらしい。

いつも繁盛していて、楽し気な雰囲気が平日でもあったのだ。

金曜の夜だというのに、今日も眺めるだけだったな。

きっと私が向こう側になることはないのだろう。

溜め息をついた。


「あのー」

あまりに突然でびっくりした。

男性から声をかけられたのだった。

ふわふわの髪の毛、丸くてクリクリとした目、

高い鼻、唇は厚くてまるで女の人のようだ。

背は高くないが、戦隊モノに出てくる若手俳優みたいだ。

歳は20代後半くらい。

「たまに眺めていらっしゃいますよね。」

「はい…。」

「あの、僕…ここの従業員なんですけど、良かったら入りませんか。」

控えめな調子で彼が言った。

「はい。」

言われるがままに入ってしまった。

急な展開に驚いた。

カウンターに案内され、とりあえず座る。

先ほどの青年が「何を飲みますか?」と尋ねた。

「あっ、えーと、ビールで。」

ビールが出されると、一気に飲んだ。緊張している。

「急に声をかけてすみません。あの…素敵だなって思って。」

店内は混んでいた。彼は声を潜めて、私の方へ身をかがめてそう言った。

何ですって。素敵だと?絶対に騙されない。

何か裏があるんだ。こんなうまい話がある訳がない。

物静かな感じを装って軟派な奴だ。


「ありがとうございます。」私はそう答えた。

「お名前を訊いていいですか。」

「のぞみと申します。」

「漢字でどう書くんですか?」青年が尋ねる。

「希望の希でのぞみと書きます。」私がそう答えた。

「僕は蓮といいます。」レンは言った。

「ここでバーテンダーをしています。」彼はそう続けた。


最初は軽い奴だと散々心の中で思っていたのに、

私はびっくりするほどあっという間に、

本当に、あっという間に彼の控えめな笑い方や声、表情、話し方を好きになっていた。

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