拳銃を装備した学生達に紛れ込んだ人外が、人間の欲望に翻弄される物語
彼女は倒れた。目を覚ます筈がない、だって、今も血と肉をかき分ける感触が手に残っている。
自分は彼女達に殺された。目を覚ましたのは奇跡などではない。既に決まっていた結果だった。
「酷いのか?」
「ええ、これ以上無い程に。今はあなた自身が抑制していますが、もう猶予はありません」
言われるまでもない、限界だとわかっていた。
「猶予か、俺をどうするんだ?」
「‥‥もう殺しません。私もマトイも、もう‥‥出来ません‥‥」
ネガイが目を覗きながら涙を流してきた。顔に落ちてくる涙すら暖かい。
ネガイはこんなにも優しい―――こんな俺にでも。
「ごめんなさい。本当に、もう、なにを言えばいいか、わからないんです‥‥」
目から顔を離しても、ネガイはまだ謝ってくる。それを止められなかった。この体の中に、二度と癒えない死の恐怖が一生残ってしまったから。
ネガイとマトイ、二人に会って話せば、また眠らせて貰えれば消える。
そんな事あり得ないとわかっていた。
でもきっと消えて、忘れられるって思っていた。
二人も俺が許してくれるって――—それぞれ思っていた。でも現実は違った。
「俺にだって、わからない。もうお前達に会っても消えないんだ。ネガイとマトイが怖いんだ‥‥」
隠さない。
マトイに全てを打ち明けた、だからネガイにも言わないといけない。
「許してなんか、言える訳無いって、わかってたんです。でも、きっとあなたならって。私もマトイも‥‥」
どうして―――なんで、こうなった。
三人共、こんな結果になるなんて。三人が求めていたものは、皆同じだった。いや、皆違っていた。
「そんな顔、やめて下さい。前にも言いました、あなたは悪くない」
「でも、でもネガイ‥‥俺がマトイを―――俺が!」
顔に手を乗せてきた。涙で腫れ上がっている目に、ネガイの手は優し過ぎた。
一瞬で意識が遠のいていく。
「私もあなたも、マトイも今日は多くがあり過ぎたんです。もう眠りましょう‥‥。」
「嫌だ‥‥眠らせるな‥‥!ネガイ‥‥」
抵抗なんか出来ない、だって待ち望んだ『約束の手』があった。
「二年も眠らせません‥‥。数時間、いつも通りの時間であなたは起きる。私が傍にいますから‥‥だから眠って。私も‥‥今は誰とも話したくありません‥‥」
睡魔に落ちていく、自分はどこまで行っても自分のことしか考えて無かった。
いつもそうだ、自分の都合しか考えてない。ネガイもマトイも、あらゆる手を尽くしてくれたのに――――ああ、なぜ、何故あの場で止まれなかった。