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14 ヴェレヌ山脈

あけましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いしますm(_ _)m


誤字修正しました。

御報告ありがとうございました。

進み続けて5日目の昼下がり。

かなり高い所まで登って来ると、周りからだんだんと木が減り初め、荒れた山肌になり始めた。

天井山に入るらしい。


小さな頃から遠くから見てたけど、近づいたのは初めてで、近づくどころかあの、空より高い山を越えることになるとは思ってなかった。


「そろそろだな。本格的に登るのは明日からにして、今日はここで休もう」

そう言って、早めにその日は休み、クマと馬にたくさんのご飯を食べさせた。


クマと馬はここまでだそうだ。

私はクマにたくさんお礼を言った。クマのおかげで私はほとんど疲れてない。


クマは私の顔をなめて応えてくれた。

顔が果物の汁でベタベタになったけど。


ゆっくり休んで一晩。

次の日の朝、クマと馬に変わって、見たことない大きな変な生き物と、大きな山羊が出てきた。

今日から私はこの変な生き物に、おじさんは山羊に乗るらしい。


「こいつはレベ。世界最大の有袋類。二本足で歩けるし、手も使える。ハナさんはこの腹の袋に入ってくれ。九十九折の山道が正しいルートだが、雪が降る前になるべく登りたいから、出来る限り真っ直ぐ登る」

レベはうさぎが後ろ足で立ち上がってるような姿だけど耳は短い。灰色の毛並みで、すごく太い足。前足も太い。

後ろ足にも前足にも、ツルハシのような太くて硬そうな爪が生えている。

レベが前足をかるーく振るだけで、私なんて乾いた芋づるみたいに吹っ飛んでしまいそうだ。


私がひるんで少し後ずさると、レベがグワァっと口を開いて顔を近づけ、『ブルワァっ!』と吠えた。


「ひゃあっ!?」

尻もちをつく。口の中にも鋭い牙がギッシリと生えている。頭から噛みつかれたら、腰の辺りで半分こになりそうだった。


「おいおい、やめなさい」

おじさんが笑いながら柔らかくたしなめる。

レベもブワブワとなんとなく笑ったような雰囲気で吠えている。

私1人、涙目だ。


盛り上がるおじさんとレベを尻目にでっかい山羊はアクビをしている。

「こっちは、アシェブゴート。秘峰アシェベに住む大型の山羊だ。アシェベはヴェレヌ山脈以上の峻峰だから、こいつに頼めば大抵の山道は大丈夫だ」

よじれた巨大な角を持つデカい山羊で真っ白な毛は長い。

足はスラッと長いのに、たくましい。

おじさんは山羊に乗るための道具をつける。


私はおそるおそるレベに近づく。

グルゥとかブロォとか牙をむき出しにしたり、前足を上げたりして威嚇される。その度に『やめなさい』とたしなめられているけど、絶対に私に遊んでる。

遊ばれてても怖いもんは怖い。


それでも必死にお腹まで近づくと、レベは少しかがんでお腹に入りやすいようにしてくれた。

「――――!?」

袋に潜り込むと、ふっかふかだった。

しかも、広くてゆったりしている。

袋の中でしゃがんで顔だけ出すと、背中からトクトクとレベの心臓の音が聞こえる。


「よし、行こうか」

おじさんはそう声をかけると、カツコツと進み始めた。



山を登り始めて3日目、ついに雪が降り始める。

出している顔に当たる風が冷たくて、頬っぺたが切れてしまいそうだった。


5日目、雪は日に日に激しくなり、辺りはすっかり雪に埋もれた。

おじさんは山羊を上手に操って、急な斜面をよどみなく進む。レベも二本足で力強く歩く。私は袋の中でふかふかぬくぬくしているだけだった。


8日目、辺りは吹雪になってしまった。顔が出てると危ないと言われて、私は顔も全部袋の中にすっぽり隠れることになった。真っ暗な袋の中でレベのトクトクという心臓の音に安心する。


『吹雪が収まるまでさすがに動けん』ということで、あの不思議な部屋で吹雪が止むのを待つことになった。

山肌の切り立った崖に魔法で穴を開ける。

レベが通れるぐらいの高さで、4人で入れるぐらいの深さ。

足元と壁は真っ直ぐで、天井は丸く弧を描いている。

足元も壁も天井もピシッと平らでツルッとしていて硬そうだった。入口には内側に開くドアまでついている。

『きちんと丈夫にしとかないと崩れると大変だから』ということだ。


穴の奥につくと、山羊もレベを光の絵の向こう側に帰して、不思議な部屋のドアを出した。

「どこでも出せるのに、なんでわざわざ穴を作るの?」

「中に入ってしまうと出入口は同じ場所にしか出せないからな。出る時にドアの高さまで雪が積もってしまうと出入りが大変なんだ。雪が吹き込まないために入口にはドアも付けてるだろう?」

なるほど…。


部屋で待つ間、おじさんは本を読んだり、何かを書いたりしていた。私はポケーっとしていた。

ひたすらポケーっとしているとおじさんが苦笑いしながら、『本でも読むか?』と言ってきた。


「字が読めない」

私は首を振る。

「読めるようにすればいい」

事も無げに言うと、空中に絵を描く。

そして、黒い絵から『にゅるん』と小さなヘビが現れた。

ツヤツヤと深紫のウロコが光るヘビ。緑色の小さな宝石のような目が私を見て、首にひゅるりと巻きついた。

「―――!!」

「はい、できた」

ヒヤッとする。

「コイツが巻き付いてる間は読めるようになる。ただ魔力を使うからな、調子に乗るとバテるぞ」

そう言って1冊の本を渡してくれた。


《ルドネズミのおんがえし》

「―――――!!!」

読める! 表紙に書いてある字が読める!

びっくりして口をパクパクしながら本の表紙を指す。言葉が出てこない。

「吹雪が止むまでしばらくかかるから、ゆっくり読むといい」


《ルドネズミのおんがえし》は有名なおとぎ話で、食べ物がなくて困っていたルドネズミの家族のために、貧乏な芸人の男の人が自分の大切なご飯を分けてくれた。

助けられたルドネズミの家族は、おんがえしするために男の人と一緒に芸をする。すると、その芸が偉い人に気に入られて、大きな屋敷とキレイなお嫁さんをもらい、すごい芸人として仲良く幸せに暮らしたというお話。


お母さんにもお父さんにも聞かせてもらった話が自分で本で読める。私は夢中で読んだ。

ルドネズミのおんがえしを何度も読み直していると、おじさんはまた苦笑いしながら、新しい本を何冊か渡してくれた。


本をむさぼるように読んでいると、めまいがしてきた。

それでも気合いで読み進めると、吐き気がしてきて、読めなくなった。


首に巻き付いていたヘビがしゅるしゅると離れ、私以上に本に集中していたおじさんの手に巻き付いた。

巻き付かれても気付いてない。

ベビがおじさんの腕にカプっと噛みついた。

「ん?」

それでやっと机の上につっぷしてぐったりしている私に気づいた。

「あっ、魔力が切れたか。気持ち悪いだろう」


おじさんは笑いながら、緑色のドロっとした、なんか不思議な匂いがする温かい飲み物を渡してくれた。

「苦いっ!?」

「苦いだろうな」

やっぱり笑っている。

「魔力の回復を早くしてくれる薬草茶だ。苦いし不味いけど効くから、ゆっくり飲めるところまで飲みなさい。冷めると今以上に苦くなるからな。それと、今日はもう寝なさい。いい時間だ」


私はヒィヒィ言いながら薬草茶を飲んだ。本を読んで興奮してたから眠れるかと思ったけど、フトンに入ったとたん、意識が途切れた。


次の朝、目が覚めると気持ち悪いのは治っていた。ほんとに良かった。

おじさんが部屋を出て穴のドアを開けてみる。

その後ろからひょこっとのぞく。


昨日よりひどい猛吹雪だった。

冷たい風とすごい量の雪がなだれ込み、吹き込んで来る。


「………まだ無理だな」

おじさんはため息をついて、ささっと魔法を使うと吹き込むよりも強い風が外に向かって吹き出し、入り込んで来た雪と入口を塞いでいた雪が外に吹き飛んで行く。

もう1つため息をついてドアを閉めた。


私はまた本が読めるので嬉しかった。

再びの忠告にも拘らず、また魔力が切れて気持ち悪くなったけど。

お年玉でご意見、ご感想、ご評価、ブクマとか欲しいです( 'ω')/ ハイ!(笑)

今年もまったり更新ですが、気楽にお付き合いいただければ幸いです。

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