表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜と人の物語   作者: りんこ
2/5

隠者の竜2


どれぐらい意識を失っていたのか。


目覚めると、陽が暮れようとしていた。


人の気配は、無い。どうやらはぐれてしまったようだ。

否、他の者たちが生き残っているのかも定かではない。ひょっとしたら自分しか生存者はいないのかもしれない。いたとしても。


そのままどこかへ行ってしまうだろう。国に戻る気も、仲間を探す気も、無いに違いない。

俺がそうだから。


完全に陽が沈んでしまう前に、どこか(ねぐら)になる場所を探さねば。

俺は重たい身体を引きずるように動かした。


あまり時間がないというのに、塒になるような場所は見つからず、不意に開けた場所に出た。

水の流れる音がする。川だ。喉の渇きを思い出し、川へと駆け寄る。


お飾り程度に腰につけていた剣と荷物を放り投げ、川へと遠慮なく入る。

水を手ですくい顔を洗い、喉を潤す。ひと心地ついたところで大きく息を吐き濡れた顔を上げて空を見た。


川のせせらぎと遠くで聞こえる鳥の声。風に揺れる葉の音などが全身に沁みわたるようだった。

夕陽に焼け始めた空をそのままぼんやりと眺めているうちに、知らず口元が緩み、いつの間にか

声を上げて笑っていた。


何だ一体。俺の人生は何なのだ。


死んでしまおうか。


それでも構わないと思った。


ああ、でもそれなら。


どうせなら最期に


(ドラゴン)とやらに会ってみたいもんだ」




男がそう呟いた時、男は気づかなかったが、空気が揺れた。歪んだというべきか。


男の呟きに応えるように男を取り巻く景色が震えたのだ。


そうして


世界はその有り様を少しだけ、変えた。


男を今までいた世界とは少し異なる世界へと、誘った。


偶然か必然か。


男には知る由もないのだが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ