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7.給食ちゃんと食べたかレイカ?

「いきなりだけど、レイカ、勝負しようぜ」


「は?」

 

「目が合ったらバトル! これ世界の鉄則!」


「パチモンの世界から離れろタコ! ――【武装解除ディスアームド】!」

 

 レイカは【アサルト・アバター】を解除した。元の姿のアバターに戻る。なんかその顔は、すごくげっそりしていた。疲れているのかもしれん。おれはこんなにやる気なのにな。最近の若者は元気がないな、やっぱ。よくテレビでそう言ってる。


 死んだ魚の瞳をこちらに向けて、レイカは言った。


「そんなに戦いたいなら、いいわよ。実地訓練と行きましょう。……ただし、放課後ね」


「疲れてる? 給食ちゃんと食べたかレイカ?」


「余 計 な お 世 話 よ このマヌケ! アンタとしゃべってるとHPがガンガン削られるのよなんとかしなさいよマヌケ!」


「なんとかしろって? うーんっじゃあアレだな、そうだな、全身くまなくマッサージしてあげよう! 特に疲れのたまりやすい太もものあたりを重点的にだな! うん。我ながら名案だと思う」


「お 断 り よ エロ猿! アンタ将来世間を騒がすとんでもないセクハラオヤジになりそうね。社会のために早く逝ってくれる? 即刻逝ってくれる?」


「いやあ、世間を騒がす大人物だなんて……照れるだろバカ」


「褒めてないわよバカ!」


「だってセクハラは社会的地位のある男の特権だろ! おれも将来は大統領……それが無理なら総理大臣くらいにはなるかもしれんってことだろ!」


「いやそういう面もあるけど! たしかに政治家のどーしようもないニュースはよく見るけど! さらっと鋭く世相を斬るな!」

 

「まっ、それはともかく、そろそろ【クラン】の説明してもらってもいいすかね? 【プテロン・ブルーアサシン】もゲトったし、こっちは早くドッヂボール行きたいんすケド……?」

 

「てめえ……いつか殺す!」

 

 マジで殺意の波動をむんむん発しながら、レイカはその場で指をゴキゴキ鳴らした。マジで怖いのでおれは黙ることにした。ここは仮想空間バーチャルだけど、痛みはちゃんと感じる。殴られたら痛い。殴られたくないにゃん。


 レイカはキッとこちらをにらみつけながら、

 

「いい? 【イリオン・バトルフィールド】はアンタのその【プテロン・ブルーアサシン】みたいな【アサルト・アバター】を駆使して、戦闘アサルトするゲームなの」


「さっきバトルしようぜって言ったけど、やっぱりお前とだけは戦いたくないぜ……殴られると痛いからな」


「……いつかボコボコにしてあげるから待ってなさい。そんで、戦闘アサルトはいつも一対一ワン・オン・ワンとは限らない。集団戦闘もあるのよ。集団戦闘のために結成するのが、【クラン】」


「ドッヂボールのチームみたいなものか、【クラン】ってのは」


「理解が早くて助かるわ」


「あの国民的RPG、ホラゴンクエストの『パーティ』みたいなもんか」


「そうよ」


「プロレス界伝説の超獣タッグチーム、『ミラクルパワーコンビ』みたいなもんか」


「知らんわ!」


「で、その【クラン】がどうしたって?」


「言ってるでしょう。アンタ、アタシの【クラン】に入りなさい! そしてアタシをサポートするの! 戦闘アサルトで勝ちまくるために!」

 

 意思の宿った目。さっきとは一転、レイカの顔に覇気がみなぎっている。なにがなんでも目的を達成するぞ、という覚悟を感じさせるね。女子のくせにまるで歴戦の勇者みたいな表情してるよ。戦いは男の仕事なのにな。昔からそう相場が決まっている。


 レイカからの【クラン】への誘い。おれの答えは一つだ。

 

「いいよ。入ってやるよ、【クラン】」


「いきなりこんなこと言われても困ると思う。でもアンタの力があれば……って、え?」


「いいよ。入る」


 女の子一人に戦わせるわけにはいかない。やっぱ男のおれがいなきゃね。

 

「ああ、そう。物わかりがよくて助かるわ……」


 レイカの膝がガクッと折れる。ツインテールがぴょこんと跳ねる。おれの回答に拍子抜けしたらしい。まあ、その【クラン】とやらに入門するのはいいんだけど、おれ、一つだけ譲れない条件があるんだよな。それをちゃんと伝えなきゃな。


「【クラン】には入る。でもその代わり……」


「その代わり?」


「お前の【クラン】はいまから【超最強ミラクルドラゴンファイヤーサンダータイガードラゴン】に改名する! 超かっこいいだろ!」


 改名は絶対条件だ! 超カッコいい名前が必須だ!

  

「センスの欠片もない……ドラゴン重複してるし……これが小学生男子クオリティか……」


「ダメ?」


「ダメ。もう【クラン】の名前は決まってるの」


「なんていうの?」


「【オルタナティヴ・パワー・イヴォーカーズ】」


「略してオパイ。おっぱいみたい! おっぱいだおっぱい!」


「殴るわよ」


「スミマセン」


「意味は、『超無敵流古武術こそが【イリオン・バトルフィールド】における最強流派であることを喚起する、戦士たちのクラン』、よ」


「ちょっと何言ってるかわからないすね。イマイチじゃないすかね。覚えにくいしその名前」


 レイカは顔を赤らめて、

 

「う……確かに覚えにくいカモ」

 

「それに略したらオパイだし」


「さっきから略すな!」


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