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19.女子高生って生物はなんだ、こう、つまり、端的に言えば、最高だな!

 *


「負けたから、24時間【ログイン】することができなくなっちゃった。そういうペナルティなの。うん。でも楽しかったぁ。また遊びましょうね?」


 現実世界に帰還したおれ。なぜか(理由なんてどうでもいいが)まどか姉ちゃんにぎゅっと抱きしめられていた。まどか姉ちゃんの鼻息は荒い。


「ねえホントに楽しかったわ! 小学生男子と正々堂々酒池肉林のアソビを楽しめるのは、【イリオン・バトルフィールド】だけ! たまらない!」


 とかなんとか、おれの全身の骨がきしむくらい堅く抱きしめられる。まどか姉ちゃんの肉体はなんだかふわふわしていてとても柔らかくおれは真の安らぎというやつを覚えたのだった……これが小学生男子に許された最高の役得ってやつか。歓喜だ。


 抱きしめられながら、おれはまどか姉ちゃんの太ももを撫でてみる。


「いやぁんっ(ハート)!」


 ふむ。すべすべの手触り。しかし【イリオン・バトルフィールド】でおれが刻んだ切り傷は、当然だけれども現実世界には反映されていない。傷一つない真珠みたいな太ももで大変よろしい感じですよ、先生。


「もう、えっちなんだから」


 嬉しそうにまどか姉ちゃんはおれの耳を甘噛みした。それから身体を放して、「バイバイ、またね――今度は【ニケポ】取り返すからね!」と去って行ったのだった。

 

「ふう。女子高生って生物はなんだ、こう、つまり、端的に言えば、最高だな!」


パンツも色っぽいしな!

 

 そんな感想をおれは一人つぶやいて、公園の時計を見る。まだ5時にもなっていない。【イリオン・バトルフィールド】でいくら時間が経過しようとも、こっちの現実世界じゃ時は止まったまま。なんともおそろしいテクノロジーだぜおい。


 ま、無事に初戦闘を終えて、おれは満足。帰って二度寝しますかな、と、公園を後にするのだった。ぱっつぁんには会えなかったけど、また愉快な友達ができてよかったよ。


 *


「な、なんで……どうして……!」


 学校。おれの目の前には、オドロキに打ち震えるレイカの姿があった。なにをそんなに驚いているのかというと、おれの持っている【ニケポ】の数だ。どうやらレイカのもっているiSophia10には、近くにいる【勇士プレイヤー】の所持【ニケポ】数を表示してくれる機能があるらしい。それをもってして、おれの11pt所持が発覚したってわけ。そんでレイカはびっくらこいてる。


 なにせ、11ptですからね。おれみたいなニュービーにしちゃ分不相応な持ち物だってわけ。言ってみりゃ小学生が小遣いとして10万円持ってたらそりゃ事件だ。なんか知らんがそんな感じさ。もしおれが10万円持ってたら、ゲームとカードとポテチとジュースと、うん、いろいろ買わなきゃいかんものがある。小学生男子とて、日常生活を楽しく暮らすためにはいろんな細々したものが入り用なのだ。世知辛いね?


 レイカはトレード・マーク(かは知らんが)のツインテールを振り乱し、


「アンタ、アタシに無断で初戦闘したのね!」


大変な剣幕だ。そりゃ初戦闘したとも。だからこその武功11ptよ。あっぱれじゃ。

 

「無断ってなあレイカ、おれはおれの行動にいちいちレイカの許可をとらなきゃいかんのかい? そりゃないぜ、え? かーちゃんみたいなこと言ってくださるな」


 おれは正論を叩きつける。キング牧師ばりの正論にぐうの音もでまい。おれは自由人だ。そりゃもう鳥のように自由に生きるってのがおれのポリシーだからね。将来何になる? って訊かれておれは迷わず「アメリカの大統領!」って答えるからね。アメリカは自由の国。ってことはアメリカの大統領は自由の大親分みたいなもんだ。たぶん世界で一番自由なのはアメリカの大統領だよ。


「アンタはもう【ベアー&キャット】の一員なんだから、勝手な行動はダメ! そうよ、いちいちアタシに許可をとりなさい!」


 暴君めいたことを言い出すレイカ。おれの行動をぜんぶ報告しろってさ。


「きょう河原でエロ本拾いにいってもいいですか?」


「そんなことアタシに訊くなくたばれ!」


「あといま、おしっこ行ってきてもいいスカ? さっきからガマンしてる」


「さっさと行ってこいアホ!」


「ついでにパンツの色教えてもらってもいいすか」


「殺すわ」


「教えてくれなくてもめくるからいいや」


「めくるな! めくられるくらいなら教える! 白よ!」


「おーい! みんな聞いたか! タカシも聞いたかよ! レイカのやつ、きょうのパンツ白だってよ! これテストにでるからノートに書いとけよ!」


「ああもう死ねええええええええええ!」

 

 ……すんげえ殴られた。 


 *


 算数、とか国語とか、どうしてそんなこと勉強する必要があるのかね。おれは常々疑問に思っているよ。人間、ドッヂボールさえあればみんな仲良く楽しく健康に暮らせるんだからそれで十分じゃないかしら。つまり小学校に授業はいらない。昼休みだけあればいい!


 そんな持論を頭の中でくるくると展開しながらボーッとしていたら、きょうもあっという間に放課後になったのだった。


 そんでホームルームも終わってさて帰るか、さっさと家でパチットモンスターしたいぜ、ってなタイミングで、机にツカツカとレイカが歩み寄ってきた。


「きょうも『Orangeショップ』に行くわよ」

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