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16.ピンクのレース付きパンツ目視確認よし! ご安全に!

「どう思うって聞かれても……やりたいことは全部、試してみたらいいんじゃないかな? 何事も経験だってじっちゃが言ってたよ!」

 

「ありがとうありがとうありがとう! 翔くんは私の理想の王子様だわ! それじゃあ……たっぷり・じっくり・たのしく・うれしく・ゆかいに・ほがらかに・それでいて艶やかに――いぢめさせてっ! 私が満足するまでっ!」


 ビュン! ムチの一撃が飛んでくる!


 それは容赦のない攻撃だった。おれを――小学生男子を――痛めつけようとする思念。そんな邪な衝動をこれでもかというほどに凝縮した、怨念の一撃だ! おれはすんでのところで回避! 回避! 回避!


「いいわ翔くん! そうよ! そうやって抵抗して! やりがいがあるから! 抵抗して抵抗して抵抗しまくって! そして最後にはやっぱり私のムチで撃たれて平伏して! ね! ね!」


 こりゃヤバい。じっちゃから習ったスカートめくりのフットワークのおかげで、かろうじてムチ攻撃に対処できている。でも、いつまでそれがつかわからない。武器を相手に戦った経験、おれには皆無なのだ! そりゃそうだここは平和な日本だもの! チェンソーで皆殺マサコーが日常茶飯事の、あのテキサスじゃないんだぜ!


 じゃあどうすればいい? 答えは簡単、おれも武装すればいい! 


 おれは叫ぶ! 右手を天に突き出して!


「いくぜ! ――【着装アサルト】!」


 青の疾風かぜがおれの身を包んだ。ぴたっと身体にフィットする鎧。顔と首を隠すターバン状の青布。そして右手には小ぶりのカタナ。おれの【アサルト・アバター】――【プテロン・ブルーアサシン】だ!


「【プテロン・ブルーアサシン】状態のおれは無敵だ!」


ハイになって叫ぶおれ! 気分はヒーロー! 日曜の朝!

 

「【アサルト・アバター】も超可愛い! シビれちゃう! そして撃つべし撃つべし! 小学生男子を撃ちまくるべし!」


 まどか姉ちゃんは容赦がない! 【アリアドネー・グリーンテイマー】が繰り出すムチの七連撃! 


 おれはそれを華麗にやり過ごす。フットワークがとてつもなく軽い。こりゃなんだ、翼が生えたみたいだ。身体が軽い。綿毛みたいだ。これなら、いまなら、世界中の女子のスカートを秒でめくれる気がするぜ! おれ、がぜんやる気! まんまん!


「ああもう、じれったいけど焦らされるのはキライじゃないの!」


 身もだえしながらも攻撃の手を緩めない【アリアドネー・グリーンテイマー】! ムチからひたすら逃れるおれ! よし、そろそろ反撃の機がきたと見た! いくぜ! じっちゃから習った「めくり十七手」の秘奥を見せる時だ!


「第一奥義――『恥遁・桃風』!」


 説明しよう。第一奥義『恥遁・桃風』とは、自らを桃色の風となして一直線に駆け、相手の太ももに最短距離最上効率で接近する超絶フットワーク・テクニックなのだ! 十七の奥義のうちの、第一番目だ!


 そしてそんな奥義に【プテロン・ブルーアサシン】の体感スピード効率上昇効果が乗算される! すると、新幹線にもリニアモーターカーにも負けない速度が実現するのだ!

 

「どおりゃあああああああ!」


 ピンクの風となって突き進むおれ! 一瞬ののち、おれはすでに「めくり」圏内に到達していた! 目の前にはもう【アリアドネー・グリーンテイマー】の太ももがある! あとは手をのばしてめくるだけ! 右手はカタナを握っているから塞がっている! だから、左手を――のばす! 【着装アサルト】していてもスカートだけはナマのアバターのままだ!


 よし勝った! めくった!

 

「ピンクのレース付きパンツ目視確認よし! ご安全に!」


「うふふ。えっち!」


バチィ!

 

 次の瞬間おれは、横薙ぎのムチに脇腹を撃たれていた。激痛がおれの神経をビリっと走る。よろめく。倒れそうになる。すんげえ重い一撃なのな。ぎゃふん。だぜ。


「はわあぁ……小学生男子が痛みをこらえるその表情! 可愛い……!」


 恍惚とした笑みを浮かべる【アリアドネー・グリーンテイマー】。なんだか嬉しそうで何よりだよ。おれは痛いからちょっと困るけど、まどかお姉ちゃんの笑顔のためならたいていのことはガマンできます。


 てか、 


 

 すっかり勘違いしてたがこれ、「スカートめくり勝負」じゃないんだった!



 おれはアホだった! これはあくまで【戦闘アサルト】であり、スカートめくりは一切関係ない! パンツ見たら「勝ち」っていう勝負ならおれ無敵だけど、【戦闘アサルト】の勝利条件はそうじゃないのだった。相手をぶん殴ったりなんだりして、強制【ログアウト】させたら勝ちなのだ。


「ちくしょう撃たれた脇腹がズキズキするぜ……」

 

 再度、おれ【プテロン・ブルーアサシン】と【アリアドネー・グリーンテイマー】の間合いがひらく。接近戦はおれの領域。しかし、距離が開くとムチを扱うまどかお姉ちゃんのほうが有利。


 ええい、どうすりゃいい? おれが勝つためにはどうすりゃいいんだ?


 迷っている間にも、ムチ攻撃は止まらない。右にビュッと飛んできたかと思えば、次は左にビュッ、正面にビュッ、三連撃でビュルルルルッ。そして【アリアドネー・グリーンテイマー】の楽しそうな笑い声。ムチをシュッシュとしごいて、またムチの三連撃、ビュルルルッ! シュッシュ、ビュルルルッ!


 強い……!

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