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14.ネコちゃんパンツがよく似合う可憐なお嬢様

「ほーい」


 チョコバナナで買収されたおれ。安い男と言うなかれ。男の値打ちは金じゃないのだ。ハートだ。パッションだ。そしてエロスだ! 決しておれはチョコバナナに籠絡されたわけじゃないぞ! 決して! そんでも正直チョコバナナは魅力的だ! 超食いたい! チョコバナナのためなら100人くらい余裕でワンパンよ。


 そんなやりとりをしているうちに、レイカは一軒の豪邸の前で立ち止まった。豪邸。三階建てのなんかすげーデカい家。庭とかめっちゃ広いの。ドーベルマンも数匹見える。外車も数台止まってる。

 

「アハハ見ろよレイカ。この家、ずいぶんと成金趣味だぜ。さぞかし見栄っ張りでアホなヤツが住んでるんだろうな! 笑ってやろーぜ!」

 

「……これ、アタシのおウチなんだけど?」

 

「え?」


「ママが建てたの。で、何? もう一回言って? 『成金趣味』? 『アホなヤツ』が住んでる?」


「ゴホン。……これまたずいぶんと素敵なお宅ですこと! ネオ・ゴシック様式の典雅な建築だわ。ひょっとしてガウディが設計したのかしら? さぞかし素敵なお嬢様がお住まいになっておられるのでしょうね。ネコちゃんパンツがよく似合う可憐なお嬢様が。オホホ……」

 

「泣かすぞワレ」


 ドスの効いた声でレイカはつぶやいた。殺意を感じた。鳥肌が立つぜ。具体的にどことは言わんがまたしても下腹部のあたりがキュッと縮んだような気がした。ブルっちまうよ。ここでチビったらお嫁に行けなくなっちゃう。


「ともかく、ここで解散。明日からじゃんじゃん【戦闘アサルト】するわよ!」


 レイカはおれにビシィっと指を突きつけてくる。おれは首をかしげて、


「え? 解散? なんで? せっかくだからお前の部屋でツマブラしようぜ! ツマッシュブラザーズ! ゲーム機もってるよな? おれペカチュウ使う!」


「しないわよツマブラは! なに女の子の部屋にさらっと上がり込もうとしてんのよ!」


「えええ。ツマブラやろうよーツマブラやりたいよー」


「あのねえ……。アタシ小学5年生の女子なのよ! ワカル? 男子と二人きりになるだけでもいろいろと気を使うのに、部屋になんか上がらせるわけないでしょ! ママに変な誤解されるわ!」

 

「おれは気にしないぞ」


「アタシが気にするの!」

 

 まったく難しいお年頃ですな、レイカさんは。


 *


 そうしたわけで晴れておれは【ベアー&キャット】の一員となったのだ。レイカとおれのタッグ・チーム。じゃんじゃんばりばり敵をやっつけるぜ!


 と、意気込んでみたはいいものの、おれ、まだ【戦闘アサルト】をやったことがないんだよな。【アサルト・アバター】の【プテロン・ブルーアサシン】はゲトったけど、まだ一回もバトってない。こりゃいかん。


 てなわけでおれ、朝4時に飛び起きてニュー新小岩タウン公園をうろうろしているのだった。公園なら敵がいるかもしれないと踏んだのだ。運がよければぱっつぁんがいるかもしれんし。え? 朝早いからだれもいないんじゃないかって? 


 意外にもそんなことはない。ニュー新小岩タウン公園には、健康的な早朝ランナーたちがせっせとランニングしてるよ。わりと人はいる。この中のだれか一人くらいは、【イリオン・バトルフィールド】やってるかもしれんぜ。


「お、あれは……!」


 おれは格好の標的を見つけた。あちらに見えるは女子高生だ! それもただの女子高生じゃない。超美人さんの女子高生だ。制服姿の、黒髪ロングの、可憐で高貴な雰囲気のお姉様。制服のスカートがひらひら風に揺れている。おれの「めくり」衝動がムラムラと湧き上がってくる。うおおお。


 もはや【イリオン・バトルフィールド】のことを忘れて、おれはふらふらと吸い寄せられるように女子高生に近づいていった。その女子高生は朝っぱらから走るでもなく、ただただ優雅に花壇の花を見つめてニコニコしている。

 

 背後からそっと忍び寄ろうとすると、


「あら。可愛い小学生男子さん。ごきげんよう」


 女子高生は振り返った。にこやかな挨拶。なんということか。おれの気配を察知するとは! さてはこいつタダモノではないな!


「ご、ごきげんうるわしゅう。えへへ……」


 挨拶されたら挨拶を返す。これが道徳。おれが愛想笑いを浮かべていると、美人女子高生はおもむろに名乗った。


「私は華道院まどか。あなたは……?」

 

「おれの名は春風翔! 小学5年生! 特技はスカートめくり! 好きなスポーツはドッヂボール! 好きな女性のタイプは……お姉さん、あんたみたいな美人の女子ですぜ!」

  

「お上手! それに特技がスカートめくりだなんて! 面白い!」


 クスクス、と上品に笑うまどか姉ちゃん。さながら野に咲くすみれの如き趣があるよ。純情可憐、純真無垢。男の子のおれはもうそのミリキにイチコロだ。

 

「じゃ、じゃあ見せてあげますよ! おれの特技!」


 それだけ言っておれは、「めくり」の体勢に入った。腰を落とし太ももに力を入れる。瞬発力を最大限に発揮するスタート姿勢だ。まどか姉ちゃんはキョトンとしている。待っておれまどか姉ちゃん&まどか姉ちゃんのパンツ。おれのテクニックをみせてやる!


「いざ!」

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