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11.ズバリ、スカートめくり!

「――ゴメンってスマンって許してチョって! 他意はない! 他意はないんだよぉねーちゃん! ただおれの百八の煩悩が運動会シーズンまっさかりなんだぃ! そんでもこれだけは言わせてくれよな……まったく小学生は最高だぜぃ!」

 

 とかなんとか、ぱっつぁんはまたわけのわからんことを叫んで逃げていった。ああ、ぱっつぁん。いいヤツだった。また会いたいな。


「そんで翔、よく聞きなさい」


 レイカがおれに向き直る。えらく嬉しそうな調子で、


「こうやって【戦闘アサルト】に勝つと、【勝利ニケポイント】がもらえるの。そのポイント――【ニケポ】を貯めると景品と交換できるのよ!」

 

 女ってのはこれだ。ポイントとか景品と交換とか、そういうのに弱いんだよな。おれのかーちゃんもそういうの大好きだからな。一種のギャンブル中毒みたいなもんだな。ああやだやだ。……でもおれも景品は気になる。


「景品って? タワーマンションの一室でももらえるんかな」


「なに所帯じみたバカ言ってんのよ。もっとスゴイものよ!」


 レイカはおれの手を取り、ぐいぐいと引っ張って走り始めた。すんげえ力だ。おれはいきおいついていくことしかできない。スンマセン手が痛いんすけど!


「どこいくの! まさか勝利に酔いしれたテンションに身を任せ、このままおれをピンクで不埒な宿泊施設などに……? ケダモノ!」


「小学生男子のくせして妙なこと言うな! 違う! 景品交換所にいくの!」


 *

 

 どこに連れて行かれるかと思えば、なんとまあ、街の電器屋さんだった。


 ニュー新小岩タウンの電器屋さんはわりかし大きい。中にはいろんなケータイショップが入っている。当然、iSophia10を販売している「Orangeショップ」もある。レイカがおれを連れてきたのは、その「Orangeショップ」だった。


「この店の中で【ログイン】するのよ」


 とレイカは言う。走ったせいで汗だくだ。レイカのピンクのタンクトップが、汗で濡れてぴっちりと肌にひっついている。やっぱ生身のレイカはずいぶんやせっぽっちだな。やーいガリめ!


「何? 失礼なこと考えてる?」


 レイカは冷凍庫の中の空気みたいに冷たい目をおれに向けた。それ、毎回怖いからヤメロッテ!

 

「あのねえ。おれはちょっとした哲学的命題について考えていたのだよ」


「は?」


「世の中の女性はおっぱいがある。しかしレイカくん、キミにはおっぱいがない。これはいったいどういうことか?」


「……」


「導き出される真実はただ一つ! レイカ、お前さては男だな!」


「殺ス! 即刻殺ス!」


 おれはレイカの繰り出すパンチキック頭突き当て身その他多種多様な攻撃をひらりひらりと回避。そして得意技を繰り出す。ズバリ、スカートめくり!


 ひらり! おパンツ目視!

 

「……色は白! きのうと同じ! 違うのは柄だ! ネコちゃんがプリントされたプリティパンツいただきました! きのうはクマさんだったね!?」


「貴様……貴様ぁ公衆の面前でよくも……!」


「きょうのパンツはあれかい、ひょっとして洋服と同じ高級ブランドものかい? ネコちゃんマークのおフランス・パンツかい?」

 

「やかましいわ! ストレートに死ね! 率直に言って死ね!」

  

「あの、そこの可愛らしいお客様方……」


 おもむろに店員さんが声をかけてきた。楽しそうだから混ざりたいのかな?


「すみませんが、店内ではお静かに願えますか? ごめんね」

 

 あ、注意されちゃった。おれは素直にペコリと頭を下げる。


「すみませんでした」


「いいのよ。楽しそうで何よりです」


「ご迷惑かけてゴメンナサイ。ツレがついはしゃいじゃって……なにぶんこういうハイテク機器を扱う店にくるの、初めてなものですから。カノジョ、文明のない国から来たんです……」


 スパコーン! おれの後頭部に激震が走る。レイカの拳がクリーン・ヒットしたのだった。ふつーに痛かった。おれは泣くのをぐっとこらえた。男だから、さ……。


 ぐすん。


「――人前で次そういうことしたら、アタシ、源姫ちゃんの前で容赦なくアンタのパンツ剥ぎ取るわよ。無様にアレをぷらんぷらん晒してもらうわよ」


 店員さんが奥に引っ込んだ後。レイカはこんな脅しを仕掛けてきた。卑劣!


「お前……なぜおれが姫ちゃんのことを好きだと知っている? 転校生のくせに!」


「フッ。女子の情報網を舐めないことね」

  

「でもあれかい、人前じゃなかったら『めくり』やっていいのかい?」

  

「ああ? 何か言った? 余計な口叩くと速攻ぷらんぷらんの刑に処すわ」

  

「すんませんおやっさん。それだけは勘弁願いたいもので」

  

「だれがおやっさんよ、だれが! ……話が進まないんだけど!」

 

「そうだよ。景品交換だか人身売買だか知らんが、早くその話をしておくれよ」


 レイカはギリリと歯をかみしめ、ブルブル全身を震わせて言う。


「だれのせいで話が逸れまくってるんですか? あ?」

  

 レイカの怒りオーラがハンパない。おれはなんだか下腹部がキュゥと締まるような感じを覚えた。男って怖い思いをするとそうなるよね。みんなも経験あると思う。いままさにおれの身にそれが起こった。文字通り縮み上がった。どことは言わんがキュッと縮んだのだった。

 

 おれ、黙る。

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