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イカれたお茶会

第一章 第五節 「イカれたお茶会」


私がチシャ猫から別れ森を抜けお茶会会場に辿り着くと既にパーティは始まっていた。

"私のお誕生日じゃない日のお祝い"なのだから普通は私を待つべきなのではないだろうか……とも思うが、ここがおかしいのは薄々勘づいていた、


「あ、アリス!」


不思議な走り方で誰かが私の方へ大急ぎで走って来た。


「どうも。」


「待ってたよアリス!」


「遅くなってごめんなさい。」


とりあえず謝ろう。


「いいのさ!さ、ほら座って座って!」


私はこの人とは別に白兎と大きなハット帽を被った世にいうイケメンが座っていたテーブルに乱暴に座らせられた。


「えっと……」


「お茶会を続けよう!」


「えぇ……」


まずい、何の説明もなしにお茶会再開する気なのか。

え、私"本日の主役"よね言うならば。

祝辞とかそういうの無いんだ。


「アリス!紅茶をどうぞ!」


初めに案内してくれた子が私の前に置かれたカップにドバドバ何かを注いだ。


わー、香ばしい香り!ホントに紅茶なのかなぁ。


「ささ、どーぞどーぞ!」


「ちょっとまってイカレ兎、それは溶かしバターだよ。」


「おっと間違えてしまったよ!ありがとう帽子屋、ごめんねアリス!」


どんな間違えだよ。


「いや、気にしてないから平気だよ。」


「それじゃ改めて。」


イカレ兎が紅茶では無さそうなものを私のカップに注いだ。


「違うよ、イカレ兎。それは蜂蜜さ」


何故間違えた。


「ありゃー」


「もういいよイカレ兎、僕がアリスに紅茶をいれる。」


帽子屋が(多分)紅茶を注いでくれた。


「いい香りでしょうアリス。」


「ええ、ありがとう。」


普通だ……。


「気に入ったのなら何よりだよ。」


今…朝から一番まともさを感じたかもしれない、いや、ただただ紅茶を出してもらっただけなのだが今までが今までなだけにそれだけでもまともに感じてしまった。

嬉しいけれどなんだか複雑な思いだ。


「幸せそうだねアリス。」


「ええ、紅茶は人を幸せにできるみたいだね。凄く落ち着いたよ。」


「アリスこんなこと言ってるけど今朝お茶会の約束忘れてたんだよ!」


何故そんなことを言うの白兎!


「えー!アリスってばひどぉい!」


「あはは、少し残念だなそれは。」


うわ…ごめんなさい?


「ごめんなさい……わざとじゃないの。」



「大丈夫だよアリス、誰も気にしちゃいないさ。」


「俺以外わねぇ」


イカレ兎以外は気にしてはいないそうだ。


「まあいい!グダグダやるより飲もう飲もう!アリスのお誕生日じゃない日にかんぱーい!」


「か、かんぱい!」


ティーカップはコツンと音を立ててぶつかった、それを合図にお茶会は一層の盛り上がり…とまではいかないがめいめいクッキーやらスコーンやらに手を伸ばしお茶会を楽しみ始めた。

私はというとお茶会の楽しみ方を忘れてしまったのか元から知らないのか作法があるのかどうか分からないし中々お菓子の類には手を出そうとは思えずに居た。


ボーッとしていると帽子屋が近づいてきて声を掛けてくれた、心配されたのだろうか。


「アリス、あまり楽しくないの?」


「いいえ、楽しいよ。」


「ならいいや、何かお菓子はどう?イカレ兎が焼いたんだ、あいつ紅茶は全くだけれどお菓子のセンスは抜群なんだ。」


「へぇ、あのイカレ兎が。」


"あのイカレ兎"という言い方ではイカレ兎ご本人が聞いたらきっと怒るだろうけど正直言われても仕方がない気がする、だってあんななのだもん。


「ああ、"あの"イカレ兎がね。」


帽子屋は"あの"と強調してくすりと笑った。


「仲良しなの?」


「ああ、仲良しさ。面白いやつだ物もの。」


「そうなんだ。」


まずい、会話が続かない…


「ねぇアリス。」


「なに?」


ナイスタイミング白兎!


「そろそろ帰ろうよ」


「もう帰るの?」


来たばかりだ。


「帰らなくちゃ」


「白兎がそういうなら」


帰らなくちゃ行けないのだろう。


「もっと話していたかった?」


「うーん、また来ればいいかな」


会話も続かないし


「なら、帰ろう。今すぐに。」


「別に構わないよ、おいでイカレ兎。お客人がお帰りだ、ご挨拶だよ。」


「さよならアリス。」


すっとんできたイカレ兎が頭を下げた。


「さよならイカレ兎。」


「さよならアリス。」


「さよなら帽子屋、紅茶ありがとう。」


「いいえ。」


「じゃあね、ほらアリス行こう。」


白兎は何を焦っているのだろうか、

やたらとさっきから帰りたがる。

まぁいいや。


「うん。」


"兎に気を付けて"


不意にチシャ猫の言葉が思い出された。


「白兎?」


「なにアリス?早くして。」


「何をそんなに焦っているの。」


「……。」


「白兎?」


やっぱり何か隠してるのかな。

"兎"さん。白兎さん。


「聞かないでアリス、お願いアリス。」


白兎は悲しそうにそう言った。


嗚呼やはり何かを隠してる。

なぜ私を家に帰らせたいのだろう。

分からないけれどいい予感はしなかった。


「帰ろうよ…アリス。」


そんな不安げに言わないで。


…わからない、もし、もしも私を思って言ってくれているのなら。

その"なら"である可能性がミリでもあるのなら、

信じてみよう。

私は何も覚えていない、初めに目にした白兎をアヒルかなんだかの鳥類の習性が如く"親"と見て、

ついて行こう。

信頼出来るかなんて考えても無駄なような気がした。

白兎を突き放しても私を大嫌いな人がこの世界にはいるのだから。

だったら目の前の信頼できそうな者に縋りつこう。


「そうだね、帰ろうか。」

回覧ありがとうございます。

次回の更新は多分火曜日です。

次回「鏡の国の」


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