「アリスちゃん。」
改訂版 第一章 第四節 「可愛いアリス。」
家を出るとポストのところに"しろうさぎ"と書かれていた。
と、するとここは白兎の家なのか。
お邪魔しました…?
さてと、家を出たのはいいが森への道がまるで分からない。
「あ、アリスだー!」
キラキラお目目の小さな子供が私の脚にまとわりついた。
「こんにちは、アリスだよ。」
和むなー。
「アリスお家の前でボーッとしてどうしたの?迷子?」
「うーん、迷子みたいなものかな。」
道がわからないのだし迷子だよね。
「そうなの?どこに行きたいのアリス!」
「森に行きたいんだ。」
「森?簡単だよー。前に4歩右に4歩左に4歩後ろに4歩!」
…それは元の場所に戻ってくるだけじゃないのかな。
「ありがとう。」
うーん、迷子は迷子のままかぁ。
「じゃあねアリス!」
子供は手を振って走っていってしまった。
「前に4歩右に4歩左に4歩後ろに4歩かぁ…」
物は試しだ。
前に4歩で通りの真ん中に、
右に4歩でお隣の家の前に、
左に4歩で白兎の家の前に、
後ろに1歩、2歩、3歩、4歩で……
「あれ?」
森……。
前にも後ろにも右も左も木木木!
不思議なこともあるものだ。
さてと、チシャ猫を探さなければいけないのだが。
目印ということは家とかがあるのだろうか。
右、左、前、後、どちらに進むか傘でも倒して決めたいのだが生憎手ぶらで家を出てきてしまったのだ。
靴を飛ばしてつま先の向いた方…みたいなことをしても良いのだがそんなことに使えるほどラフな靴ではなく革で出来た立派な靴なのだ、それを飛ばすのは心苦しい。
後ろを向いたらチシャ猫が居たりなんて……
「居た!」
え!こんなあっさり見つかるだなんて!
「にゃにゃ!?」
「あ、こら待て逃げないでよ!」
貴方が目印なんだから!
「オレは女の子に追いかけられるより追いかける派なんだよォ!」
意味不明なことを口走ってチシャ猫らしき男は一目散に逃げ出した。
「待って!貴方を右に曲がらないとお茶会に行けないの!」
「オレは追いかけられたら逃げなくちゃ行けない決まりなんだってばぁ!アリス!後生だから追いかけないで!」
なにその決まり!
「ホントに止まってってばぁ!オレ疲れたよぉ息持たないって!」
…物は試しだ止まってみてみよう。
「はぁ、やっと止まってくれた…ゲホッ……」
「…ごめんね。」
とりあえず謝ろう、よく分からないが辛い思いをさせてしまった。
「いいんだいいんだ、でもいきなり追いかけるだなんてアリスは非常識だな全く!」
「あはは…」
「でも可愛いアリスだから許せちゃうよ!」
「あ、うん。」
ありがとうございます?
「で、どうしてオレを追いかけてたの?熱烈なデートのお誘い?大歓迎だけどもう少し別の手段で誘って欲しかったな、デートの度に追いかけられてたらオレ疲れちゃうよ。」
あははっとチシャ猫は笑った。
「お茶会に行きたいの。」
「ありゃー、もしかしてオレ目印?」
「ええ、目印。」
「デートは?」
「お断りするよ。」
「そっかぁ…」
チシャ猫は悲しいなーっと下を向いていじいじしていた。
面倒くさそうな人だ。
「今度にしようよ、今日はお茶会に行かないと。」
これで機嫌も戻るだろう。
「え?!いいのかい!嬉しいなぁいつもアリスはオレのデートを断るのにー!嬉しいなぁ嬉しいなぁ!!」
チシャ猫の顔がニコニコの笑顔に戻った。
単純な人だな。
「それじゃ、さよならチシャ猫。」
私はチシャ猫を右に曲がった。
「待って。」
チシャ猫が私を引き止める。
「お茶会に行くなら"兎"に気を付けて。」
「……?」
「ばいばいアリス!デートの日程はお知らせしてあげるからねぇ。」
チシャ猫は闇に埋もれて消えていった。
兎に気を付けて……?
お茶会に居るのはイカレ兎と白兎、どちらを気をつけるべきなのだろう。
……とりあえずお茶会か、早く行こう。
次回の更新日は金曜日です。