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「覗けばそこは」

第一章 第二節 「覗けばそこは」


「じゃあ着替えてねアリス、ボクも着替えてくるからね。」


凄いスピード感だ、おはようから10分程度の間に突然お茶会に行くから言われるだなんて。


…そして…白兎に案内(なのかな?)されて私は大きな衣装室に来た、白兎は着替えには付き合ってくれないらしくこの広い部屋から1着選んで着なければいけないらしい。

普段着とパーティ用の服の差がイマイチ分からない、それに帽子屋とイカレ兎の開いてくれるパーティはどの程度のパーティなのだろうか。

ホームパーティ程度なのか…一応お茶会と言っていたけれども。


……一際目立つ所に飾られる水色と白のエプロンドレスがあった。


可愛い…!


水色を基調として白いヒラヒラとしたエプロン、一緒に置かれていた黒いリボンで髪をくくったらきっと可愛いだろう!


何となく既視感のあるエプロンドレスだけれど気にはとめないで置こう。

こんなに広い衣装室から決めていたら時間が掛かってしまうし白兎がいつ戻るか分からない。

またお茶会に乗り気でないと思われてしまえば申し訳ない。


「よし。これにしようか。」


私は寝着を脱ぎ水色のエプロンドレスを身に付けた。

…どんな様子か確認しようと私は鏡を探した。




あった、……大きくヒビが入っている。まるで誰かが壊してしまったような…そんなヒビの入り方だ。

…この空間には少し異質かもしれなくもない。


コツリコツリ、クシャリ。


近づくと鏡の割れた粉を踏んだ。

床には割れた粉はあっても破片はひとつもない…。


鏡の目の前に立つとさらに異質なものでは無いかと思わされた。

この鏡割れてはいるが、映り方は普通の鏡と同じ、割れた鏡は乱射して通常はまともに鏡としての役割は果たさないだろう。

だが、そんなことは気にならないほどおかしなことがあった。


この鏡には、私が映っていない。

何故…。

部屋の様子はそのまま映るのに私だけが映っていない。


「あら、アリス。」


…?


鏡から声がした。


「だ、誰なの?」


「…?忘れてしまったのアリス?私もアリスよ。」


鏡に…私が映った、だけれど私では無い。服が…違う。

鏡の中の私は黒と白のエプロンドレスを着ている……。

いや、私で無いのかもしれない。

私はまだ自分の容姿を確認してはいない。


「同じ…名前なの?そこにはもう一つ部屋があるの…?」


鏡写の部屋と思いたい。もう一つ仮説として鏡が異空間につながっているというものがあったがあまりにも馬鹿みたいだ。


「アリス…、ほんとに覚えていないの……?まあ覚えていないとここには立たないわよね、アリスは私が嫌いだもの…。」


「えっと……」


大困惑だ、鏡の中(仮)のアリスさんはうじうじといじけ始めてしまった。


「嫌いじゃないですよ、初対面…?ですよね。」


向こうは私を知っているようだけれどこの反応で良かったのだろうか…。


「アリス本当に何も覚えていないのね、覚えていないならいいわ。…嫌われていないならそれでいい。どうしたらいいかしら、自己紹介でもしてあげましょうか?アリス。」


…この人は私が記憶が無いと確信している。誤魔化す意味もないし自己紹介して貰えるのならそれでいい。


「お願いします。」


「分かったわアリス。私は鏡の国のアリス、私はアリスであってアリスでは無い。そしてアリスは私であって私では無い。そんな関係よ私達は。」


………理解不能だ。

唐突過ぎる、まともな人かと思ったら白兎みたいに…いや白兎より早い。出会って5分程度で意味不明な事を言い出した。

大丈夫かな、突然左手が疼き出したりしないといいけれど。


「……。」


コメントに困った。


「アリス、私はアリスのこと大好きよ。だから忠告、その様子だと明らかに記憶がないでしょ、だから絶対に記憶の無いことを不思議の国の住人に悟られてはいけないわよ。」


やっぱり記憶がないって分かってるのか。


「……何故?」


「アリス、アリスの不思議の国はアリスのことが大好きな人と大嫌いな人のどちらかよ、でもきっと大嫌いな人も大好きな人のフリをしている、アリスはアリスの国にとって絶対の存在、それの記憶がないと分かったら大変よ、唆されたり騙されたり…最悪殺されてアリスになりすまされる。アリスは不思議の国自身、忘れちゃダメよ。」


「…そうなんだ。」


よく分からないけれど、誰にも記憶が無いことを言ってはいけないし悟られてもいけないのか。


「アリスさんは私を殺さないの?」


知られたら殺されちゃうのでしょ?


「私はアリスを殺さないわ。鏡の国のアリスだもの、アリスが死んだら私も死んでしまうわ。」


「そう。」


うわますます意味がわからない。


「アリス…何も覚えていないアリス。私は貴方が大好きよ。何も覚えていなくてもアリスだもの。」


…なんか怖い。


「ごめんなさいね、私そろそろ行かなくちゃ行けないの。また私とお話したかったら鏡に向かって私を呼んで頂戴、アリス。……そうだ、これをあげるわ、きっと役にたつから持っておいで。」


グチャリとアリスさんは鏡(?)にキャンディを押し付けた。

それは一瞬歪みこちら側の床にポツリと落ちた。


「キャンディ…?」


「そうよ、きっと役に立つ。」


毒とか入ってないかな。


「…またね、アリス。」


「あ、はい。さようならアリスさん。」


ふっとアリスさんが消えて私が映る。


黒いリボンでくくられた白銀の美しい髪、少し低い背の可愛らしいエプロンドレス。自分でいうのはあれだが中々の容姿をしていた。

そしてアリスさんと瓜二つだった。


お茶会かぁ…。


アリスさんの言うことが本当ならば私は殺されちゃうのでしょ…でも悟られなければ……。


アリスさん、唐突だったなぁ…でも、信頼は出来そう。

ご覧いただきありがとうございます。

至らぬ点あるとは思いますがよろしくお願いします。

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