わたしとあの子
「あ!おはよーございます!!」
振り返ると、そこにはいつも挨拶をしてくれる小学生がいた。
「おはよー」
わたしもすかさず挨拶を返す。
能島絢音ちゃんはニカーっと、笑顔になった。
少し前にこの街に越してきた。確か小学2年生だったはずだ。
「おねーさん、元気?」
わたしの隣に駆け寄ってきて見上げがちに言う。
「元気だよー。ただ、ちょっと暑いかなぁ」
それもそのはずだ、今は7月も中旬。気温は7時半の段階で29℃だ。これから気温はまだ上がるらしい。
「うん、暑いよね!」
絢音ちゃんは元気よく返した。
うん、若いなぁ。
その後、他愛もない話をしていると、
「あ、美姫ちゃーん」
少し行ったところのカーブミラーの下で手を振っている女の子がいた。
美姫ちゃんは絢音ちゃんのクラスメイトで毎日一緒に登校している女の子。
「おねーさん、バイバイ!!」
「うん、バイバイ」
元気良く手を振る絢音ちゃんに小さく手を振って返した。
その後ろで美姫ちゃんが舌を出しているのが見えた。私もしかして嫌われてる?
何てことなく授業は終わり下校時刻。
私は部活に入ってないから授業が終われば即帰宅だ。学校に残っている意味もない。
明後日には終業式があり、その翌日から待ち望んだ夏休みである。
ピーンポーン
ん?
部屋で読書に耽っているとインターホンが鳴った。
家には私しかいないから、私がでなければいけない。
んー。正直面倒だ。
ピーンポーン
。。。。
ピーンポーン
。。。。
ピーンポーン
はぁあ。
中々にしぶとい相手のようだ。
重い腰をあげて玄関へ向かう。
さて、一体誰なんだろうか。下らない勧誘だったら、寛容で有名な私でも呆れてしまうかもしれない。
「はーい。誰ですーーーか?」
「こんにちは!」
玄関を開けたそこには、毎朝元気な挨拶をくれる小学生、能島絢音ちゃんが素敵な笑顔で待っていた。
「こんにちは、絢音ちゃん。一体全体、どーしたのかな?」
「はい、宿題を見てもらいたくて来ました」
宿題? …………あー、夏休みの。
「そうなんだ」
にしても、何で私なんだ?
美姫ちゃんと一緒にやった方がよいのでは?
「大丈夫です、か?」
不安気に眉を傾ける絢音ちゃん。そんな表情されて断るほど鬼じゃないよ。多分、母さんが勝手に引き受けたんだろうし。
「うん、大丈夫だよ」
「ありがとーございます!!」
元気よく深々と頭を下げる絢音ちゃん。元気だなぁ、私にはその元気はないやー。
かくして、高校一年の私の小学2年の絢音ちゃんとの夏休みは始まったーーーーーいや、まだか。