第四話 バカにぃ
私、守島氷紗はとてもイライラしてしまいました。まさかゆうにぃがここまでマヌケだとは思ってもみなかったのです。
「おい!開けろ!誰だよ、いい加減に俺の部屋から出て行けよ!今なら慰謝料とかそういう類いのものは請求しないからさぁ!」
ゆうにぃは今もオートロックに気づかず、にぃの部屋の扉を激しくたたいているのです。おそらく『また』キーを部屋の中に置きっぱなしのままシャワーでも浴びに行ってしまったのでしょう。
「早くしろよぉ!風呂上がりで寒いんだってば。まさか何か悪いことでもしてるんじゃないだろうなぁ!?」
にぃは物を知らないにもほどがあるのです。にぃはまだ都会に出るには早すぎました。
氷紗が何に一番イライラしているのかというと、にぃは自分の失敗を繰り返してしまう悪い癖があります。なにしろ、昼にもオートロックの扉に気づかずにお昼ご飯を食べに寮の食堂へ行き、部屋に戻ってきて扉をたたいていたのです。氷紗がそばにいないと、にぃは何もできないのでしょうか。
「お願いします、開けてください!何でもしますからぁ!」
フロア全体がざわつき始めました。あぁ、また野球のお兄さんに怒られてしまいます。
だめです、もう自分を抑えられません。こんなイライラも抑えられないなんて、氷紗は弓道人失格です。
氷紗は勢いよく自室の扉を開けて、イライラをゆうにぃに全部ぶつけてしまいました。
「にぃ!うるさいうるさいうるさいうるさぁい!何回同じ過ちを繰り返したらわかるの!お昼にも全く同じことをしたよね!?オートロックだっていったよね!?ここはにぃだけのおうちじゃないんだよ?とってもにぃの声うるさいんだよ!?馬鹿なのですか?アホなのですか?死にたいのですか!?」
あぁ、何事かと様子を見に来た人も氷紗がこんなに怒っているのを見て引いてしまうかもしれません。あきれているかもしれません。笑っているかもしれません。とっても恥ずかしいです。
「ごめんごめん氷紗!悪かったって!」
ゆうにぃは必死に土下座をしてきました。でも氷紗は許しません。氷紗は謝ってほしいんじゃありません。その腐った根性をどうにかしてほしいのです!
「いたたたたた!やめろ!肩は外すなぁ!」
問答無用です。慈悲はありません。
「バカにぃ!」
そう捨て台詞を放って自室に戻ります。
さて、部屋に戻ってもやることがありません。じっとしていてもにぃの呻き声が聞こえてくるだけなのでゲームでもしたいのですが、あいにくゲーム機がないのです。本当、これだけは案内人の人を恨みたくなります。
ともあれ、明日になれば新しい制服を着ることができますし、なにしろ入学式があります。花撫ちゃんと大ちゃんは合格できたでしょうか、心配なのです。
不安を残しながらも、氷紗は眼帯を外して電気を消し、ベッドでゴロゴロします。いつも遅くまでゲームをしていたので全く寝られる気配がしませんが、人は横になって目をつぶるだけでも眠りと一緒の効果があるとかどっかの刑事ドラマで見たことがあります。とにかくゴロゴロするしかありません。
結局夜が更けるまで、氷紗は隣から聞こえてくる呻き声を聞きながら横になっていました。
執筆が遅いのは今期のアニメがどれも面白いのが悪いんだ!
いつもより短めの話です。たまにはほんわかと。