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魔法ってなんだろう。
自分の願いを叶えてくれるもの?
違う、魔法はそんな素敵なものじゃない。
魔法は自分の身を守るためのもの。
敵を攻撃するためのもの。
小さな頃、そうやって両親から教わったけれど
本当にそれだけ?
国のため、己のため…
それ以外に使い道はないなんて
いったい誰が決めたのかな…
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470年 4月10日
今日は5大国全ての魔法学校の入学式の日だ。
16歳になった者は男女問わずどこかの魔法学校に入学し、20歳までの4年間を全寮制の学校で過ごす事となる。
(夏と冬の長期休暇でしか帰省ができないため、親に会えない寂しさからホームシックに陥る生徒も少なくはないという。)
魔法学校の1つであるクルーク魔法学校の正門付近は新入生達でごった返していた。
正門前では新入生の名簿記入と胸元につける新入生の花飾りの配布が行われているのだ。
「うーん…まだ時間かかりそうだなぁ」
新入生であるレトリックはその長蛇の列に並んでおり、あまりの人の多さに少々疲れていた。
時間にすると30分も並んでいないのだが、新生活のストレスと相俟って疲れやすくなっているのかもしれない。
「まぁ、今日はこの後の入学式だけで終わりだからまだマシだけどな」
少し困った表示をしながらレトリックが呟くと、後ろに並んでいた少年が声を掛けてきた。