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零式  作者: HAL
プロローグ
5/11

入学

 「これより日本軍事学校入学に伴う説明をする」


 その言葉に、先程の険悪な空気が無くなり、片桐と伊達の方へと視線が注がれる。俺たち同様集められた者達も静かに前に立つ二人の話しを聞きろうとしてた。

 

 「私がこの軍事学校の西日本側執行役員補佐の片桐 美冬陸軍二佐だ。そして横にいるお方が西日本執行役員長の伊達 浩二陸軍三佐だ」


 伊達と片桐の自己紹介と共に歓声が上がった。

 過去に他国が日本に侵攻された時、伊達は北海道に着任し、自ら率いた零式特殊部隊『雷浪隊』の総隊長として、当時、北海道総司令官だった真田 新造の主力として獅子奮迅の活躍を果たし、『蝦夷えぞの雷浪』と恐れられた歴戦の勇士と評せられていた。その武勇譚は各地で話され尊敬する者は数多の数にも及んでいた。


 「まず初めに、東日本側総勢百名すべての参加表明が確認され、先程同じくここより西に五キロ離れた位置にある、ここと同じ施設に集められた西日本側にも百名の参加が確認された報告がきた。この百人は各都道府県において最低一名、最高で三名を選ぶことが出来る県を執行委員が事前に選んだ次第だ」


 つまり、三人選べた県と鬼頭や葛西みたいな稀哲しか選べなかった県があったということか。


 「次にこの島で何をするかは横におられる伊達様自らお話しして頂く。」


 その直後、伊達が一歩前に出る。


 「先程紹介された伊達だ。まず初めに軍事学校と言われているのだが、実の所、ここは学校とは名ばかりで教えるという事はしない」


 その言葉に全員動揺が走り、辺りがざわめきだす。どういうことかよくわからなかった。

 

 「まあ、落ち着きたまえ。君たちの様な十五の少年、少女を毎年、この島に集めている理由は一年間過ごしてもらうためだ。勿論、一年間も何もない所ではかえって暇なのだろうと思い、皆もご承知の通り、北はショッピングモール、南は娯楽施設なども取り揃えており生活に支障はないようにしている。まっ、毎日朝、九時にこの場所で点呼をするということ以外は各自自由に行動していい」


 その言葉に皆、安堵する。一年間この島で過ごすだけで、将来の政府要人になれるかもしれないのだ。こんな楽なことはない。


 しかし、伊達の言葉は続きがあった。


 「但し、この一年間何もしないとなっては、未来の日本を担う若者の力量が分からないので、少し趣向を凝らす意味で一つだけ『ゲーム』というか、勝負事をしてもらう」


 「これが本題みたいやな」


 横で葛西がボソリとつぶやく。


 「単刀直入にいえば、勝負事の内容は西側と東側に分かれて、戦争をやってもらう」


これが過去、東日本が連敗している勝負かと初めて分かった。


 「君たちも承知だとは思うが、この勝負事は勝った所は日本政府から高額な報奨金が得られ、その金で自分の都道府県の地はより堅個な地盤となる。そしてこの戦いをしていく上で各要人からスカウトされることもあるからがんばってくれたまえ」


その言葉に、笑顔を見せる者、不安を覚える者、十人十色の顔つきになる。

横にいる葛西はやる気を見せ、輝は無言で話しを聞き、鬼頭は両手の拳をグッと作ってやる気を示していた。

そんな中、俺は気持ちがやる気が上がらない。むしろ、いつリタイアするか、そんな事を考えていた。


 「では次にルールを説明する。一つ、これは戦いだが、殺し合いを目的とした物ではない。よって、君たちが来ている陣羽織の右肩に付けている腕章を取るという事が殺した証とする。この腕章を取られた者は死んだことになり、速やかにこの島から退去してもらう。そしてこれを多くつけている側が勝者となる」


 つまり、この『東』と書かれた腕章は、俺たちの心臓という事になる。数多くの首級を取った方が勝利という事か。


 「では二つ目、今ここにいる場所、そしてこの近くにある宿舎があるのだが、そこは非戦闘地域とする。そして、この施設には毎月、生徒一名に付き、十万円の金を給付するので、その金で食糧などを調達したまえ。当たり前だが、金がないからと言って、店を襲う事は禁止とする」


 いわばこの場所は、軍事拠点と言ったところか。


 「そして最後に、各々の力を観たいため、自分の武器以外は没収させてもらう。もちろん、ショッピングモールではそのような暗視ゴーグルや携帯電話などの通信機器など特殊な物は売られていないので気をつけたまえ。以上で終わりだが、何か質問は?」


 その言葉に一人の少女が手を挙げた。


 「あの、いつから始まるんですか?お母さんに電話したいんですが・・・」

 

 「悪いが、この島に電話などの通信設備はない。それに少々長く話してしまったみたいだ。じきに始まる合図が鳴らされる」


 その言葉に少女はぶるぶると脅えだす。

 もしかしたら殺されてしまう子もいるかもしれないんだ。当然と言えば当然か。


 「では、始めるぞ!三、二、一・・・」


 カウントダウンと共に、ヴォォォォォォォォンと爆音にも似たサイレンが島全体を包み込んだ。

そのサイレンに負けない伊達が叫ぶ。


 「ではこれより零式軍事学校を開校する!!各々方、御武運を!!!」


 こうして西日本と東日本の戦いの幕が始まった。


 

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