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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛の言葉

作者: よいち

本格的に恋愛を書きました。完成度低いです。

「うわあぁぁああ!!」

 彼女は今、絶賛落下中だ――標高五百メートルから。

 こうなったきっかけはついさっきのことだ――


 ***

「はー……。今日も疲れた」

 そういってベッドにダイブするのは現在就活中の小野(おの) (あおい)。短期大学卒業後すぐ、両親の元を離れて一人暮らしをしている。

 その所為か家の中はひどく静かで、暗く、冷たい空気が漂っている。


(もっとしっかりしないと、また会えたときの為に)

 彼女には好きな人がいる。暗くて頼れなさそうなのに、彼女がなにかあったときは自分のことのように考え、落ち込んだときは一生懸命励ます。彼女が何回も助けられた相手だ。

(でも、簡単には会えないよな――異世界だし)

 格が違う、ということではなく字そのままの意味だ。彼女は異世界という、自分の知らない、心細い場所で助けられていた。

(あのときみたいに頼るばかりじゃなく、頼ってもらえるようにがんばったんだ。次会ったら絶対に告白するよ、青髪の研究者君……)

 彼女は好きな相手の名前を知らなかった。だがそれは、名前を知らなくても探し出す、という気持ちの表れでもあった。

 蒼はビルに遮られながらも、その存在を強く主張する星を見ながら小さく呟く。

「好き……」

 ――その瞬間視界が白く塗りつぶされ、気がついたら自由落下をしていた。


(この召喚の方法はどうにかならないのかな……でも、また会えるのか)

 蒼が落下しているそこからは、幾度と無く目にした泉と特徴的な像が見え、前に神使として召喚された世界と同じだった。

 その世界はアンデッドや魔物と人が共存し支えあい、魔術などを使う世界〈ハルス〉だった。

 そして、地面が現実逃避をしていた間にも近づいてくる。

 こうやって落ちるのは二度目の経験になるが、たった二回、されど二回で慣れた手つきで魔術を使う。

(魔力があるな。とりあえず速度緩和の魔術を使おうか)

「優しく守って!」

 ギャグではなくれっきとしたハルスでの魔術だ。誰が考えたんだコラ、という言葉は前回さんざん言っていた。だが、やはり恥ずかしいらしく若干頬に朱が差している。


 魔術を使ったこともあり、落下速度はだんだん落ちていく。

 下に木があるのを確認した蒼は木に背中を向け、猫のように丸くなる。


 瞬間――

 バキボキバキー!!!!


 豪快な音を轟かせながら無事に地面に降り立った。


(あれだけやって手の甲の掠り傷だけ……丈夫の範疇超えてるな)

 確かにそうだろう。クッション代わりの木は太さ三十センチほどありそうな大きな枝まで折れ、ほとんどの葉っぱが落ちてしまっている。

 それに比べ蒼は服が少し破れ、葉っぱが所々に付いてるだけで、怪我は手の甲以外どこにも見当たらない。

 僅かに血の滴る手を見て、回復用の魔術を使う。

「好きです」

(……)

 もう何も考えないようにしたらしい。好きな人のことを思い浮かべたのか頬がバラのように赤くなっているが……。


「なんで……なんで魔術が使えるの?」

 蒼は急にそう、日本にいたら一生聞くことの無い、だけどこの世界に来たときに死ぬ気で覚えたこの世界共通の言語――ハルス語で、困惑したような掠れるような小さな声で後ろから話しかけられた。

 この世界は魔術はあっても使える人は少ない。それは一重に普及していないことが原因だろう。力の操り方、魔術を使うための力のある言葉が出回っていないのだ。

 蒼は召喚されたときに、アンデッドの腐の力、魔物や人の生の力、神仏の浄の力の均衡を保ち安定させるため力の操り方を学んだ。安定し次第帰ることになっていたので少しでも早く帰ろうと、必死に勉強していたため力を操ることは、教えた魔導師のお墨付きである。さらに、内容はどうであれ力のある言葉は日本語だったため、歴代一位の実力者だった。

(まあ、帰りたかった理由はお母さんと仲直りすることと中学校の卒業式に出たかったからだけど)

 そして、その大切さについて、引き留めようとしていた人達に小一時間ほど話したのは愛嬌ということで。


(話が逸れたが、つまり数少ない魔術師、魔導師や、たとえほんの少し魔術が使えただけで国に抱えられ、有名になるから知らないはずが無い、なぜ見たことも無い人が普通に使えるのか疑問に思ったのだろうな)

 そこまで考えて固まった。嘘をついてこの場を切り抜けるか、本当のことを話して好きな人の場所を聞くか。

 そしてチラリと伺うように見る。

「っ!?」

 そして息を呑んだ。それは、目の前の男の人が好きな人と重なって見えたから。

 目が隠れるほど長い緩くウェーブのかかった青髪。安心させようと少し笑った口元。清潔感溢れる真っ白な白衣。そう、一瞬見えた。

 が、瞬きをすると消え、本当の姿が映し出される。

 同色の緩くウェーブのかかった前髪は横に流され、髪より明るい天色の瞳が蒼を注視する。同じく安心させようとしているのか口元が少し笑っている。真っ白な白衣のようなものを着ていて、見た目は二十歳近くだ。


 蒼も知らないうちに蒼のその唇からは言葉が紡がれた。

「習ったことがあるのです。よろしければ研究を手伝わせてください」

 それは少しでも近づきたくて恋をしてすぐの頃に好きな相手に言った言葉。蒼自身言うとは思ってもみなかったようで驚愕に目を見開く。

 同じくその男の人も驚きと困惑で絶句する。

(な、なんでノアさんに一瞬見えたんだろう……そんなに会いたかったのかな、僕……)

 男の人は一瞬、胸あたりまであるさらさらとした黒髪、黒縁眼鏡の奥から覗く不安そうな黒い瞳――最初に召喚されたときの蒼に見えた。が、蒼が目を見開いたことで男の人は我に返り、すぐに霧散する。

 そして現れたのは同じ黒髪黒目で、さらさらの髪を後ろでひとつに纏めている女の人だった。


 このまま離れてはいけない気がした男の人は

「魔術が使えるのなら魔術研究所で手伝う……いえ、働きませんか?」

 そう勢い込んで聞いた。そしてすぐに後悔する。

(もっと余裕を持たないと、ノアに会ったときにまた不安にさせてしまう……!)

 蒼は目の前の男の人がそんなことを考えてるとは露知らず、手を握り、顔を悔しげに歪める男の人を見て可愛いと思ってしまう。蒼の頬が自然と緩む。

 蒼の笑みを肯定と取った男の人は自己紹介を始める。

「僕はシラフです。古代魔術の研究者をしてるんだ。えっと、これからよろしく」

「私は小野蒼です。よろしくお願いします」

(行くって言った覚えは無いのだけど……でも、自分で言ったし同じ研究者だからいつか彼に会えるよな)

 いきなり働くことになり首を傾げた蒼だが、お金を持ってるはずも無く、研究者伝いに好きな人に会おうという打算の元、働くことにした。

「それじゃあ案内をするね」

(アオイ? どこかで聞いたことが……)

 一方シラフは、名前に引っかかりを覚えつつも、新しい仲間を案内する為に、頭の中から追い出した。


 実際は召喚後数回、蒼は名乗ったが、魔導師の考えた名前を本人が名乗りだしたことでノアという名前で覚えられていたりする。


 ***

 蒼が研究所に来てから数週間が経った。最初は慣れない場所で、経験はあるもののほとんど使わなかった魔術の研究、というもとの世界ではありえないことをするということもあり、戸惑いや不安があったが、最近ではシラフの丁寧な説明もあり大分馴染んだようだ。

 そして、魔術とはいえ日本語。日本人の蒼には息をするように簡単に唱えることが出来る。前回の召喚で、さんざん魔術を使ったことも影響して、今では研究所の中では上から数えた方が早いほどの実力者になっていた。


 そんな蒼が研究する部門は、

「アオイ、古代文の解明は終わった?」

 古代に使われた魔法である。偶然にも古代文は日本語で書かれており、ハルスの住人はほとんど理解できない。例外として、蒼の前回の召喚時の魔術の指導にあたった人物は読めるようで、何度か古代文書を読むところを目撃している。

(まだこんなにある……それに書いてあることは同じことの繰り返し。こういうときにリックが居たらなあ……)

 はあ、と蒼がシラフに要らない心配をさせないよう、こそっとため息を吐く。

 リック、とは魔術を指導した人物のことだ。


 曇りかけた心を澄み渡すように大きく伸びをすると、ふかっとしたソファの背凭れに凭れ掛かり、大きな机に置かれている高さ一メートル程ありそうな紙の山のうち一番上の物を手に取り言う。

「うーん、全然進まなくてまだ沢山あるけれど、大体は古代魔法を使うには魔力よりも強い力が必要って事だな」

「そっか、お疲れ様。それでも分かるのが凄いよ。僕なんてまだほとんど読めないから」

 蒼が顔を顰めると即座にフォローするシラフ。紙を一枚とって見ては「えっと、これ……が、古代を……魔法?」とぶつぶつ呟いては首を捻る。


 そんなシラフに、くすぐったいような、可笑しいような変な感覚がして蒼は笑みをこぼす。

「ふふっ……あはは」

「……はははっ」

 やがてそれが皆に伝染し、皆の疲れを吹き飛ばしていく。


 ***


 コンコン


 それが何週間か続いたある日。

 ノックの音と共に蒼にとっては見慣れた人物が立っていた。

 短めの白髪に金色の瞳。整った顔には万人受けするような笑みを湛えた、前回の召喚時とまったく変わらない姿をしたリックだ。


 紙束から顔を上げた蒼とリックの視線が交わる。

「……あ、ノアちゃ――」

「はじめまして、数ヶ月前からここで研究させていただいておりますアオイです、よろしくお願いします!!」

 蒼は顔を引き攣らせながらもリックに食い気味に挨拶をする。

(バレたー! 怪しまれてないよな? だって前に召喚された人だって知られたら、また仕事をすることになるかもしれない。自由に動ける今が研究者君を探せる好機なのに! バレないようにしないと!)

 実はもう会っているのだが、約五年の月日が流れ、お互い雰囲気や見た目が変わったこともありなかなか気付かない。お互い鈍いことも要因の一つだ。


 蒼の心の声が聞こえたのか、リックはにこりと笑いてを出す。

「よろしくね蒼ちゃん」

「あ……はい、よろしくお願いします」

 握手だと思った蒼がリックの手を握った途端――

『ノアちゃん、なにかあったのー?』

 吞気なリックの声が聞こえてきた。

「っ!?」

『待って待って、手を振りほどかれたらお話できないじゃん』

「……」

 周りに居た人達は、何事か!? や、なんで手を離さないんだろう? と思っていたりするが、蒼は知り合いに会った驚きや、今後に関する事で頭がいっぱいになっているため、気が付いていなかったりする。


「ちょっと聞きたいことがあるから、あっちの方でお話しない?」

「……はい」

 そして、蒼とリックは研究所の誰も通らないような隅の通路に向かった。


 ***


「それで、また来ちゃったのはなんでか、思い当たる節は?」

「ないよ。でも、もしあったとしても、……まだ帰れない!」

(告白をしないと……、ずっと待ってたから!)

 拳を握り話す蒼を見ながらリックは全てを悟る。

(へぇ、未だに好きだったのかーあの時の研究者。近くに居るのになんで気が付かないんだろうねー?)


 最初に召喚されたとき、心細かった蒼を救ったのはその研究者――シラフだった。まったく知らない土地で、蒼のいた世界では空想上の事だった魔法を使い、中学最後の年ではあったがいきなり親元から引き離されたことは結構なダメージを与えた。周りからの崇拝にも似た扱いも要因の一つだった。

 そんな中で、年の近い気楽に話せる“友達”は貴重だった。

 そして蒼は周りの人が気付くほどシラフにのめり込んだ。

 それはシラフも同じで、研究の話をすれば興味津々で聞いてくれ、一緒に考えてくれ、シラフの知らない異世界の話を教えてくれる。

 そして、二人ともその時間が何より楽しく、友達からランクアップするのも時間の問題だと思われたそのとき、世界は均衡を取り戻し蒼が帰ることが決まった。

 ごたごたが続き、もともと戻りたがっていた蒼はシラフに会えないまま帰った。


 人情の機微に聡いリックは、早い段階から気付き二人を微笑ましそうに見守っていた。

(五年も片思いなんてよくやるねー。いつになったらくっ付くんだろうね……まぁ、これからに期待って事で)

 蒼が帰った後シラフは、皆が予想したように落ち込むのかと思いきや、次の為にと少しずつではあるが変わり始めていた。


 だが、根幹は変わることも無く、召喚当時のように研究の話をし、まだ知らないことをお互いに教え合い、楽しく過ごす。


 そんな中でお互いは、また惹かれ合っていった。


 ***


 あれから数日後の研究室で事件は起きた。


「す、すす、好すっすすすすs……やっぱり無理だ……ごめん」

 それは蒼がフラスコを誤って割ってしまい、シラフの手を切ってしまった。

 滴り落ちる血を見て咄嗟に治そうとする蒼だったが、治すための魔法の呪文が上手く言えない。

(たった二文字……『すき』って言うだけなのに、なんで……前は普通に言えていたのに……!)

 これまでに何度も使ったことのある魔法。

 何も躊躇いを感じなかった魔法が、シラフに対して使うときだけ鼓動が高まり、喉の奥がキュッと締め付けられたように声が出せなかった。


 蒼はこれを、この状態をなんと言うか自然と理解した。

(私は……シラフの事が、す、好き……なのかな。研究者君のことが好きだったのに……)

 理解したからこそ、一緒に居ることが辛くなった。長い間片思いをし、今度こそと異世界という限りなく、いや、はっきり0%といえるような確立に賭け、頼ってもらえるように変わり、やっと会えるというところで好きな人ができる。

 蒼はなんとなく好きだった人を裏切ってしまったと思い、シラフの傍から離れた。

(研究者君が私を好きとは限らない……けど、それでも、もし好きだったら……。それに、ずっと彼に頼られたいと頑張ってきた時間が無駄だったみたいで……嫌だ)



 ***


「つまり、古代の魔法で均衡を保つことは可能になるんだね」

「うん……」

 古代の魔法で力の均衡を保つ。それが、この研究所が目指す最終目標だった。


 そもそもなぜこうなったのかは、蒼を召喚をした時には既に『昔の力の均衡の保ち方』についての古文があり、蒼が誤ってそれを読んでしまったからだ。それからリックが読み始め、政策として密かに掲げられ、今に至る。



 リックと蒼が一緒に研究をすると、瞬く間に進んだ。そもそもほとんどの人が読めないので、蒼が居なければ進むことはほぼ無いと言っていいほどだ。リックはあまり仕事をしなかったため、実質蒼だけで進めたようなものだった。


 なぜリックは古代文に使われる『日本語』が読めるのかというと、

「俺ってさ、日本から召喚されたんだよね。まあ、調整は下手だったけどさ」

「え? ……ええー!?」

 はじめは何を言われたか分からずに間の抜けた声を出すが、時間を掛けて理解すると耳鳴りがしそうなほど大きな声で驚いた。


「うん。懐かしいね、この言葉」

「そうだな。まさか同じところ出身の人と会えるとは思ってもみなかったよ」

 突然聞こえてきた母語に興奮し、思わずリックの手を握り締める蒼。そして、今までのことを日本語で話し合う二人。


 ――そんな光景を少しだけ開いた扉の隙間から見ていた人物が居た。

(なんで、なんでアオイはリックと魔法に使われる言葉で会話を? それに、アオイが僕を避けているのはなんで? それに、話せない時間が……辛い)

 その人物――シラフはリックに鋭い視線を向けると、何かを決意するように拳を握った。


(くすくす。さて、もうすぐなのかな?)

 リックはそんなシラフを、蒼との会話の合間にチラリと流し見て内心で笑った。


 ***


「アオイ! シラフが大変なんだ! 今すぐ来て欲しい!」

 次の日、蒼が研究疲れでうつらうつらしていると、血相を変えた男の人が部屋に雪崩れ込んできた。


「え? シラフが? え?」

 男は状況を全く飲み込めていない蒼を、ぐいぐいと魔術の訓練場に引っ張っていく。


 そして、訓練場で蒼の目に飛び込んできたものは――

「え、シラフ……? なんで、え?」

 ボロボロで、血を沢山吸って赤黒くなった服を着て、血の池に沈むシラフの姿だった。


「決闘を申し込まれたんだよー、俺が」

 どこまでも吞気な声でハッと現実に戻り、慌てて治療をしようとする蒼だったが、

「す、すす……す」

(お願い! 言って! 言わないと駄目なんだ! 早く!)

 前のように声が詰まってなかなか言うことが出来なかった。

 蒼が葛藤している間にもシラフの息はどんどん弱くなっていく。

(早く、早く!)

「すー……すすっ」

 シラフが弱まるにつれて焦っていく蒼。


 ――助けたいのに出来ない。強い力があっても、いざという時に使いこなせれていない。

 大切な人を失ってしまう。やらないと、自分が治さないと――


 色々な感情が入り混じり、蒼の目には涙が溜まっていた。

 ごちゃごちゃしたなかで、唯一分かったこと、感じたこと、心から思ったこと。それを我武者羅に掴むように叫ぶ。


「――好き!!」

 ぽとり……と涙が落ちる。


 その瞬間――

 サァッ……


 涙の落ちたところから、傷がまるでビデオを逆再生するかのように治っていった。


 それと同時に、シラフの意識が浮上する。

「ぁ……アオイ、ありがとう……」

「ううんっ、無事でよかった……! シラフっ!」

 ギュッとシラフを抱きしめる蒼に、空気を読まない、リックの声が掛けられる。

「ノアちゃん、無事助けれて良かったね」

「え? ノア?」

 その声にいち早く反応したのはシラフだった。ゆっくりと口の中で咀嚼すると、正体がばれた、シラフはどうしたの? と混乱している蒼の手を取り、向き合うと静かに言う。


「ノアさん……五年前のお話をしたときから、ずっと……ずっと好きでした。研究のお話を聞いてくれたり、異世界のお話を教えてくれたり……。全部楽しくて、面白くて……一緒に居たいと思いました……! ……これからも一緒に居てくれますか?」


 不安そうに、それでもしっかり伝えようと言う姿を見て、驚いていた蒼も相手がずっと片思いをしていた相手だと分かると、今にも泣きそうな顔で、喉につっかえそうになる言葉を何とか押し出す。


「わ、私もずっと好きで……グスッ、今も好きです……! ぅうっ……こちらこそ、よ、よろしくお願いします」


 そして二人は導かれるように近づき、唇を重ねた。






 ――途端に煩いくらいに鳴り響く拍手や口笛で周りに人が居ることを思い出し赤くなった顔を、見合わせると、どちらからともなく笑い出した。



 ***


 数年後……


「後これを解読したら休憩にしようか」

「うんっ」

 古代文の紙束を持つ二人の手に着けられた銀色の指輪が、きらりと光った。


***

蒼が日本語について教えたことで、魔術を使うときに赤くなる人が居たり居なかったりするらしい。




お粗末さまでした

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