獄竜王とその後
「っ!!!!!!」
『そんなものか?貴様の実力は。よくその程度の腕で我に挑んだものだな。』
「っの…トカゲ野郎がぁぁあぁぁぁ!」
なんでこんなことになってしまったのか。それは数時間前に遡る。
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「ふぅ。やっぱこの刀切れ味良いな。」
襲いかかってきた龍を斬り飛ばしつつ、39層を進んでいた。
「最初は怖かったんだけどなー」
最初は怖かったんだけどね。こんな切れ味の良い刀なら何でも切れるから楽しいんだよね。日本じゃ自分の力で生き物を斬りとばすことなんて出来なかったけどここならできるから。あー。なんかずっと1人でいたせいで独り言増えた気がする。
「お!やっとボスか。長かった。」
ま、どうせ大して強くないだろうしそのまま行くか。
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ボス部屋の扉を開けると、中は巨大な神殿のような装いであった。
「なんだここ…?」
祭壇があるはずの場所には、今まで見たどの龍より立派な石像が佇んでいる。
『我に挑むか…若人よ……』
「なんだ!?」
龍の石像が頭の中に喋りかけてきたようだ。
「ハッ!!!ようやく強そうな奴じゃねぇか!いどんでやるよ!」
『よかろう……』
石像が光り輝く龍に変わっていく。
『獄竜王ヴァクシス。それが我が名だ。いい冥土の土産になるだろう』
そう言うとヴァクシスはとんでもない速度で爪を振るってきた。
「その程度かぁ!遅い!遅過ぎるぞ!!」
危なげなく躱すと、爪の根元を斬りつけた、
「!なんだこの硬さはっ…!!」
いつもように切り裂こうとしたが、刃が通らなかった。そして動揺したところに爪が振るわれた。その速度は、先ほどとは比べられない程の速さで振るわれていた。
「っ!!!!!!」
『そんなものか?貴様の実力は。よくその程度の腕で我に挑んだものだな。』
「っの…トカゲ野郎がぁぁあぁぁぁ!」
爪を避けた勢いのまま、ヴァクシスに躍り掛かった。
ガチン!
左腕が、なかった。
「があぁ■■■■■■■■■■■■■■!!!!」
声にならない咆哮をあげてその場にうずくまってしまった。
『我とこれだけ戦うことができたやつは今まで1人もいなかった。だから、すぐには殺さずに復活するのを待とうじゃないか。』
そういって、爪を近づけ、眼を抉り、耳を削いだ。
「あぁ……」
もう、声をあげる気力さえなかった。
「ああぁ……!」
だが、この龍に対する怒りは高まっていく。
「ぁ……ぁあああ!!!!!」
そう叫び、新たな技を編み出した。
「天宮閃天流抜刀術:片腕《滅びの風》」
………ス………
頭の中に膨大な経験値が入ってくるがそれどころではなく、自らの出した血溜まりに倒れた。
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「ん……ここは……っ!!!」
起き上がろうとしたら、体全体に激痛が走った。
「ああ〜思い出した思い出した。」
そういえば昨日いろいろ食われたんだった。このくらいの激痛なら大丈夫だが。
あれ?なんか俺の刀が、変わった気がする……。鑑定、鑑定!
【無銘】
攻撃力:0 耐久度100%
〈武器としての攻撃力を一切持たず、魂、またはそれに属するものを斬ることができる。※注:ただし振るうものの腕による〉
まじか。嘘だろ。これある意味最強だけど、物理攻撃ができないのは辛い。と、思ったところに宝箱はっけーん!
さあ、ご○だれタイム!
パカッ
その中には……
【獄龍の着流し】
防御力:10 耐久度100%
特殊効果:スキル【獄竜王の力】
〈獄竜王を斃したものが手にすることができる着流し。獄竜王の力を宿し、その一部を使うことができる〉
………残念。まあちょうどいいか。
じゃあ最後はステータス確認か。怖い。怖いよ。
「(鑑定)」
ステータス
名前:【天宮翔】
職業:【侍】lv999*【抜刀鬼】lv999*▼
称号:〈天宮閃天流抜刀術〉〈無銘の解放者〉〈天敵〉〈究極の剣豪〉new!〈滅龍の侍〉
スキル:【天宮閃天流抜刀術:片腕】【刀術:片手】【鑑定】
【獄竜王の力】
new称号
〈滅龍の侍〉
獄龍界を踏破し、獄竜王を一本の刀で斃したものに与えられる。龍族に本能的な恐怖を与える。
また転職できるなー。ぽちっと。
職業:【侍】lv999*【抜刀鬼】lv999*▲
【片腕の韋駄天】
(※注:転職すると一次職、二次職が統合されます。)
迷わず転職!
ステータス
名前:【天宮翔】
職業:new!【片腕の韋駄天】lv1
称号:〈天宮閃天流抜刀術〉〈無銘の解放者〉〈天敵〉〈究極の剣豪〉〈滅龍の侍〉
スキル:【天宮閃天流抜刀術:片腕】【刀術:片手】【鑑定】
【獄竜王の力】
new職業
【片腕の韋駄天】
片腕であるがゆえ、速度に磨きがかかった。音速を超えることができる。
わお。これは強いと思う。そしてステータス確認しながらだったけど、かつて石像があった場所に刀が刺さっているのが見えてたんだよ。近づいて、鑑定するくらいならバチ当たらないよね……。
見た感じ無駄に柄が長い。まあとりあえず、
「(鑑定)」
【大長刀】
攻撃力:3500 耐久度100%
〈名のない業物。数多の龍の逆鱗を溶かし固めたものから創られた。〉
これ、名前を見る限り、埋まってるところがめっちゃ長いってことだね。まあいいや。こいつは俺のもん。
引き抜くと、目の前に、ワープゲートが構成された。そして、やはり長かった。刃渡り3m50、柄が70cmほどの長い刀である。抜くと同時に【時空の鞘】が出てきたから、それに納めると、1mほどしかないのに、すべて納まってしまった。これで佩けるね!やったね!って感じだけど!
もう疲れた。早く出よう。そう思って、ワープゲートに入った。
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お?ここは……思い出した!あれだ、〈小鬼の洞穴〉の前の草原。よかった。やっと戻ってこれた。王城戻っても大丈夫かな?と、とりあえず行ってみようかな。うん。
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「ダメです。お通し出来ません。お引取りを。」
「そこをなんとか!」
「それ以上抗議を続ければ、捕縛します。」
やっぱだめだったか。じゃあ街で情報収集かな。はあ。入れなかったか。もう勇者たちは出発したんかな?王女様が魔王討伐のための勇者召喚って言ってた気がするからな。そういや元気かな?莉央とか王女様とか。
そんなことを思いながら街を歩いてると、
「翔ー!」
「翔さーーん!」
莉央と王女様が抱きついてきた。
「うぉっ!?どうし「どうしたじゃないよ!っぐ、ひっぐじんばいぢだのにー!!げんぎでよがっだぁ」「そうですよ!急に行方不明になったって聞いたときは心臓止まるかと思ったんですからね!」あーすまんかったな。」
こんな美人2人に抱きつかれるといろいろとやばいんだけどね……。
「あれ、か、翔?左腕は?ねぇ!」
莉央が訊いてきた。
「あー、食われた。右眼と右耳も。」
「え!?そんな危ないところに…。此処じゃ詳しい話も出来ませんね。城に行きましょう。
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「……………………ってとこだな。」
……あれ?反応なし?
「「………龍獄界!?!?!?」」
「そこ!?」
「そこ!?って龍獄界って空間の狭間にあるとされ、獄竜王が住まう神殿があると言われているところだよ!?」
「あいつは強かった。いろいろ食われたし。」
そこで静まると、
「ところで、これからの話なんですが、翔様にはソルロイド魔法騎士学園に入学して貰おうと思っています。どうですか?」
と、予想外の言葉を王女様が言った。俺の答えは、
「入ります!」
「そ、即答ですか。」
「たりめーでしょう。学校行きたいし!」
「寝るくせに?」
「それはいいんですぅ!個人の勝手ですぅ!」
「じゃあ手続きはしておきますので、ゆっくりお休みください。部屋は、以前から使っておられる部屋で構いません。」
「じゃあ寝るわ。」
そういって部屋に戻った。お休み。……zzz…………