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終 ふたり

 森にある小さな集落は、朝から慌ただしい雰囲気に包まれていました。なかでも、横に長い造りの建物の内部には女性たちがきびきびと動いていました。外に追いやられた男性たちは、おろおろするばかりで役には立ちません。


 しかし、皆が思うことは同じです。歓喜の瞬間が来るのを今か今かと待っているのでした。


 そのときがついに来ました。建物の奥から甲高い産声が上がりました。外から聞いていた皆の表情が明るくなります。手を叩きあい、喜びを表します。


 ダムと呼ばれた男性は皆たちから背中を叩かれて、建物のなかへと押しこまれました。ダムこそ、今まさに父親となった幸せな男性です。


 手荒い祝福を受けながら、奥の部屋へと向かいますと、そこには彼の妻と生まれてすぐの赤ん坊がいるはずです。ダムは高なる胸を押さえながら、突き当たりの扉を開きました。


 扉の先には布団の上に横たわった女性の姿がありました。赤ん坊を抱えた女性のダムを見る瞳は気だるそうでしたが、その口元には笑みをたたえています。とても幸せな感情を現していました。


「ダム、嬉しいか?」


「ええ、ものすごく嬉しいです」


 涙を流したダムは、愛しい妻とともに赤ん坊も腕のなかに包みこんだのでした。


 一方その頃、人間界から遠く離れた魔王城では、甲高い産声がひっきりなしに鳴いていました。


 魔王城の敷地内にある紫の沼から小さな物体が頭を出します。そのどれもが翼を持っています。細くて青白い手が小さな物体を抱えました。ふくよかな胸の前にはすでに4匹もの物体を抱き締めています。


「あなたはウプですよ。あなたはウププにしましょう」


 似たような名前を物体につけながら、とても嬉しそうにほほえみます。彼女は魔王です。以前は神子だったのですが、色々あって魔王となりました。魔王のかたわらの止まり木にはコウモリがぶら下がっています。コウモリはうっとりと、魔王を見つめていました。


「まっおうさま、それにしてもたくさん作りましたね」


「だって、いっぱい作りたいじゃないですか」


 好きなウピリさんのそっくりな子供を。魔王がこぼした言葉にコウモリは手足をすべらせて、止まり木から落ちました。また沼からひょっこりと頭を出してきます。魔王城にはしばらくやかましいこどもたちの鳴き声が響いておりました。

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