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1 神子

 こっちの世界はもうダメです。周りを敵に取り囲まれています。敵は人間と対立して、侵略しようとする魔王軍です。


 魔王軍が放った火の玉が木に移ると、柱となって、森を焼いていきます。


 どうしたらいいのでしょう。かろうじて森の高台まで逃げてきましたが、いつまで持つかわかりません。


 魔王軍の攻撃を受けながらも、たたずむことしかできない人間のわたしたちです。


 長老が大木に向かって手を合わせます。子供たちは肩を震わせながら、母の服にしがみつきます。


 こっちの世界にやってきてほんの半年が経ちました。神子として何不自由ない生活を送らせてもらいました。


 実際のわたしができるのは民衆の話を聞いて心を軽くすることだけでしたが、それでも、こっちの世界の人たちはわたしを信じてくれました。


 しばらくして勇者さまと出会いました。見よう見まねで力を授けると、さらに神子に対する周囲の期待は高まりました。


 そして、現在のわたしは神子として、祈ることしかできません。勇者さまが破れた今、こっちの世界が確かに壊れようとしているのに、何もできないのです。


 胸の前で指を組み、瞼を伏せることしか、手段はありません。


 目を一層強くつむったときでした。


 全身が温かい何かに包まれていくのを感じました。肌に触れている心地はしないのに、毛布よりも分厚いもので包まれているようなのです。


 目を開けましたら、温かさの原因は光でした。まばゆい光の衣はわたしの体に纏わって、きらきらと輝きました。


「……!」


 長老は垂れた瞼を大きく開いて、何かを発しました。


 しかし、わたしには聞き取れません。辺りの音もすっかり消えました。


 もしかしたら、消えたのではなくて、わたしの耳が音を通さなくなったからかもしれません。光は強くなって、わたしの視界まで奪っていきました。

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