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叛乱のコロシガミ  作者: 戯富賭
明鏡止水-Day a break-
3/16

Day:Ⅲ

失踪と再会


彼らはまた対峙する

押しつぶされそうな絶望がいつの間にか平凡と変わった俺の日常。

相変わらず、家族とは距離があるけど前よりは話すようにはなった。

家族を喪って得た教訓と後悔。

本当にいなくなったときに悲しめる自分がいたんだ。

それだけで自分が間違っているのは分かっている。

それでも、今はまだ……。



「おっはよー!」


「ぐふっ」



な、何なんだ、こいつ……!

人が一生懸命悩んでいる最中に毎回毎回背中からタックルしやがって!

誰かなんて聞くまでもなく。

安達(あだち)しかいない。



「いい加減にその挨拶はやめろ」


「えー?なんで?

ちょっとしたスキンシップだよ?」


「あれが、スキンシップだったのか?」


「うん、そーだけど」



もう一種の暴力だぞ……。

でも、こいつがいなかったら。

もうひとつの世界で逃げる手段がなくやられていたかもしれない。

とりあえず、言葉にしないが感謝しとく。

俺の気を察知したのか、安達は学校に着くまで笑顔のままだった。



「ねぇ、ねぇ!知ってる?あの噂」


「死神とマントの青年でしょ?」


「会ったら殺されるって噂のやつだろ」



いつもの学校に登校したものの、教室や廊下はいつも通りじゃなかった。

死神とマントの青年。

この二つの噂が激化していた。

出会ったら殺されてしまう、というもの。

こんな不審な噂を信じてしまうのも無理もない。

既に起きてしまった謎の現象。

虚偽(ギーク)祭典(ハロウィン)

それを含めて、この噂が広まっているかもしれない。


安達がこの前に話した死神は……別世界にいたもので間違いはない。

肌にピリピリと来る死への直感。

あれは死の塊。

そして、マントの青年。

そいつは直接、この目で見たから分かってる。



鷹人(たかひと)……」



確かに不思議な格好だったし、あの一言の件もある。

だからといって、すれ違っただけだ。

おかしな点だらけ。

見たし会ったが現に俺は生きている。

こんなことが出来るやつでもない……。



『お前、絵ばっかり描いて楽しいか?』


『……僕、身体弱いから。

みんなみたいには遊べないから』


『そうなのか……なら、俺と遊ぼう』


『えっ、だから僕は』


『大丈夫だって!動かなければいい遊びを考えてやろう。

いろんなことやれば、きっと面白いしな』


『……武内(たけうち) 鷹人、僕の名前』


『よろしくな、鷹人。

俺は荒木(あらき) (ゆう)だ』



昔の鷹人は病に苦しんでた。

だから、その分の苦労もしているけど誰にでも優しい。

虫を殺さず、植物を折らず。

生きている限りみんな同じだ、と言うほどに。

優しいやつなんだ。


あいつは違う。

それを証明したくて俺は学校終わりに鷹人の家へ向かうことにしたのだが。



「なんで、お前らまで……」


「そんな思い詰めた顔して行く友達ってどんな人なのかなー、って心配で心配で」


「私は面白そうだから!」



単独で行くつもりが……まぁ、いいか。

安達と橋本(はしもと)も突然参加し、鷹人の家へ。



「デカ……」


「凄いね、荒木のお友達くん!」


「鷹……武内は両親が共働きだけど社長地位だから。

次期エリートだった。

それがストレスになるまでは」



両親が共働きで年がら年中働いている。

つまり、休みなくこなしているということ。

この豪華な豪邸も鷹人と鷹人の弟だけの家。

父親も母親もいない空っぽの家。

だから、俺や他の五人衆でさえ鷹人の家には行く回数は少ない。

ただでさえ、鷹人は優しく気を使わせてしまうから。

俺とまた違った意味で辛い状況を知っている。



「おや?」



インターホンを鳴らす寸前で門の前に現れた老人。

燕尾服を着て、かなり綺麗な姿をしている。

その姿に見とれていたせいで挨拶が遅れてしまった。



「こ、こんにちは……」


「荒木くんじゃないか?!!

ぼ、坊っちゃま……鷹人坊っちゃまを見ておられなかったかね?!!」



その老人は相変わらずといってもいい。

玉城(たまき)さん、武内家専属の執事だ。

ここまでキチンとした正装を着こなしている姿は初めてで別人にしか見えない。

昔の俺や他の五人衆ともちょくちょく顔を合わせたことのある人で。

若干な心配性があり、その姿は親そのものだった。

そこまでの人すら鷹人を尋ねた……?



「先ほどはお見苦しいところをお見せしました」



一度感情を抑え冷静になった玉城さんは申し訳なさそうに外の庭園にて俺たちを迎え入れてくれた。

二人で話したいため、安達と橋本には紅茶が入るまで庭の散策に行って貰った。

もちろん、安達には警告しておいたが。

やっぱり大層広い庭ではあるが、使っていたのは鷹人のみ。

ここでのんびり読書をしている、と言っていたのを覚えている。

本当、広々と小さなところまで気を使うやつだ。

……いや、思い出に浸るのもここら辺にしよう。



「鷹人に何かありましか?」


唐突に本題へ。

俺らのためにとカップに紅茶を淹れる手が止まり、玉城さんは一度ポットを置く。

気を落とした顔をして玉城さんはゆっくりと話し始める。



「一ヶ月ほど前から、鷹人坊っちゃまは行方不明となりました……」


「なっ、ちょっと待ってくれ!

鷹人が行方不明?!」



そんなことは、あり得ない!

この目であの姿を見た。

この耳であの声を聞いた。

じゃあ、あいつは……。



「いつも通りの日々の中、鷹人坊っちゃまは忽然と帰ってきませんでした。

帰宅時間に帰ってこなかったので連絡を取ってみたのですが着信にすらならなかったのです。

不安ではありますが、あの方は今も無事であることを信じていますよ。

荒木くんがこうしてまた来てくれたということはそういうことなのでしょう?」


「そう、ですね……」



別にそんなつもりで来たわけではなかった。

また会って、色んなことを聞きたかった。

今の現状では鷹人には会えそうにもない。

あのときのすれ違いがまぐれだったのかもしれないし、もしくは……。



『これで最後だな』


『最後?縁起が悪いだろう、10点』


『また会おう、って言おうよ』


『うぐ……えぐ……』


『お、おい、これぐらいで泣くなよ……ったく、さっさと要件を済ませてくれよリーダー』


『そうだな……俺らは別々になる。

でも、また会えるさ!

そのときはお互い成長して会おう!』



小さい頃の約束。

あの日、五人で集まって約束を交わした。

あの言葉を覚えているのは俺だけではなかったみたいだな……。

しかし、どんなことがあろうと約束は果たされない。

俺たちは別々の道を歩いているのだから。


それでも、もし鷹人が俺だけに接触を試みたのなら。

……確認しなければならない。

トイレを借りることにして、その場から席を外した。


もう一度、あの別世界へ行くことはできないだろうか……?

ここだけではなく、試しに何度もやってみたが別世界には行けなかった。

別世界に行くにはある条件が必要なのだろう……。


手洗場の鏡越しに問答している最中。

警報が鳴り響く!



『緊急事態発生!』


「安達、橋本、玉城さん……!」



急いで庭園に戻るためにドアを開けた瞬間のことだった。


場所は既に庭園。

だが、周りの景色は暗い。

もう、別空間へと入っている……?!


後ろを振り返ると、ドアの形をした元の世界への空間が形成されていたが徐々に形が歪み閉じていく。



「また、あの死神絡みか……!」



とりあえず、庭園に誰もいないことを確認する。

安達と橋本が向かった方向には誰もいない。

次に玉城さんの場にも誰もいない。

厄介だがこの広い屋敷内を散策しようとしたとき。


玄関の方で死神が叫んでいる!

しまった、俺らではなく他の誰かの身に何かがあったのか!

向かう先を変更、玄関の方へ!



「いない……?」



どういうことだ?

今、死神の叫び声が聞こえていた。

目の前では玄関前だけ砂煙が舞っている。

俺が向かうほんの少しの時間で逃げたとは到底思えない。

つまり、この場に俺以外の誰かがいて死神を討伐した。

それを踏まえて、この場で成し遂げられる人物はただ一人。



「ほんと、昔から何考えているのか分からねえよ、鷹人」



砂煙の中から現れる人物。

昔の約束を忘れずにいたかもしれない旧友。

噂の対象となっている謎の青年。

武内 鷹人、そいつ以外の誰でもない。


自然とそのまま動かない状態になった。

この別世界にいるのだから俺と同等、それ以上の力を持っているし、ここでの戦闘や経緯も情報量の面でも勝っている。

ここで下手に自分から動くのは禁物。

相手が昔の親友だからといって、所詮は過去。

今は、違う。

聞きたいことは山積みだけど。

俺と敵対しているのかもしれない……!

いつでもいけるように身構えるが、俺の試行錯誤とは裏腹に武内の方から宣言される。



「君の知っている武内 鷹人はもういない」



最初から知っている。

もう戻れないことぐらい。

お前と再会する前から知っている。

……だからこそ。


ハッキリと言われたときに悲しく思ってしまったのは、それでもほんの少しだけでも期待してたからだ。

三話目突入ー(^○^)

まだまだ序盤なんで頑張っていきたいですね。

既読が増えると、嬉しさのあまり身体がクネクネします。


どんなことでもいいのでコメント欲しいです。

これを目標に頑張って書こうーっと。

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