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叛乱のコロシガミ  作者: 戯富賭
明鏡止水-Day a break-
2/16

Day:Ⅱ

家族の消失、変革のはじまり


荒木 憂は人生最大の絶望を味わう

「可哀想ね……帰宅していたときには既に死んでいたそうよ」


「犯人は捕まったみたいだ」


「なんでも犯行理由はたまたまだったらしいじゃないか」


「運が悪かった……それしか言えないな」


「なんせ、彼以外の家族は殺された。

これからどうするんだい、彼は?」


「親戚の叔父のところでお世話になるみたいだ」


「しかし、葬儀中も彼は……」


「仕方がないだろ、全てを失った悲しみを受け入れ切れるわけがない」


「傷はそう簡単には癒せない」


「絶望の淵に落とされてしまったんだ」



……もう、居場所がなくなった。

まだ取り戻せたかもしれない家族の絆も。

俺が拒否したからだ。

何で、何で……?

俺でよかったじゃないか。

それなのに、何であの人たちを喪わなければならないんだ……?



「憂くん……車に乗っていたまえ。

ここで寝ると辛かろう?

今日は私たちの家で寝るといい」



叔父さんに引っ張られる形で言われるがままに車の後部座席に座り再びふさぎ込む。

あの事件からずっとふさぎ込むしかなかった。

妹も、母さんも、父さんも殺された。

泥棒ではなく強盗だった。

金目のものを盗るために家族を殺した。

捕まった犯人はたまたまだと言った。

何だよ、それ……簡単に受け入れられるかよ。


他の親戚たちに一度挨拶して行った叔父さんは未だ戻ってこない。

一人のままだ。


……こんなのってねぇよ。



「ちくしょう……ちくしょうーーーっ!!!」



悲痛な叫びは止まらない。


よりにも寄って何故俺の家を狙った?

返せ!返してくれよ!

俺の家族を、居場所を!


こんな残酷な世界が俺は憎い!



「……もういいだろ、こんなの」



あれから何分経ったんだ?

叔父さんがまだ戻らない。

薄明るく光る車内の時刻を見た。


進んで、いない……。

おかしい……携帯の時刻も止まったまま、電波は圏外に。

さっきからエンジン音も途絶えている。

窓から見る景色も真っ暗闇。

遂に全てがおかしくなってしまったのか……。

なら、いっそのこと車内から出てもっとおかしくなろう……。



「待てよ……どうしてだ?」



さっきまで葬儀場にいたんだぞ?

車は動かしていないし、俺自身動かせるわけがない。

なのに、何で隣町までいたはずなのに地元に戻ってよく遊んでいた公園にいるんだ?!

不気味に感じた俺はあることに気づく。

公園にある時計が逆に動き、周りの動きが止まったまま。

最後に俺以外の生物は何一つない。



「夢、なのか?」



そうだ、これは夢だ!

なら、家に帰っても元のままだ。

夢でもいいから家族の顔を見せてくれ!



「どうして……また」



不思議な夢の中、家に帰るとあの悲劇が思い返される。

あのときと同じように散らかっているからだ。

息を飲んでリビングへと歩いていくと、あの時に家族を殺した犯人の姿が!

でも、家族は誰一人としていないのに何故こいつはここに……?



『こ、ろ、せ』



確かに聞こえる不気味な声。

聞いているだけで嫌な気分になってくる。

そして、突如犯人の後ろから何かが現れる!


表現力が少なすぎる俺では説明しにくい存在。

間違いなく化け物だ。

四足歩行、長い爪と牙、白い体毛、何メートルもある。

そいつは俺の存在に気づいて、犯人を食べてしまった。


こいつは死を受け入れていない……!

死を与えるためだけに存在している。


安達が言っていた死神と呼べる存在ではあった、凄え夢だ。

けど、夢でも近寄りたくはない。



「な、なんだよ……何なんだよ?!!」



気付いた時には家を出て走り出していた。

思考ではなく、身体が反応して動き逃げていた。

夢じゃない……。

これは紛れもなく、現実だ。


息を切らしながらも後ろを気にかければ、奴はいる。

足音を豪快に響かせながら、俺を追い掛けてくる!

か、隠れる場所が……あった!



「はぁ、はぁ……」



現在、校舎内。

奴が俺を見逃すことだけを祈って身を潜めて隠れていた。

しかし、本当にここはどこなんだ?

現実ではあるが現実ではない空間。

風景自体は俺の知っている町だけど、周りに人の気配があるとは思えない。

いたとして、あの化け物だけな気がする。

まず、助けを呼ぶのも不可能。

そして、この空間から脱出することも。



「っ……」



ち、近い……!

足音が徐々に迫ってくるのが分かる。

見つかれば、さっきの強盗同様に食われる。

二階中央階段付近の警報装置の中。

これが現在の潜伏場所。

いつだったか安達に教えられて不思議に思っていたが、こんなときに役立つとは……。

帰れたときにはめいいっぱい褒めてやる。

今……目の前を通った。

音が通り過ぎて行くのが分かる。



「よし、とりあえずは次の場所へ……」



すぐに移動するはずだった。

俺としては迂闊すぎる。

警報装置から出て後悔してしまう。

化け物は、一体だけじゃない。



『こ、ろ、す』



もう一体、同じ姿をした化け物と鉢合わせてしまった!

咄嗟に階段を駆け上がる!

ここで三階で身を潜めることは考えられなかった。

反応は鈍くても素早さでいえば、あの化け物たちが勝っている。

見つかることは確実だ。

屋上に行ってしまえば、もう逃げ場もない。

俺の負けだ。



「殺す、か……」



これで俺は死ぬのか……。

屋上にしか逃げれず、遂に化け物たちに挟まれた。

一体は俺の後ろから、もう一体は反対側から壁を越えてきた。

化け物に食われるくらいなら!

震える身体を必死に動かして、化け物たちが襲いかかる直前。

背中から飛び降りた。


ここで死ぬんだ。

家族全員、死ぬってか。

あはは……でも、それでいいか。

俺も一緒に連れててくれ。



『自殺意識、受理。

世界崩壊、受理。

悪運素質、受理。


これより選択権限を譲渡します』


だ、誰だ……?!!

俺の頭の中で聞こえる声。

これが死ぬ間際に起こる現象か?


『神を殺したい?』


その言葉の真意が分からない。

けど、こんなときに聞こえた声が鮮明だと俺はまだ死んでいない。

現実と戦う意思がまだあるんだな。



『こ、ろ、せ』



化け物たちが俺を逃がさないように食らいつこうと俺へ向かって共に飛び降り、牙をむき出してくる!


しかし、その牙は化け物から離れた。


ただ落ちるだけの身体をひねり蹴りを顔面に入れた。

気軽に入れた蹴りだったが化け物の顔面は歪み、牙は折れて、俺より先に地面へ叩き落とす!

不思議な感じだ……負ける気がしない!


そのまま、ひっくり返した化け物の腹に追い打ちをかけ踵を落とす!

その瞬間、何かが砕けた音がすると同時に化け物は苦しみ徐々に砂へと化して消滅する。

消えた化け物の残骸には赤い砕けた鉱石。

血のように真紅の色。

これが……化け物の弱点。



『こ、ろ、す』



もう一体が別方向から着地してきた。

化け物を倒したことで警戒を強めるかと思いきや、流石は化け物。

単純に俺を食らうことだけしか考えておらず、一直線に向かってきた!



「意味、ねぇよ」



大きく開いた牙を両手で掴み一瞬で動きを止める。

そのまま上へと放り投げて、見つける弱点。

腹部分にデカデカとさらけ出された部分に正拳突き!

意図もたやすく、鉱石は砕けて化け物が弾け飛ぶように消滅する。



「これが、俺の力なのか……?」



実感の湧く凄まじい力。

反射的に動かしただけだったつもりが、あんな化け物を二体も倒してしまうほど。

だが、その反動も大きくほとんどの体力が吸い取られた気がする。

とりあえず、ここから出るために入り口である公園へ戻ると同じ場所に空間の穴があった。

おそるおそるではあるが触っただけで、再び目を覚ます。



「げ、現実なのか……?」



時間は前に進んで刻まれている。

周りはあんな気味の悪い感じではない。

今いる場所は公園だ。

先ほどまでおじの車内にいたはずなのに、どういう仕掛けなんだ?

頭が混乱中だが、一本の電話が更に混乱させる。


実家からだった。



「は、はい……もしもし」


『遅い!早く帰ってきなさい』



間違いない……母さんの声だ。



「どうして……?」


『いいから、あとで話は聞くわ!』



いきなり掛けて切られてしまう。

訳も分からないが、生きてた。

何だよ、意味分からねぇよ……。


戸惑いつつも実家に帰れば、家族は誰一人として喪ってなかった。

夜遅くということもあり両親には少し怒られたが疲れていたため、また今度となった。



「なにこれ……?」



この時までは気づかなかったが、胸に刻まれた赤い花模様のようなタトゥーがあった。

それは突如として復活した家族には見えていなかった。

俺だけにしかなく、俺だけにしか見えない力の象徴。


あの化け物を倒したから……なんて、都合よすぎな気もするけど。

それでも、大切なものを取り戻せた。

十分だ。

もうあんな思いはしたくない。


ベッドへ横になった途端にすぐ寝れた。


今はこの変革に感謝しよう。



『人間反応が無くなりました』


『やっと、始まった……』


『これからだよ、荒木 憂。

これが君のスタートラインだ』



使えこなせない、困惑中orz


ぼちぼち見てもらっているから、それだけで頑張れます^_^

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