表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
叛乱のコロシガミ  作者: 戯富賭
明鏡止水-Day a break-
1/16

Day:Ⅰ

世界の綻び、虚偽の祭典


この事態に青年は何も揺るがなかった



それは生まれる前の実話とおとぎ話。


10月32日。


その日は何の日か。


虚偽ギーク祭典ハロウィン


ちまたではそう呼ばれている。

単純にいえば、ハロウィンの次の日だから。

だが、普通に考えればハロウィンの次の日は11月1日。


しかし、そうならない訳がある。


32。


これこそ、今現在地球上で生存している人間の数。

もちろん、こんなに少ないはずがない。

約32億人。

それでも半分の人類を失った。

理由は不明。

災害とも言う人もいれば、テロとも言う人もいる。

しかも、今ではとある噂も流れている。






《デス・オア・デット》






これがギーク・ハロウィンの掛け声。

《トリック・オア・トリート》という飴か鞭かというハロウィンならではの優しいものじゃない。


死を選ぶか、死を選べ。


選択肢などない問い。


むちゃくちゃだ。


こんな気味悪い掛け声も噂でしかない。

インターネットが普及した世界ならではのデマだろう。


この虚偽の祭典より現実のほうが怖い。


現実はいつだって戻せないのだから。


受け入れ難い事実も起こる最悪なものだ。






だが、それでも生きている。






死ぬときなんて、年だろう?

もしくは病気か事故で若くして死ぬ。

行き場がなくて自殺して死ぬ。


でも自殺はある意味、正解の選択肢かも。

だって、逃げただろう?

現実と向き合うことが出来なくなったわけだし。


別に弱いからとか、最低の逃げだとか蔑む言い方ではない。

最初から生まれたくて生まれたわけではない、と言いたい。


戦争地帯に生まれた子供は若くして大人と同等の扱いを受ける。

人を殺す権利を持つ。

なら、人生を捨てる権利もある。

他人目線からして可哀想だと思うならいっそ逝かせてやればいい。


こういう風に思う俺が最低だろうけど。

俺の思うことに一瞬でも震えたなら、見てる奴らも最低だよ。






いついかなる時も逃げている。

現実も非現実にも最後は向き合わない。

それが、人間の本質だ。


だから、神様は人間を半分にした。

欲望剥き出しの獣を少なくするために。


弱肉強食。

おいおい、神からすれば人間も餌かよ。






申し遅れた。

俺の名前は、



「憂、ご飯だよー」



愚妹よ、名乗らせろ。

あと、兄なのだから敬え。

……ごほん、改めて。

荒木あらき ゆう

それが俺の名前。


普通の家庭に生まれ

普通の友達がいて

普通の学校生活を送り

普通の成績を収め

普通の毎日を過ごし

普通の人生である。


10月31日生まれ。

現在、高校三年。

大学受験のため勉学に勤しんでいたが壁にぶち当たり、先ほどのネガティブ面が出ている状態。

壁にぶち当たって経験は一度だけではない。

人生なのだから多くの困難が待ち受けている。

至極、当然な事といえる。


だが、おそらく俺は失敗者の一人だ。


初めての高校受験は合格点よりたったの一点足りず失敗。

部活動は初歩的なミスで生涯、拳をつくれない大怪我を負い失敗。

そんな感じで根本精神、腐っていた。

昔の俺から想像できない現在の俺。

俺を知っている人間からすれば変わったとよく言われる。


あぁ、そうさ。

過去は変えられない現実をどうしようも出来ない。

やり直しが効くならとっくに戻している。


荒木 憂は今の俺だ。

昔の荒木 憂はいない。

もう、いない。



「いただきます」



テーブルに座る家族での食事。

これもまた変化だ。

俺が失敗者の一人になったからこそ、家族は歪な形で深く繋がった。

言葉数も少ない家族だったのになんだよ、これ。

無駄なおせっかいだった。

大人になって仕事をする成功者の気遣いなのだろうか?

……そうやって考えてしまっている時点で、失敗。

食べる気が起きない。



「ごちそうさま」



両親も妹もまだまだ序の口と言ったところで放った一言。

誰も否定はしない。

何かあるなら言葉にしろよ。

哀れんだ目で見やがって!


急ぎ足で階段を駆け上がり、また部屋に閉じこもる。


居心地が悪い。

失敗ばかりしてきたからか。

そりゃあそうだ。

自分の息子が馬鹿じゃ世話しねぇもんな。

そうしてくれた方が今の何倍もマシだ。

なのに、いっつも、いっつも……!



「何なんだよ、くそったれ!」



床に落ちていたクッションを思いっきり蹴る。

こんなことで晴らせる鬱憤でもないが。

すると見事、窓際に飾っていた写真立てが飛んでいったクッションに当たり床へ倒れ落ちた。

幸い、写真立てのガラスは割れていない。

昔の俺が写るその写真を拾い上げる。


かつては五人衆の一人としてかぞえられていた。

その五人衆というのも仲良き五人の親友たちを周りが名づけたもの。


俺、荒木 憂。

平和ボケ、武内たけうち 鷹人たかひと

冷静沈着、清水しみず 冬至とうし

点付け、島寺しまでら 興毅こうき

陽気、今川いまかわ はやて


毎日馬鹿みたいに遊んでいたり、競い合ったり、笑えていられた。


身体は弱かったけど誰にだって優しかった鷹人。

運動が何でも出来て同年代では密かな憧れだった冬至。

一つ一つの行動に点数を付けたがる変な奴だった興毅。

いつも竹刀を携えて武士道を極めようとしていた颯。






でも、あいつらも既に昔の話。

拾い上げたこの写真でしか実物を思い出せない。

もう六年も会っていないのだ。

誰一人として会わない。

これが現実だ。






六年前、五人衆は集まり俺はこう言った。



「俺らは別々になる。

でも、また会えるさ!

そのときはお互い成長して会おう!」



……そんな出来もしなかったことを吐いて。

もう変化してしまった俺は写真立てを元の位置へ戻し、ベッドに倒れこむ。

過去の俺と睨めっこなど、もう真っ平だ。



「冗談じゃない……もう、過ぎたんだ。

何もかも、もう完結しちまった……」



悩み続ける日々はこうしてまた閉じる。

ゆっくりと閉じる目蓋に巻け、俺は暗闇に誘われる。

期待しない明日を目指して、眠る。


それで……やりたいこと、見つけたのかい?


また、お前かよ……。


仕方ないだろ?お前なんだから。


答えになってない!


いいや、それがいつもの答えだよ。

失敗した自分を否定し続ける。

いつまで経ったってお前はお前なのだから、認めろ。


黙れ!!!

一度成功しなかっただけで腐っちまったんだよ、俺は……。


……そんなに成功が大切か?


何、だと……?


失敗ばかりだな、お前の人生。

でもさ、それが何だ?

昔のお前ならきっと……



「失敗を考えていない、賢くなるな、か……」



常に夢で現れるドッペルゲンガーの言葉に戸惑いつつも、学校に行く準備を始める。

さすがの根暗でも学校は行くようにしているし、友達もそこそこいる。

それに勉学は上位をキープしているし、部活動の空手を引退したとはいえ体力作りを怠ったことはない。

失敗ばかりしているが成功しようとしていない、中途半端なのだ。



「やっほーぉ!」


「ごふっ」



勢いのある頭突きが腹部に直撃。

軽い当たりだが狙いが定まっていて普通に痛ぇ。



「何しやがる、安達……」


「ぼーっとしているからねているのかな~って。

てへっ」


「てへっ、じゃねぇ……」



というか、登校中に寝ながら歩くとかどういう凄技だ。

出来るなら俺もそうしたいがそう思われて強打を食らうくらいならいらない。

安達あだち メグ。

見た目は可愛らしいといえば可愛らしいが中身は別物。

奇想天外。

女のくせに暴力は振るうし、少し男口調、子供っぽい。



「さっそく宿題みせて、荒木ぃ~」



……といった途端にこれだ。

どんな不良児だよ、こいつ。



「俺はお前の召使いじゃないぞ」


「そんな釣れないこといわないでさ……お願い」



うっ……駄々をこねる小さい頃の妹を相手にしているみたいだ。

だめだ、だめだ。

甘やかした途端、しつこいのは目に見えている。

しかし、これで見せなかったら見せなかったで後々……面倒だ。



「分かった……今回だけだ、次は自分でやれよ」


「ありがとーぅ!」


「お、おい!」



じ、直に感触が……いやいやいやいや!

もう女だって自覚しろよ!

背中に抱きついてくる安達を引き離そうとするもなんつー馬鹿力、離れない!



「お前らー、朝からいちゃつくなよ」


「違う!こいつが離れないだけだ!」


「やだなぁ、ただのスキンシップだよ。

おはよー、橋本っち」


「おはよう、安達さん」


「普通に挨拶してんじゃねぇよ……!」



未だに離れようとしない安達と困り果てている俺らの現状をスルーし普段通りに挨拶する男子生徒。

橋本はしもと 宗佑そうすけ

彼の自称、俺の最高の親友。

空手部副部長という立場ということもあり、怪我で引退をした俺にまだ勧誘している。



「相変わらず、うるさい連中ね」


「おはよー、柚」


「あー暑苦しい!」



教室にたどり着けば、とてもじゃないが同じ高校生とは思えない女子が堂々と目の前に立っていたが安達のせいで無力化されている。

北穂(きたほ) 柚子(ゆずこ)

俺らの教室の委員長で校内では七不思議扱いをされている。

もちろん、本人はそれを嬉しく思ってないわけで。



「子供扱いするなーぁ!!!」



頭を撫で回す安達を怒鳴りつける始末。

これが今の俺が過ごす日常。

多々それぞれの友達がいる学校。

イラついているだけで過ごせる連中じゃないし、むしろ一緒にいて悪い気はしていない。

今はここだけが安らげる。



「あー掃除だるいー」


「しょうがないだろ、サボりの常習犯」



で、何故俺もやらなくてはならないんだ……。

北穂からの頼みとはいえ、安達の監視役でもないぞ。

常日頃から放課後の掃除をサボることが多い安達に対して、今回ばかりは俺の同行もあってしっかりとは言えないがやることはやっていた。



「終わったらいちごミルク、買って」


「それは約束出来かねんな」



教卓でうつ伏せている人間のセリフがそれかよ……。

少し腹立ってきた。

ゴミ袋を変えて、これで終い。

さっさと裏にゴミを置きに行こうと安達に教室を任せようとしたとき。

彼女はいつの間にか俺の隣に。



「私も行く」


「お、おぉ……」



最後にゴミを捨てるだけなので荷物を持って教室の鍵を閉める。

あんな真面目な顔をした安達を見たのは初めてだ。

正直、立ち止まてしまっていた。

何をさせれるか分からないかった。

しばらくお互いに話をせず歩いていたが、安達から口を開く。



「死神って知ってる?」



第一声が何だよ、それ。

ため息を吐いて首を横に振る。

そっか、と納得したように安達が表情を変えずにそのまま話し始めた。



「人の死を誘うモノ。

生物の形ではないそれは人に取り憑いて周りに死を与えていく。

今、噂で広まってて社会問題にも発展してるんだって」


「アホらしいな」


「で、もう一つ噂があって。

虚偽の祭典も本当はその死神のせいなんじゃないかって。

おかしいでしょ、やっぱり。

この世界にいる人口の半分が突然消滅するなんて」


「俺もそう思う。

けど、そんな得体もしれない偶像に信じる気はなれない。

安達にしては珍しいな、こんな噂を信じるなんて」


「たまたま、だよ……」



裏にゴミを置いて俺らはバラバラに帰った。

用があると安達は少し気まずそうに離れた。

いつものあいつではなかった気がするが、一時的な気の迷いか。

あまり気に留めず、また嫌な家に帰る道のり。



「っ……!」



すれ違う一人の青年。

マントを被り姿が分からなくさせているつもりが、この人通りが少ない場所では目立つ。

それでもただの他人だと思って通り過ぎるはずだった。

すれ違った瞬間、耳元につぶやかれるまで。


『世界を見据えろ』と。

他人とは違う。

聞いたことのない声だが、あの顔は間違えたりしない。


武内 鷹人。

こんな再会を待ち望んでいたわけじゃなかった。

言葉に出来ず、名を呼ぶことすらない。

ただ後ろを振り返っても彼の姿はもういない。

後悔も、ない。


久しぶりに見た鷹人のせいか、家の前で身動きせず思い返していた。

昔はこんな家でも暖かい場所だった。

五人衆の遊び場にもなってて家族もあいつらを迎え入れていた。

それでも今と昔。

区切らないといけない。



「ただいま……あ?」



嫌々、家に入ると玄関から廊下まで汚れている。

家具が倒され散らかっていた。

これ……泥棒?

理解した瞬間、玄関にある靴を見て三足あるのを知ってしまった。

一歩一歩早足になりながら、リビングへのドアを恐る恐る開けた。


壁は目の前に立ちふさがる。

いつも通り、それに対して受け入れる。

だけど、こればっかりは難しいだろう。



「え、ぁ……」



血だらけのリビング、倒れている家族。

これが本当の絶望。

その場に尻もちをついて吐いてしまった。


もう、沢山だ……!





基本的にはぼちぼち週掲載。

・登場人物はある程度完成。

・話数もだいたい決定。

この二つが出来ているからある程度の

ペースで掲載していきたいと思ってます。

今は話の構成作りと扱いに慣れたいです。

(結構必死)


※誤字、脱字がありましたらお願いします

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ