2話:天螺
クラス中、いや、学校中で噂となった天螺。彼女の美貌は、数多くの生徒を虜にした。男子からは、憧れの的。女子からは、お姉さま。そんな感じの視線を向けられている。しかし、その当の本人は、知らん振り。
「と、永久日さん!学校を案内しましょうか?」
「と、永久日さん!何か購買で買って来ましょうか?」
「い、一緒にお弁当食べませんか?」
「わ、私と、そ、その食べませんか?」
大人気である。それなのに、天螺と来たら……。
「案内は、黎希に頼むわ。ついでに黎希に何か買って貰うし……。ついでに黎希と食事するから」
と、このように、全て俺に任せるのである。学校中の恨みがましい視線を全身に浴びながら俺は、天螺を案内することになったのだった。
「それで?なんで俺なんだ?」
「あら?こんな美人に頼られるのだから嬉しいのでなくて?」
確かに美人と一緒に入れるのは嬉しい。しかし、天螺が何者なのか、俺には分からない。だから、あまり関わりたくないのだ。
「私と居られることを悦びなさいな」
「今、何かニュアンスが違うくなかったか!?」
まあ、いいが。それは、さて置き、天螺は本当に美人だ。これはあれだろうか。永遠の美とかそんな感じの魔法でもあるのだろうか。
「まあ、いいじゃない。私達、魔法使いは、数が少ないのだから、知り合いで固まっていた方が得策でしょう?」
それはその通りなのだ。人数の減少。《魔真衆》による攻撃。そう言ったことから、魔法使いは、原則として、複数人で行動することを心がけるようにしている。
「特に、奴等を数多く倒している私や貴方ならなおさら、ね。奴等に目をつけられている可能性が非常に高いから」
「確かに、俺は、多く倒しているな」
今まで、かなりの人数を屠ってきたはずだ。しかし、それでも《魔真衆》は、ちっとも減る気配がない。少ない魔法使いのうちのどのくらいの人数が、奴等に加担しているのだろうか。
「私も大分倒したわ。特に海外の戦力は、ヨーロッパとアメリカの《魔真衆》は全滅させているの……。でも、倒した人数から見ても、日本は、ヨーロッパの戦力の百倍から千倍いると見たほうがいいかもしれないわ。貴方の倒したおおよその人数は推測できるけど、軽く、アメリカの七倍は倒してるわよ」
アメリカ支部の七倍。それだけの数で、全滅の気配がないなんて、本当に百倍以上いるかもしれない。
「だからって、手を組むわけじゃねぇんだろ?」
「う~ん?私としては、組んでも構わないけど……どう?」
この妖しい笑い方が怪しすぎる。
「お前と一緒に居れるってのは魅力的だが、止めて置こう」
冗談交じりに言うと、
「あら、私と居れるのは魅力的って言うなら、一つ提案に乗ってくれないかしら?」
と返してきた。
「提案?」
「そ、提案よ」
提案?怪しすぎるんだが……。
「私を貴方の家に置いてくれない?ホテル暮らしはお金かかるから」
「嫌だ」
「それなりにお礼はするわ。それとも、私が無理やり貴方の家にやって行って、所持権を奪う方が良い?その場合貴方は、私の奴隷にしてあげるけど……」
この女、ドSかッ!
「分かった、置いてやるよ」
「よかった。奴隷にされるほうが良いとか言い出したら流石に手を切ろうと思っていたから……」




