25話:帰り道
帰り道(無論、時刻は昼休みだ)。俺は、天螺と肩を並べて歩いていた。
「ねえ、黎希。あれ」
俺は、天螺の指差す方へと視線を向ける。そこに居たのは、……いや、そこにあったのは、酔いつぶれた酔っ払いの無残な姿だった。俺は、尊敬零、呆れ百の瞳で、ソレを見て、――見なかったことにした。
「え、いいの?」
「まあ、大丈夫だろ。あの馬鹿は、殺しても死なんだろうし。酔ってるあいつに用はない」
「ん?何か聞きたいことでもあったのかしら?」
流石、天螺。大正解だ。俺が、あの馬鹿に問いたいことは二つ。まずは、希咲について。次に、汐深を麗華に見張らせていたことについて。
麗華の人権とかはどうでもいいとして、汐深を見張りに付けたということは、まだ、麗華が覚醒していない時点で、アイツに何かがあることを察知していたことになる。ソレが気になるのだ。深蘭は何を知っている。何を目的にしている。俺の両親の知り合い、それが今は、無性にうそ臭く感じる。深蘭は、一体、誰何だ?
「ねえ、黎希。一つ、私も貴方に聞きたいことがあるわ」
「ん?何だ?」
天螺の言葉に、俺は、相槌を入れた。
「たいしたことじゃないけれど、貴方の周りの人間関係について、聞きたいのよ。天壌姉妹、朱野宮、とか」
「人間関係つってもな」
そう前置きを置いてから語る。
天壌姉妹。名前は、天壌陽(姉)と天壌月世(妹)だ。 陽は、秋延妖の偽名で、学校に入学していた。高校に入ってからは、学校では、いつも一緒だった。親友と言えるだろう。
天壌月世。幼い頃から一緒に育った。馴れ初めは、覚えていないほど昔。まあ、お互いの親が、魔法使い同士で気があったのか、幼い頃から、遊び続けていれば、自然と月世のことが分かる。まあ、幼馴染の性と言うものだろうか。
次に朱野宮麗華。俺と同じ、『零の魔法』使い。そして、《始まり》の魔法使い。同じ魔法を持つもの同士、波長が合うのか、時折、同じ行動を取ることがある。まるで双子のような感じだ。
青葉汐深。コイツは、説明事態は、天螺にははじめてだが、実際、家に写真飾ってあるし、想像は付くだろう。まあ、町原忍として学校に臨時在校中。
希咲深蘭。俺の師匠にして、人類史上最強の人間(人外?の可能性あり)。詳細不明、身元不詳の飲んだくれ。
以上が、俺の周りの人間関係になる。
「私についての説明はないの?」
天螺のわざとらしい問い。
「う~ん、お前かぁ。説明っつっても、特になくねぇか。特筆するなら、美人で料理が上手いとか、そんなくらいか。ああ、深蘭の面倒を見てくれてるから、面倒見がいいとか、な」
冗談交じりの俺の回答に、天螺は、納得したような笑みを浮かべていた。これが何を意味していたのか、このときの俺は、まだ知らなかった。




