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零の魔法使い  作者: 桃姫
終焉の魔法使い
24/32

23話:忍

 私は、アイスティーを啜っていた。私は、麦が苦手だ。麦が付くものは、何でも嫌いだ。麦芽ゼリーも食べたくない。ん?麦芽ゼリーって知らない?給食のデザートで出たりするんだけど。まあ良いわ。とにかく麦が嫌いなの。

「美味しい」

アイスティーは好物。果実系のジュースはもっと好物。果汁百パーセントだとなおよし。

「麗華」

「ん?何?忍」

私のクラスメイトにして、前の学校からの付き合いの忍は、私のことを理解している。だから、こそ、

「はい、これ」

差し出されたのは、リンゴジュース。無性に飲みたかったのでありがたい。

「ありがと」

ジュースにストローを刺して飲む。冷たく甘い味が、口いっぱいに広がる。そしてスゥーと味がひいていく。リンゴの甘酸っぱさは後味が残りにくい。


 忍とベンチに座っていた私は、不意に訪れた気配にハッとなる。

「……?どうしたの?」

忍の問いかけに答えられない。答える余裕がない。悪寒。寒気。不気味。アレは、《終焉》。

「天翔:空翔る天使は、天から堕ちることはない。夢を持ち続ける天使は、体に、白き羽が浮き上がる。さあ、祝いの風よ――始まりを告げよ」

降り注ぐ、不気味で不吉な終わりに、私の《始まり》が打ち消す。

「何、これ……」

忍の驚愕を余所に私は、《始まり》で、《終焉》を追う。

「天恵:地に恵みをもたらす天使は、夢を与える。夢を持ち続ける天使は、体に、白き羽が浮き上がる。さあ、恵みの雨よ――始まりを濡らせ」

《始まり》の魔法。ありとあらゆる、自然の成り立ちの魔法。ソレは、天変地異をも起こす。雨、雷、嵐、雪、地震、津波、全ての事象の成り立ちを司る、ソレが、《始まり》の魔法。

「きゃあ」

忍の悲鳴は、おそらく、急に降った雨を浴びたことによるもの。


 どうやら《終焉》には逃げられたらしい。


 忍に魔法を見られるは、《終焉》には逃げられるは、でいいことがなかった。さて、この状況、どうしたら良いのかしら……?


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