22話:烙堕
深紅の輝きを放つソレを見て、鼓動が早まった気がした。ソレは、禍々しいまでの魔力を持つ。私は、ソレを握る。その呪いとも思わしき魔力は、私を一瞬で虜にした。
――妖刀『魔真理』。古の地獄で作られたというソレは、赤く紅く光っていた。
「散れ」
私の言の葉一つで、世界は、易々枯れるだろう。だから、私は、その時をジッと待つ。《始まり》を継ぐ、あの子を待ちながら。時には、知識を貸しながら。ひたすら待つ。《魔真衆》を率いて。でも、わかっている。あの子を前に、《魔真衆》など意味のないことを。あの子の言の葉一つで、《魔真衆》は、消え去ってしまうことを。
「まだまだ、熟すまで、まだ、ね」
私は、ワインを一口啜る。赤い液体が喉を通り体の奥まで染み渡る。私は、ワインが好きだ。ビールは嫌い。果実酒は、大好きだ。理由は簡単。麦アレルギーとまでは行かないものの麦が苦手なのだ。だから、いつも飲むのはワインばかり。
「烙堕:堕ちた天使が、天を目指すことは許されない。烙印は消えず、体に、黒き羽が浮き上がる。さあ、滅びの風よ――終焉を運べ」
私の終焉が、『零の魔法』使いへと向かう。さあ、あの子は、どうするの?




