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零の魔法使い  作者: 桃姫
ゼロの魔法使い
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1話:転校生

 一夜明け、俺は、起きた。その後、少女は、帰ってしまった。あの天螺と言う少女。「無窮の魔法」使い。無窮、すなわち無限、永久、永遠、そして、恒久。彼女は、間違いなく無限の力を持つ魔法使いである(無限という力を持つと言う意味で、魔力が無限と言うわけではない。しかし、「無窮の魔法」なら、自身の力を無限にすることも可能かも知れないが)。それに対する俺は、「零の魔法」使いである。相性どうこうではなく、この二つの魔法がぶつかると何が起こるか分からない。なぜなら、無限を無にしようとする力が、働き続けるのだ。どちらかが、どちらかを上回らない限り、莫大な力が発生し、何が起きるかがわからないのだ。


 まあ、考えていても仕方がない。俺は、学校に向かった。県立鷹野南高校。至って普通の高校だ。俺は、ここに通っている二年生だ。本来なら、月世も、この高校に入る予定だったのだが……。

「オハヨ~」

急に声を掛けられて、振り向く。そこにいたのは、秋延妖(あきのべよう)だった。妖は、俺のクラスメイトであり、俺の親友だ。

「よう、妖」

妖は、明るめの茶髪を跳ねるようになびかせながら言った。

「知ってる?今日、転校生が来るらしいよ」

その言葉に、俺は、きょとんとなった。


 転校生。高校になってから転校生と言うのは、珍しい。実際、家の都合と言うのはあるのだろうが、滅多なことではない。

「何でも家の都合らしいけど、よくわかんないよね~」

のんきな妖だが、まあ、転校生が気になるのは分からないでもない。さっきも言ったように珍しいからだ。

「ん?黎希?どうかした?」

顔を近づけてくる妖。その仕草に、思わず顔が赤くなる。妖は、昨日の天螺と言う少女ほど美少女ではないが、十分な美少女に当たるのだ。そんな顔を無防備に近づけられたら、顔が赤くなるに決まっている。

「顔が赤いな~。熱ある?」

「い、いや大丈夫だ」

俺と妖は、教室へと向かった。


 教室は、転校生の登場を今か今かと待つクラスメイト達で賑わっていた。

「なあ、四之宮!転校生ってどんな奴だろうな!」

「男、女、まさかの男の娘とか?」

「いや、美少年だな」

などなど、様々な声が上がっている。それにしてもうちのクラスって……。まあ、それは置いておこう。


 そして、転校生の登場だ。教師に先導され入ってきたのは、時をも止めそうな美貌持ち主。そうそれは、「永久日天螺」だった。クラスメイトの先ほどまでの期待と興奮の入り混じった声は、完全に止まっている。

「永久日天螺です。よろしく」

彼女の声が、停止した空間に響いた。耳の奥まで入り、こだまする。

「ん?あら……凄い偶然ね、黎希」

そして、俺の方を向いて言ったのだった。クラスメイトの視線が一様に俺に集まる。

「よう、天螺。昨日ぶりだな……」

「まさか、同じ学校とはね……。黎希、貴方とは何かと縁がありそうね」

そう言って、意味深な笑みを浮かべる。俺は、それに対して、詰まる息を一気に吐き出した。

「縁、か。そんなものねぇよ。特に俺には、な」

縁何て言うものは、俺には無縁の存在だ。何せ、俺は、零の魔法使いなのだから。

「洒落のつもりかしら」

「まあ、そんなところさ……」

そう、ちょっとした洒落と受け取ってもらえば良いだろう。

「だとしたらちょっと間違いね。黎と零を掛けた洒落なら、ね」

そう言いつつウィンクをした。そう、名前としての掛詞なら間違いだろうけど、「(ゼロ)の魔法」との掛詞なら正解なんだよ。そう、それは(ゼロ)(レイ)の違い。その違い一つで間違いであったり、正解であったりする。

「永遠と無。反するものであり、同じものでもあるのよ」

彼女は、通りすがりに耳元で、そう囁いた。


 彼女の言った言葉の意味。無と永遠、その二つは確かに同じでもある。例えば、「時間を止める」と言う現象。これは、俺の場合、時間の流れを無にすることで可能になる。彼女の場合は、その時間を永遠にすれば、可能になる。このように、相反する魔法でも同じ事象を引き起こせるのである。それは、何を永遠にし、何を無にするかで変わるのである。ようするに、俺と彼女の魔法は似た者同士と言うことだ。


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